はじめに
「昔からひどい肩凝りや首の痛みに悩まされている」
「手のしびれや、原因不明の頭痛が続いている……」
そのつらい症状、もしかしたら「頚椎(けいつい)椎間板ヘルニア」が原因かもしれません。
ヘルニアと聞くと「出っ張って神経を圧迫するから痛い」「治すには手術しかない」と思っていませんか?実は近年の研究で、痛みの真の原因は「出っ張り」ではなく「炎症」である可能性が高いことが分かってきました。
今回は、頚椎椎間板ヘルニアの本当の原因、従来の治療リスク、そして体に負担の少ない最新の治療法「ディスクシール治療」について分かりやすく解説します。
動画で詳しく見たい方はこちら▼
目次
「頚椎椎間板ヘルニア」とは?首の構造と症状
人間の首には、頭を支えるために7つの骨(頚椎)が繋がっています 。その骨と骨の間でクッションの役割を果たしているのが「椎間板(ついかんばん)」です。
ヘルニアとは、ラテン語で「出っ張る」という意味を指します。そのため、おへそが出っ張れば「臍(さい)ヘルニア」、足の付け根が出っ張れば「鼠径(そけい)ヘルニア」と呼び、椎間板だけで起こる現象ではありません。
首の椎間板に何らかのトラブルが起き、変形して後ろ側に飛び出してしまうのが「頚椎椎間板ヘルニア」です。すぐ後ろには脳から繋がる大事な神経(脊髄や神経根)が通っているため、ここに影響が及ぶことで、首の痛みだけでなく、肩凝り、手のしびれ、さらには頭痛といった様々な症状を引き起こします。

【新事実】「出っ張り=痛みの原因」とは限らない
昔から「出っ張った椎間板が神経に触るから痛い」と考えられてきましたが、最近の数多くの論文によって、その常識が覆りつつあります。
実は、「MRIを撮ると見事なヘルニアが映っているのに、全く症状がない人」がたくさんいるのです。また、「右手に症状があるのに、MRIを撮るとヘルニアは左側に出っ張っている(痛みの原因とは関係ない場所に出ている)」というケースも珍しくありません。では、一体何が痛みの原因になっているのでしょうか?
犯人は「椎間板の中身」が引き起こす免疫反応(炎症)

椎間板は、頑丈な外側の膜(線維輪)の中に、ゼリー状の「髄核(ずいかく)」が含まれる、まるで浮き輪のような構造をしています。しかし、椎間板にひび割れ(損傷)が入ると、中にあるゼリー状のタンパク質が外に漏れ出してしまいます。
このタンパク質は、周囲の組織にとっては完全な「異物」です。そのため、体が異物を攻撃しようと免疫反応を起こし、これが激しい「炎症」へと繋がります。つまり、ヘルニアの症状は以下の2つの可能性が考えられます。

- ①形による原因:出っ張りが直接神経を触っている
- ②化学的な原因:漏れ出た成分による「炎症」が起きている
残念ながら、炎症そのものはMRI画像には写りません。そのため、これまでは本当の原因が見落とされがちだったのです。
従来の外科学手術(切る治療)に伴うリスク
原因が「形(出っ張り)」なのか「炎症」なのかは誰にも100%の断定はできません。もし「神経に触っていること」だけが原因であれば、手術で出っ張りを取れば100%治るはずですが、実際には手術をしても治らない方が多く存在します。さらに、外科手術(内視鏡や切開など)には以下のような大きなリスクや負担が伴います。
- ①入院の必要性があり、社会復帰までに時間がかかる
- ②メスを入れることによる神経損傷のリスクがある
- ③1度手術をして形を変えてしまうと、将来的に周囲の椎間板がどんどん悪くなりやすい
そのため、症状が軽ければ「手術をするリスクの方が高い」と判断され、何もせず放置(様子見)されることも少なくありません。

切らない最新治療「ディスクシール治療(Discseel®)」とは?
「形を変える手術」ではなく、「炎症の原因(漏れ)を根本から止める」という全く新しいアプローチから生まれたのが、ディスクシール治療です。
治療のメカニズム:椎間板のパンク修理
ディスクシール治療では、血管の中で「かさぶた」を作って出血を止める成分である「フィブリン」という薬剤を使用します。
- ①首の前側(右側)から、非常に細い管を椎間板に挿入します (※後ろ側は神経や骨の隙間が狭く危険なため、安全な前側からアプローチします )。
- ②まず造影剤を入れて検査(アニオグラム)を行い、椎間板のひび割れから薬が漏れ出すかを目で見て確認します。
- ③損傷が見つかった場所へフィブリンを注入し、椎間板の内側からひび割れをピタッと塞ぎます 。

これにより、中のタンパク質が外に漏れ出さなくなり、結果として炎症が収まって症状が改善していきます。まさに「椎間板のパンク修理」のような革新的な治療法です。
ディスクシール治療のメリット
- ①低リスク・低負担:メスを使わないため、外科手術に比べてリスクが非常に少ない。
- ②早期の効果期待:腰の治療に比べて、首(特に頭痛など)への治療は効果の実感が早く、早ければ1ヶ月以内、一般的には3ヶ月程度で効果を判断できます。患者様の満足度も非常に高いのが特徴です。

まとめ
首の痛みや手のしびれ、頭痛が現れた場合、まずはリスクの少ない「保存的治療」から始めるのが鉄則です。
- ①まずは3ヶ月間、保存療法を行う (飲み薬の服用、リハビリ、牽引療法など)
- ②改善しない場合の次のステップとして「ディスクシール治療」を検討する
3ヶ月以上リハビリや薬を続けても効果が出ない場合、それは「椎間板のひび割れから成分が漏れ続けていること(炎症)」が原因かもしれません。
「手術は怖くて受けたくない」「今の治療で効果が出なくて困っている」という方は、ぜひ一度当院へご相談ください。体に負担の少ない方法で、もう一度快適な日常生活を取り戻しましょう。

切らずに治す治療のご相談はこちら
ご質問があれば、お気軽にお問い合わせください。MRI画像からあなたの症状に合わせた治療を提案いたします。
今回ご紹介した当院の治療法
頚椎ディスクシール治療
この記事の著者
大阪本院 副院長石田 貴樹
2009年:高知大学卒業・医師免許取得、2012年:神戸市立医療センター西市民病院勤務、2013年:兵庫県立尼崎病院勤務、2014年:関西労災病院勤務、2019年:ILC国際腰痛クリニック勤務、2021年:野中腰痛クリニック勤務、2022年:2年間の研修を経て10月にライセンスを獲得、2023年:医療法人蒼優会理事就任・野中腰痛クリニック副院長就任、2025年:研修を経て10月に頚椎ディスクシール治療ライセンスを獲得