概略

腰椎すべり症は腰椎が滑ることによって神経を圧迫する腰の病気で、自然に治ることはありません。また、腰椎すべり症は時間経過で悪化する傾向があります。まずは、医師に相談し、外科的手術を受ける前に保存療法や日帰り治療が適応かどうか検討されることをおすすめします。


すべり症は自然に治るか? 序論

目次

【序論】腰椎すべり症は自然に治るものなのか?

初めてすべり症と診断された患者様は、「近いうちに手術を受けないといけなくなるのか?」と心配で寝られなくなるそうです。それと同時に、ほとんどの方はすべり症が自然に治る疾患かどうかについて知りたいと思っておられます。今日はこのトピックについてお話したいと思います。


【結論】腰椎すべり症は自然に治るものなのか?

残念ながらすべり症は自然に治る疾患ではありません。


腰の病気「腰椎すべり症」について

すべり症は、椎骨の1つが必要以上に動き、ずれる(すべる)ことで生じる脊椎疾患です。椎骨がずれてしまうと背骨を支える靭帯等の結合組織に変化が起こります。手術をしないと椎骨を元の位置に戻すことが難しく、椎間板変性や変形性関節症等の加齢性変化によって生じた場合は特に困難になります。椎骨がずれて神経が圧迫されると、腰や足に痛みが生じます。非外科的治療では、椎骨の位置を変えることはできません。しかし、リハビリなどの保存治療をすることにより、すべり症の痛みなどを緩和することが可能です。

理学療法

理学療法は、すべり症の最も効果的な非外科的治療の1つと考えられています。背骨を支える筋肉を鍛え、健康的なライフスタイルを促し、背骨の柔軟性を改善します。理学療法士による提案は、すべり症の症状を改善させることに役立ちます。

ライフスタイルの変化

ライフスタイルの変化は、すべり症の症状改善に役立ちます。健康的な体づくりをし、維持することで脊椎にかかる衝撃の量が減少させます。


NLC野中腰痛クリニックによる腰椎すべり症の治療実績

当院における腰椎すべり症の治療実績をご紹介します。腰椎すべり症に対してDST法(ディスクシール治療)がどのように行われているのかご確認いただけます。当院の腰椎すべり症の治療実績はこちらをご覧ください。
NLC野中腰痛クリニックの日帰り腰痛治療の実績は、5,638件(集計期間:2018年6月~2024年3月)

自宅で転倒された際に腰部を強打され、坐骨神経痛が出現された患者さまです。既往があり、体力的にもリスクが高いことからDST法(ディスクシール治療)を選択。治療時間は20分程度であり、2時間ほどベッドでお休みいただき帰宅していただきました。


【まとめ】腰椎すべり症は自然に治るものなのか?

日本人の約5%がすべり症を患っていると言われていますが、そのほとんどは安定しており、進行性ではないため治療を必要としません。成人の場合の治療は、痛みなどの症状がある患者様にのみ推奨されます。すべり症は時間とともに悪化する傾向がありますので、早めに医師に相談しましょう。外科的手術を受ける前に、保存療法や日帰り治療が適応かどうか検討されることをおすすめします。

すべり症は自然に治るか? 結論

参考文献参照元

①An evidence-based clinical guideline for the diagnosis and treatment of degenerative lumbar spondylolisthesis - 2009 - William C Watters 3rd, Christopher M Bono, Thomas J Gilbert, D Scott Kreiner, Daniel J Mazanec, William O Shaffer, Jamie Baisden, John E Easa, Robert Fernand, Gary Ghiselli, Michael H Heggeness, Richard C Mendel, Conor O'Neill, Charles A Reitman, Daniel K Resnick, Jeffrey T Summers, Reuben B Timmons, John F Toton, North American Spine Society - The Spine Journal (VOLUME 9, ISSUE 7, P609-614)
②Lumbar spondylolisthesis: Retrospective comparison and three-year follow-up of two conservative treatment programs - 1989 - M Sinaki, M P Lutness, D M Ilstrup, C P Chu, R R Gramse - Arch Phys Med Rehabil. (VOLUME 70, ISSUE 8, P594-598)
③Degenerative Spondylolisthesis:Review of Current Trends and Controversies - 2005 - Dilip K Sengupta, Harry N Herkowitz - Spine (Phila Pa 1976) (VOLUME 30, ISSUE 6, P71-81)
④Morphological Features of Spondylolytic Spondylolisthesis - 1984 - H. Takagi, T. Yano, K. Nagata, S. Yano, [in Japanese], C. Kanazawa, H. Goto - Orthopedics & Traumatology (VOLUME 32, ISSUE 4, P980-984)
⑤腰椎変性すべり症に対する内視鏡下除圧術 - 2006 - 麻殖生 和博, 吉田 宗人, 川上 守, 南出 晃人, 中川 幸洋 - 中部日本整形外科災害外科学会雑誌 (49 巻 1 号 p.35-36)

参考文献のリンク

An evidence-based clinical guideline for the diagnosis and treatment of degenerative lumbar spondylolisthesis
Lumbar spondylolisthesis: Retrospective comparison and three-year follow-up of two conservative treatment programs
Degenerative Spondylolisthesis:Review of Current Trends and Controversies
Morphological Features of Spondylolytic Spondylolisthesis
腰椎変性すべり症に対する内視鏡下除圧術

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任


腰椎すべり症

腰椎すべり症

腰椎すべり症とは背骨が前方や後方にずれてしまう疾患です。腰痛・足の神経障害の他に間欠性跛行(かんけつせいはこう)の症状を引き起こします。