概略

ビタミンB12は、神経と血液細胞の健康に不可欠な栄養素であり、慢性腰痛の一般的な原因である炎症を軽減します。ビタミンB12欠乏症になると、腰痛はもちろん、手足のしびれやうつ病などの神経系にまで問題を引き起こす可能性があります。


腰痛を引き起こすこと原因にビタミンB12不足が関係してる? 序論

目次

はじめに

先日、腰痛の既往症のない60代後半の男性患者様は、3ヶ月の間に腰痛、坐骨神経痛、手足のしびれ、歩行困難、関節痛、黄変、息切れなどの症状が現れ、本クリニックを受診されました。画像検査で腰椎の異常は認められませんでしたがその後の血液検査でビタミンB12欠乏症が確認されました。「ビタミンB12の不足が腰痛等の痛みを引き起こすことがあるのですか?」と驚いたご様子でした。腰痛になる原因は様々ありますが、意外にも栄養不足がその原因の一つになっているのです。
今回は、ビタミンB12と腰痛の関係についてお話ししたいと思います。


結論

ビタミンB12の欠乏は深刻な神経と血液の問題を引き起こす可能性があります。ビタミン B12 は、B 複合体ファミリーに属する必須の水溶性ビタミンです。 血液細胞の形成と修復、DNA の生成、および脳細胞の全体的な維持に必要です。 ビタミン B12 は体が脊椎の神経細胞を置換するのを助け、さらに慢性腰痛の一般的な原因である炎症を軽減します。


ビタミンB12欠乏症とは

ビタミン B12 欠乏症の影響には、手足のしびれ、歩行困難、うつ病、気分の変化、見当識障害、認知症、記憶喪失などの神経系への損傷が含まれます。ビタミンB12が不足すると、ビタミンB12欠乏性貧血になり、以下のような症状を呈することがあります。

  • 脱力感、疲れ
  • 急速な呼吸と心拍
  • 舌の痛み
  • 青白い皮膚
  • 歯ぐきからの出血、あざができやすい
  • 体重の減少、胃のむかつき
  • 便秘または下痢

研究によると人体は、赤血球、神経、DNA を作り、他の機能を実行するためにビタミン B12 を必要とします。 平均的な成人は、1 日 2.4 マイクログラムを摂取する必要があります。 ほとんどのビタミンと同様に、B12 は体内で作ることができません。 代わりに、卵、脂肪分の多い魚、乳製品、強化シリアルなど、ビタミンB12を多く含む食品やサプリメントから摂取する必要があります。しかし、必要な量のビタミン B12 を摂取していない人もいれば、いくら摂取しても十分に吸収できない人もいます。ビタミンB12が不足している人は、医師に相談してビタミンB12注射を処方してもらう場合もあります。

European Review for Medical and Pharmacological Sciences(2000年)

ビタミンB12が神経系で果たす役割により、腰痛を軽減できることが示されました。
Pain Physician 2019年1月号に掲載された研究によると、ビタミンB12は痛みの症状に対する補助的または統合的な治療法であることが証明される可能性があります。より多くの研究が必要ですが、副作用の発生率の低さと全体的な安全性を考慮すると、B12は痛み治療のために考慮すべき追加のツールになるかもしれません。


まとめ

ビタミンB12欠乏症は、ゆっくりと進行し、徐々に症状が現れ、時間の経過とともに強くなっていくことがあります。また、比較的早く発症することもあります。ビタミンB12欠乏症は様々な症状を引き起こすため、見落とされたり、何か他の病気と混同されたりすることがあります。
経験豊富な医師であれば、問診と身体検査で症状に気づき、ビタミンB12欠乏症を発見できるかもしれませんが、症状を確認するためには血液検査が必要です。 早期発見、早期治療が重要です。 治療せずに放置すると、欠乏症は深刻な神経学的問題や血液疾患を引き起こす可能性があります。

腰痛を引き起こすこと原因にビタミンB12不足が関係してる? 結論

参考文献参照元

①Vitamin B12 as a Treatment for Pain - 2019 - Scott Buesing, Miranda Costa, Jan M Schilling, Tobias Moeller-Bertram - Narrative Review (Vol 22 Issue 1)
②Vitamin B12 in low back pain: a randomised, double-blind, placebo-controlled study - 2000 - G L Mauro, U Martorana, P Cataldo, G Brancato, G Letizia - European Review for Medical and Pharmacological Sciences (2000; 4: 53-58)
③Case records of the Massachusetts General Hospital. Case 13-2012. A 62-year-old man with paresthesias, weight loss, jaundice, and anemia - 2012 - Alberto Puig, Mari Mino-Kenudson, Anand S Dighe - CASE RECORDS OF THE MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL (366:1626-1633)
④Methylcobalamin: a potential vitamin of pain killer - 2013 - Ming Zhang, Wenjuan Han, Sanjue Hu, Hui Xu - Neural Plasticity (Article ID 424651, 6 pages)
⑤Nucleotides Cytidine and Uridine Associated with Vitamin B12 vs B-Complex Vitamins in the Treatment of Low Back Pain: The NUBES Study - 2020 - Marco Antonio Naslausky Mibielli, Carlos Pereira Nunes, Henrique Goldberg, Luiz Buchman, Lisa Oliveira, Spyros G E Mezitis, Fernanda Wajnzstajn, Renato Kaufman, Rafael Nigri, Natasha Cytrynbaum, Karin Soares Cunha, Alessandra Santos, Stephanie Wrobel Goldberg, Natália Carvalho Platenik, Helio Rzetelna, Daniel Bertoluci Futuro, Adenilson de Souza Da Fonseca, Mauro Geller - Dove Press journal: Journal of Pain Research (Volume 2020:13 Pages 2531—2541)

参考文献のリンク

Vitamin B12 as a Treatment for Pain
Vitamin B12 in low back pain: a randomised, double-blind, placebo-controlled study
Case records of the Massachusetts General Hospital. Case 13-2012. A 62-year-old man with paresthesias, weight loss, jaundice, and anemia
Methylcobalamin: a potential vitamin of pain killer
Nucleotides Cytidine and Uridine Associated with Vitamin B12 vs B-Complex Vitamins in the Treatment of Low Back Pain: The NUBES Study

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任