概略

ぎっくり腰は、急に強い腰痛を引き起こす急性腰痛です。重い物を持ち上げるなどの動作により、腰椎や筋肉、靭帯に突然の負担がかかることで炎症や損傷が生じ、強い痛みを伴います。対策として、可能な範囲で体を動かすことが痛みを軽減し、機能の回復を促進する効果があります。


目次

ぎっくり腰とは?

医学用語では、非特異的な急性腰痛と言いますが、ここでは分かりやすくぎっくり腰で説明します。2013年日本整形外科学会の腰痛診療ガイドラインでは、ぎっくり腰とは『腰の痛みが出現してから4週間未満のもの』と定義されています。


ぎっくり腰の原因

ぎっくり腰の原因は、腰の筋肉や関節の外傷、椎間板ヘルニアである可能性が高いとされていますが、さまざまな検査をしても、検査精度の限界により原因がはっきりしないことも多いです。


ぎっくり腰に潜む病気

まれですが、ぎっくり腰の原因に危険な病気が隠れている事があります。注意が必要なぎっくり腰=病院に相談すべきぎっくり腰ですので、下記の条件に当てはまる方は一度専門の医療機関に受診することを検討してください。

  • 足の痛みを伴うぎっくり腰 → これは神経障害が生じている場合
  • 若い人に生じたぎっくり腰 → これは骨折(分離症)の可能性がある場合
  • 発熱を伴うぎっくり腰 → これは感染症が関与している可能性がある場合
  • ステロイド内服中のぎっくり腰 → これは骨粗鬆症による骨折の可能性が高い場合
  • 安静時(横になっている時)にも悪化するぎっくり腰 → 内臓の病気の可能性がある場合

ぎっくり腰になった時は

結論から申しますと、過度の安静は必要なく痛み止めの薬を使用し、動ける範囲で動いていくことが大切となります。

多くの論文や研究報告では、『一般的な安静指示は有効な治療法とはいえず、痛みに応じた活動性維持が疼痛を軽減し、機能を回復するのに有効である。』とされています。簡単に言いますと、『痛みがあっても動ける範囲で動いた方が良い。』という事です。

また、ぎっくり腰には痛み止めを使用した方が良いとされています。患者様からは「痛み止めはごまかしているだけだから使いたくない」とお聞きすることもありますが、痛み止めの薬を使用した方が慢性疼痛を予防できるので有効だとのエビデンスが出ていますので、安心して痛み止めを使用してください。

そして、コルセットはできるだけ使用しない様にすることが望ましいですが、再発予防には有効だと考えられていますので、重たいものを運ぶ等の時に予防目的で使用する事は良いと考えられています。


ぎっくり腰を患った際の運動について

持続的な腹筋と背筋の強化としてストレッチは腰痛予防に有効であるとされています。*1
ポイントは「持続的」である事です。個人によって持続可能な運動強度は異なりますが、まずはウォーキングから始める事が良いと考えます。ウォーキングのポイントとしては、以下の事が推奨されています。

  • 一度に長時間行うよりも20分程度の運動を毎日行う事
  • 遠くを見るようにする事
  • 腕を大きく振り、やや大またで歩く事

また70歳以上の方は週に1回以上の活動性の高い運動も腰痛予防に有効と報告されています*3
具体的にはどのような運動がよいのかと問われると、私はプール歩行を推奨しています。週1回からでいいので1回30分程行うようにしましょう。理由は腰部を支える腸腰筋や脊柱起立筋の筋力強化を負担少なく行えますし、同時にストレッチ効果も期待できるためです。*4

現在、腰痛および下肢の神経痛があり、そもそも上記のような運動が出来ない場合には個別対応で運動指導を行い、自宅で可能な運動を覚えていただく事が最適と考えます。当クリニックでは、個別対応プログラムを1~2週間に一度の頻度で実施し、計12回で終了する腰痛リハビリプログラムを行っていますのでいつでもご相談いただければと思います。


NLC野中腰痛クリニックによる腰部脊柱管狭窄症の治療実績

腰部脊柱管狭窄症の治療実績をご紹介します。中高年以上の患者さまが多く、治療中のご様子までご覧いただけます。当院の腰部脊柱管狭窄症の治療実績はこちらをご覧ください。
NLC野中腰痛クリニックの日帰り腰痛治療の実績は、6,358件(集計期間:2018年6月~2024年10月)


参考文献参照元

①vanTulder MW,et al: Nonsteroidal anti-inflammatory drugs for low back pain: a systematic review within the framework of the Cochrane Collaboration Back Review Group. Spine25: 2501-2513,2000
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11013503/
②Roelofs PD,et al: Nonsteroidal anti-inflammatory drugs for low back pain: an updated Cochrane review. Spine33: 1766-1774,2008
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18580547/
③Chou R,et al: Medications for acute and chronic low back pain: a review of the evidence for an American Pain Society/American College of Physicians clinical practice guideline. Ann Intern Med147: 505-514,2007
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17909211/
④Chow R,et al: Diagnosis and treatment of low back pain: a joint clinical practice guideline from the American College of Physicians and the American Pain Society. Ann InternMed 147: 478-491,2007
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17909209/
⑤Van Poppel MN,et al:An update of a systematic review of controlled clinical traial on the primary prevention of back pain at the workplace.Occup Med 54:345-352,2004
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15289592/
⑥矢吹省司:非特異的腰痛の病態と治療−腰痛診療ガイドラインを踏まえて−「運動療法」,整形・災害外科2013年11月号(56巻12号)
https://www.kanehara-shuppan.co.jp/magazines/detail.html?code=055272013110
⑦Hartvigsen J,at el:Active life style protects against incident low back pain in seniors:a population-based 2-year prospective study of 1387 Danish twins aged 70-100 years.Spine 32:76-81,2007
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17202896/
⑧Morkved S,et al:Dose group training during pregnancy Obst Gynecol 86:276-282,2007
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17364300/

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任