椎間板ヘルニアが発症した直後を急性期と呼び、痛みが1番強い時期です。また、この期間を安静期間とも呼び、無理をせずに薬やブロック注射、コルセットなどを用いて痛みを緩和するような過ごし方で対処しましょう。椎間板ヘルニアには発症してから改善までに5つの期間があり、症状改善のために正しい知識を身につけ、各期間でどのようなことを意識すべきなのかを参考にしていただければと思います。


目次

椎間板ヘルニアの急性期はいつまで?

腰骨の間に椎間板といったクッションがあります。椎間板ヘルニアとは、クッションに傷が出来て、その傷口から中にある組織が外に漏れ出てくることを言います。椎間板ヘルニアが発症し、症状が回復するまでにはいくつかのカテゴリーに分けられます。急性期、回復前期、回復後期、治癒期、超回復期などと言います。椎間板ヘルニアを発症した時期のことを、急性期と呼び、炎症が起きており最も痛みが強く出る時期です。数週間から1か月ほどで落ち着くことが多いですが、咳だけでも痛みを感じるなど、日常生活に支障をきたします。

急性期など各期間の過ごし方について

  • 急性期……椎間板ヘルニアが発症し、腰から足への痛みが強く出ます。症状によっては足へのしびれ症状も認めます。咳をするだけでも痛みを感じるほどです。無理な運動などはするべきではありません。安静期間とも呼ばれ、薬やブロック注射、コルセットなどを用いながら痛みを軽減させるべき時期です。
  • 回復前期……急性期に比べ症状の緩和がみられる時期です。日常生活も比較的行いやすくなっていると思います。体を捻ったり重たいものを持つなど無理のある動きは厳禁です。
  • 回復後期……足のしびれが残っているなどはあると思いますが、さらに日常生活が楽に行える時期です。再発のリスクはあるので、同じ姿勢を長時間取るなど腰の負担になるようなことは避けてください。
  • 治癒期……痛みなく日常生活を送れる時間が増えてきます。無理が無い範囲で腰回りの筋肉をつける運動を行うなど、腰の負担を減らしていく必要があります。
  • 超回復期……ほぼ問題なく、以前のような日常生活が送れると思います。負荷を掛けすぎないように注意をしながら、体を動かす範囲を増やしてしてください。

椎間板ヘルニアの治療方法は?

椎間板ヘルニアの治療方法は、保存療法と外科手術に分けることが出来ます。保存療法とは、リハビリテーションやお薬、ブロック注射などの手術以外の治療法のことです。外科手術とは、麻酔を行いメスで切開し、ヘルニアを摘出するなどの治療法のことです。

保存療法か外科手術か

保存療法の特徴は、お体への負担が少なくどなたでも行える点です。椎間板ヘルニアと診断があった場合、まずは保存療法から治療が始まることが多いです。しかし、デメリットもあります。保存療法を行ったところで、椎間板ヘルニアは治りません。根本治療では無いので痛みは和らぐ可能性はありますが、椎間板自体が改善するわけではありません。外科手術の特徴は、椎間板ヘルニアに対する根本治療となります。方法は様々ですが、椎間板を切除したり、ヘルニアを摘出することにより痛みを和らげます。デメリットとしては、全身麻酔や入院が必要となりお体への負担が大きいことです。どんな治療法にも、良い点悪い点があります。主治医の先生とよくご相談し、最適な治療を見つけることが重要です。


治療をしなくても椎間板ヘルニアは3か月で治る?

椎間板ヘルニアが発症しても、特に何もせずに痛みが緩和したというお話を聞いたことがありませんか?飛び出たヘルニアは、体の機能により3か月ほど経つと自然に吸収されます。 上記のように「自然に治った」と仰る方は、この体の機能によるものです。もちろん、3か月以降もヘルニアのお痛みに悩まれている方もたくさんおられます。そのような方は、腰のクッション(椎間板)の傷が塞がっておらず、中にある髄核という成分が漏れ続けている状態です。体の機能を使いヘルニアを吸収しても傷が塞がっていなければ、髄核は漏れ続け、炎症も継続し痛みやしびれの症状も継続します。治療をしなくてもヘルニアの痛みが無くなるかどうかは、椎間板の傷が残っているかどうかによって決まります。


椎間板ヘルニアに有効な背中の筋肉のエクササイズ

  1. 仰向けで寝転びます
  2. ゆっくりと両手を万歳します
  3. ゆっくりと元に戻します
  4. この動きを10回繰り返します
  5. 1セット10回、1日3セット行います

ポイント

  • 手を上げる時は、肩が痛くならない範囲で行います

椎間板ヘルニアに対する日帰りの椎間板治療とは

椎間板ヘルニアの治療方法には、保存療法と外科手術があるとお話ししました。もう一つの治療方法は、椎間板治療です。椎間板治療とは、メスを使用せず椎間板の傷を治療する方法です。当院では、DST(ディスクシール)治療法という治療を行っています。日帰りでメスを使わずに、椎間板ヘルニアに対して治療が出来ます。お体への負担が少なく、ご高齢の方にも適応となります。「椎間板ヘルニアを根本的に治したいが、外科手術は怖い」とお悩みの方は、一度ご検討ください。


椎間板ヘルニアには安静が良い?急性期や安静期間の過ごし方について腰痛クリニックの医師が解説!のまとめ

椎間板ヘルニアが発症してから、期間により5種類のカテゴリーに分けることが出来ます。発症してからすぐの期間を急性期と呼び、痛みが1番強い時期です。この期間は安静期間とも呼ばれ、無理をせずに薬やブロック注射、コルセットなどを用いて痛みを少しでも緩和させてください。回復期間に入り、少しずつ痛みが引いてこれば無理の無い範囲で体を動かしてください。安静にしすぎると回りの筋肉も衰えますし、かえって症状の回復が遅くなることがあります。どのように体を動かして良いか分からない場合は、主治医の先生にご相談した上で、リハビリテーションを行うことも有効です。無理をしすぎて再発するリスクもあります。ただ、安静にしすぎることは決して腰に良いことばかりではありません。安静にする時期や身体を動かす時期など、その時に適した判断が必要となります。主治医の先生やリハビリテーションの先生と充分にご相談いただき、少しでも椎間板ヘルニアの症状が緩和するように願っています。


参照先

腰部椎間板ヘルニアの保存的療法 宇田 川博, 林 栄一, 井上 喜博, 村上 圭介 医療 1965年19巻12号p.1081-1084

引用リンク

腰部椎間板ヘルニアの保存的療法

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任


腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアとは背骨の間にある椎間板(ついかんばん)が外に飛び出し神経を圧迫する疾患です。坐骨神経痛、ぎっくり腰などの症状を引き起こします。