概略

喫煙と椎間板ヘルニアにの因果関係について解説しています。タバコに含まれるニコチンは椎間板への血流を減少させ、栄養失調と脱水を引き起こし、椎間板変性を発生させます。これが長期にわたると椎間板ヘルニアを引き起こす可能性があり、腰痛のある人は禁煙することがよいと結論付けています。


喫煙と腰痛の関係性

目次

喫煙と腰痛の関係性

先日、私の腰痛外来をご夫婦が受診されました。ご主人が椎間板ヘルニアで悩まれていたのですが、奥様が「タバコばっかり吸っているからそんな病気になったんじゃない?」とおっしゃられました。ご主人は「タバコは関係ない。」と反論されたのですが、実は奥様の言われている通り、腰痛の患者様ではタバコを吸われている方が多いのです。今回は「タバコと椎間板ヘルニアが関係しているのか?」について論文を引用し、考察してみました。


喫煙者は腰痛になりやすい

論文を紐解き、統計データを確認していくと椎間板ヘルニアのある方の喫煙率は、非喫煙者で椎間板ヘルニアのある方に比べ明らかに高く、喫煙者は腰痛になりやすいことや喫煙は既存の椎間板変性を悪化させる可能性があることが示唆されています。分かりやすく言うとタバコは椎間板ヘルニアを引き起こす原因になるという事です。


原因はニコチン

椎間板には血管がなく、椎間板の上下にある椎骨の毛細血管から染み出た栄養分をスポンジが水を吸い込むように吸収しています。喫煙すると、タバコに含まれる「ニコチン」が椎間板周囲の毛細血管を収縮させ、栄養が充分に行き渡らなくなり、椎間板を変性させます。その上、ニコチンはコラーゲンの作成に必要なビタミンCの流失につながることも実験で確認されています。正常の椎間板の8割が水分を保つコラーゲンできているので、コラーゲン不足になると椎間板内の脱水いわゆる椎間板変性が発生します。長く続くと脊椎不安定が発生して椎間板の損傷がさらに進んで、知らないうちに椎間板ヘルニア脊柱管狭窄症等疾患等になることが示唆されます。

  1. タバコの喫煙 ⇒ 体内にニコチンが増加 ⇒ 血流を悪化⇒椎間板の損傷
  2. タバコの喫煙 ⇒ ビタミンCを消費 ⇒ コラーゲン生成が低下 ⇒ 椎間板の再生低下

タバコを吸うと椎間板ヘルニアになりやすい

タバコを吸うと椎間板ヘルニアになりやすいので、腰痛でお悩みの方は禁煙をするのも一手です。ご家族に喫煙されている方がいた場合にも「タバコは腰痛や坐骨神経痛の原因だから禁煙すべき!」なんて言えますね。(笑)

タバコを吸うと椎間板ヘルニアになりやすい

参考文献参照元

①整形外科疾患に対する喫煙の影響:Cigarette smoking and its orthopedic consequences Kwiatkowski: T C Kwiatkowski / E N Hanley Jr / W K Ramp - カロライナ医学センター整形外科 Am J Orthop 25(9):590-7,1996 - 日本語訳:北海道深川市立病院内科医長 松崎道幸先生
②Smoking cigarettes can be a chronic pain in your neck: Smoking linked to cervical degenerative disc disease: Laura Stiles - 2016 - Clinical Pain Advisor
③Effects of Tobacco Smoking on the Degeneration of the Intervertebral Disc: A Finite Element Study: Shady Elmasry / Shihab Asfour / Juan Pablo de Rivero Vaccari / Francesco Travascio
④Effect of Nicotine on Spinal Disc Cells: A Cellular Mechanism for Disc Degeneration: Mohammed Akmal / Anil Kesani / Bobby Anand / Abhinav Singh / Mike Wiseman / Allen Goodship - 2004 - Spine (Phila Pa 1976)
⑤The Twin Spine Study: Contributions to a changing view of disc degeneration: Michele C Battié / Tapio Videman / Jaakko Kaprio / Laura E Gibbons / Kevin Gill / Hannu Manninen / Janna Saarela / Leena Peltonen - 2009 - The Spine Journal

参考文献のリンク

Cigarette smoking and its orthopedic consequences
整形外科疾患に対する喫煙の影響
Smoking cigarettes can be a chronic pain in your neck: Smoking linked to cervical degenerative disc disease.
Effects of Tobacco Smoking on the Degeneration of the Intervertebral Disc: A Finite Element Study
Effect of Nicotine on Spinal Disc Cells: A Cellular Mechanism for Disc Degeneration
The Twin Spine Study: Contributions to a changing view of disc degeneration

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任


腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアとは背骨の間にある椎間板(ついかんばん)が外に飛び出し神経を圧迫する疾患です。坐骨神経痛、ぎっくり腰などの症状を引き起こします。