はじめに
今回は、「痛みとは何か?」について、わかりやすくご説明していきます。痛みの種類や構造を正しく理解いただくことでどのような治療が適しているかが見えてきます。
ご挨拶
こんにちは、東京院の院長、山﨑です。
突然ですが、みなさん、「痛み」って、実はとても複雑な現象であることをご存知でしょうか?
「何を言っているんだ?」と思われたかもしれませんが、実際には痛みの種類、構造、そして発生のメカニズムは一つではありません。
そのため、痛みの治療が難しいのは当然のことなのです。(これは言い訳ではありません!)
今回は、この「痛みとは何か?」について、わかりやすくご説明していきます。痛みの種類や構造を正しく理解することで、どのような治療が適しているかが見えてきます。
少し内容が多くなりますので、数回に分けてお届けします。
痛みの伝わり方(構造)

痛みの刺激は、まず末梢神経の末端にある「侵害受容器」(痛みセンサー)に届きます。このセンサーは体中の様々な場所に存在しており、刺激を電気信号に変換して神経に伝えます。
その後、電気信号は末梢神経(イメージとしては電線)を通って、脊髄後角という部分に送られます。ここで“電線の切り替え”が行われ、脊髄上行路という経路を通じて脳へと伝達されます。最終的に脳がその信号を「痛み」として認識することで、私たちは痛みを感じるのです。この伝達経路のどこで異常が生じるかによって、痛みの種類や治療法は異なります。
痛みの分類
① 侵害受容性疼痛(nociceptive pain)
たとえば、体をぶつけたり、切ったりしたときの痛みがこれにあたります。物理的な損傷や炎症によって放出される化学物質が、侵害受容器を刺激し、痛みを引き起こします。

- 特徴的な痛みの表現:ズキズキ、ヒリヒリ、ドクドク(拍動性)
- 主な治療薬:NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、アセトアミノフェンなど
② 神経障害性疼痛(neuropathic pain)
これは、神経そのものが傷つくことによって起こる痛みです。
たとえば、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症では、飛び出した椎間板の髄核が神経を圧迫したり、その成分に対する免疫反応によって炎症性サイトカインが放出され、神経を刺激したりします。

- 特徴的な痛みの表現:ピリピリ、ジンジン、チクチク
- 主な治療薬:抗てんかん薬、抗うつ薬、オピオイド(医療用麻薬)など
まとめ
このように、痛みには種類があり、それぞれに適した治療法が存在します。
「痛み止めを飲んでも効かない…」という場合は、痛みの種類に合った治療がされていない可能性もあります。
もしご自身の痛みに不安がある場合は、どうぞお気軽にご相談ください。
次回予告
実は、痛みの構造にはもう一つ、とても重要な要素があります。少し複雑なので、次回じっくりとご説明させていただきます。どうぞお楽しみに。
引用論文
金井昭文. (2019). 痛みの構造で考える鎮痛薬の選択. 真興交易(株)医書出版部.
半場道子. (2023). 慢性痛のサイエンス 脳からみた痛みの機序と治療戦略 第2版. 医学書院.
この記事の著者

東京院 院長山﨑 文平
2006年:川﨑医科大学卒業・医師免許取得・大阪警察病院勤務、2007年:大阪大学医学部付属病院勤務、2009年:大阪府立急性期・総合医療センター勤務、2011年:大阪大学医学部付属病院勤務、2013年:国立成育医療研究センター勤務、2015年:社会医療法人財団石心会川﨑幸病院勤務、2022年:慶応義塾大学医学部HTA公的分析研究室特任研究員、2023年:野中腰痛クリニック勤務・研修を経てライセンス獲得