概略
セカンドオピニオンを取ることは良い考えです。脊椎手術は非常に深刻な問題であり、長期間影響を与える可能性があるため、セカンドオピニオンを求めることをお勧めします。患者様はセカンドオピニオンを医師に求めることに躊躇することがよくありますが、ほとんどの医師は理解しています。
目次
はじめに
医師から脊椎手術が必要だと言われた場合、手術の同意書にサインする前にセカンドオピニオンを求めるかどうかについて悩まれている方が一定数おられます。今診てもらっている先生に「セカンドオピニオンを受けたいです」とは、なかなか言い出しにくいと思います。
そこで今回は、患者様の為に「脊椎手術の前にセカンドオピニオンを求めるべきかどうか」についてお答えしたいと思います。
結論
セカンドオピニオン求めることは正しいです。
セカンドオピニオンとは
まずセカンドオピニオンを簡単に説明します。セカンドオピニオンは直訳すると「第二の意見」となるように、患者様に下された診断結果やその後の治療方針、治療方法について主治医以外の医師から意見を聞くことを言います。
セカンドオピニオンを受ける理由
ほとんどの場合、病状が緊急事態でない限り、近くの病院の医師に診てもらって解決策を見つけます。しかし、医師は必ずしも答えを持っているわけではありません。症状の異常な性質、または状態の複雑さから医師自らセカンドオピニオンを薦める場合があります。また、患者様が安心して治療を受けるためにセカンドオピニオンを求めることもあります。しかし、日本では「今のお医者さんに伝えるのは失礼だ」とか「これまでも通院していて顔見知りだし」などの理由で言い出しにくい方が多いと思います。
セカンドオピニオンを受けるメリット
- 救命治療に早くアクセスできるようになる可能性
- 治療まの患者とその家族のストレスを減らすこと
- 診断ミスによる不要な治療を避けること
セカンドオピニオン推奨の根拠
Journal of Pain & Relief(2016年)
ジョンズ・ホプキンス病院の研究者は、慢性疼痛患者の40%~80%が誤診されていることを示す論文を発表しています。
Psychosomatics(1993年)
この研究では、60人の慢性疼痛患者の経過を追跡し、疼痛診断センターへの紹介から完全な退院診断の策定までを追跡しました。著者らは、紹介時の不正確または不完全な診断の全体的な割合は 66.7%であると判断しました。
Psychosomatics(1996年)
本研究では、集学的治療センターへ「慢性疼痛」「心因性疼痛」「ぎっくり腰」などと診断された慢性疼痛患者120名を追跡調査を行い、MRI、CT、神経ブロック、定性流量計などの適切な診断検査を用いた集学的評価の結果、多くの患者の紹介診断は不完全または不正確であることが多い(全体の40%が該当する)ことが判明しました。
BMC Musculoskeletal Disorders(2017年)
診断と脊椎手術の必要性に関して、ファースト オピニオンとセカンド オピニオンの間に大きな不一致が見られました。これはセカンドオピニオンを取得することで、潜在的に不要な手術を減らすことができることを示唆しています。
セカンドオピニオンを受ける理由
次のような場合には、セカンドオピニオンを受けることが賢明です。
- 深刻で複雑な健康問題と診断された
- 腰痛や首の痛みで手術を勧められた(緊急性の手術以外)
- 稀な疾患と診断された
- 主治医が確定診断に至っていない
- 疾患・症状に対して適切で効果的な治療法が1つ以上ある
- 担当医師が、患者の質問や懸念、症状を真剣に受け止めてくれない
セカンドオピニオンが推奨されない場合
セカンドオピニオンは一般的に受け入れられている医療行為であり、ほとんどの医師はインフォームド・コンセント(医師と患者との十分な情報を得た上での合意を意味する概念)の下にセカンドオピニオンの価値を理解しています。医師がセカンドオピニオンを勧めないということはまずありません。しかし、セカンドオピニオンを勧めない唯一の例外があります。それは現在の病気に対して早急に治療が必要な場合です。
まとめ
脊椎手術は非常に深刻な問題であり、長期間影響を与える可能性があるため、セカンドオピニオンを求めることをお勧めします。患者様に至ってはよく「主治医に失礼かもしれない」と思い込んでセカンドオピニオンを求めることを控えられます。しかし実際のところ、多くの医師はセカンドオピニオンを求められることも自ら勧めることにも慣れております。患者様が安心して治療を受けるためにセカンドオピニオンを求めても構いません。セカンドオピニオンを求めることにより主治医との関係が悪くなることはありませんのでご安心ください。
参考文献参照元
①Evaluating Chronic Pain Patients Using Methods from Johns Hopkins Hospital Physicians - 2016 - Nelson Hendler - Journal of Pain & Relief
②Overlooked Physical Diagnoses in Chronic Pain Patients Involved in Litigation - 1993 - N H Hendler, J G Kozikowski - Psychosomatics (Volume 34, Issue 6, P 494-501)
③Overlooked Physical Diagnoses in Chronic Pain Patients Involved in Litigation, Part 2: The Addition of MRI, Nerve Blocks, 3-D CT, and Qualitative Flow Meter - 1996 - N Hendler, C Bergson, C Morrison - Psychosomatics (Volume 37, Issue 6, P 509-17)
④Second opinion for degenerative spinal conditions: an option or a necessity? A prospective observational study - 2017 - Mario Lenza, Rachelle Buchbinder, Margaret P Staples, Oscar F P Dos Santos, Reynaldo A Brandt, Claudio L Lottenberg, Miguel Cendoroglo, Mario Ferretti - BMC Musculoskeletal Disorders (Volume 18, Issue 1, P 354)
参考文献のリンク
①Evaluating Chronic Pain Patients Using Methods from Johns Hopkins Hospital Physicians
②Overlooked Physical Diagnoses in Chronic Pain Patients Involved in Litigation
③Overlooked Physical Diagnoses in Chronic Pain Patients Involved in Litigation, Part 2: The Addition of MRI, Nerve Blocks, 3-D CT, and Qualitative Flow Meter
④Second opinion for degenerative spinal conditions: an option or a necessity? A prospective observational study
この記事の著者
医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行
2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任