腰痛になった場合、冷やすべきか温めるべきかは痛みの原因や状態によって異なります。急性腰痛(ぎっくり腰)は冷やす、慢性の腰痛は湯船に浸かったり、温湿布やカイロなどを使ってじんわりと温めましょう。温めることで血行が良くなり、痛みが和らぎます。すべり症の場合は、温めることで筋肉の張りを和らげて骨のズレを防ぐことができます。
目次
腰痛になった場合、冷やすべきか温めるべきか
腰痛になった場合、冷やすべきか温めるべきか迷ったことはありませんか?状況や痛みの種類によって、答えは変わります。
冷やすべき場合
急性の症状であれば、冷やすべきです。急性の症状とは、ぎっくり腰や何かにぶつけたなど怪我などによる痛みのことです。鋭い痛みを感じることが多いです。または、赤くなっていたり腫れていたりします。多くは1週間以内に痛みが落ち着きます。冷やし方は、ビニール袋に少しの水と氷を入れて痛い箇所に当ててください。冷たすぎる場合はタオルなどを挟んでいただいても構いません。
温めるべき場合
慢性の症状であれば、温めるべきです。慢性の症状とは、急に痛くなるのではなく少しずつ症状が出現し、それが3か月以上続くことをいいます。重だるさなどの鈍い痛みを感じる場合が多いです。温め方は、お風呂でしっかりと温めてください。お風呂に浸かることが難しい方は、痛い箇所にシャワーを当て続けてください。
すべり症の場合は冷やすべきか、温めるべきか
一般的な腰痛の場合は、上記のご対応をお願いします。すべり症の場合はどうすべきかと言うと、温めるべきです。腰回りの筋肉が硬くなると、骨盤が前に傾き反り腰姿勢になりやすいです。すべり症は骨が前にすべる、「前方すべり症」が多いですが、反り腰姿勢だと余計に骨が前に滑ってしまいます。すべり症の場合は、冷やすことよりも温めることを行ってください。温めることにより血流の改善が見込まれ、症状の緩和が期待できます。
具体的な温め方
温め方ですが、湯船に浸かってください。ぬるま湯に10分ほど使っていただくだけでも、血流の改善や痛みの緩和の効果が期待できます。無理に熱めの湯船に入る必要はありません。
夏でも冬でも同じ温め方で良い?
前述した湯船に浸かる方法は、季節を問わずにいつでも行ってください。冬場ですと、貼るカイロで腰を温める方法をお勧めしています。腰よりやや下の位置に貼ると、腰全体が温まります。ただ、低温やけどのおそれがあるので、肌に直接貼らずに肌着などの上から貼るようにしてください。夏は大量に汗をかきます。その上でカイロを貼ってしまうと汗により余計に体が冷えてしまいます。夏に貼るカイロはお勧めできません。夏は温めるというより、冷やさない意識が大切です。冷房が効きすぎている場所が多いので、ブランケットなどで体が冷えすぎないように工夫をしてください。
温めるだけではなく、エクササイズも大切
すべり症にとって、温めることは非常に重要です。ただ、すべり症に適したエクササイズを行うことでより効果が期待できます。ご自宅で、道具を使わずに行えるのでぜひお試しください。
すべり症の予防に効果的なエクササイズ
- 四つ這い姿勢になります(手と足はそれぞれ、肩と股関節の真下にきます)
- 腰を丸めたまま、お尻を踵の方へ下げます
- 椅子に座るように、膝と股関節を曲げていきます
- ゆっくり元に戻します
- この動きを10回繰り返します
- 1日2,3セット行います
注意ポイント
- 最初から最後まで出来るだけ腰は丸めてください
- ストレッチ中は息を止めずに、自然に呼吸を続けてください
メスを使わず日帰りで行える、すべり症の椎間板治療とは
外科手術は、腰椎すべり症に対する根本治療ですがお体への負担は大きくなります。「全身麻酔は怖い」「長期の入院はしたくない」「体にメスを入れたくない」など様々なご意見があるかと思います。当院で行っている、ディスクシール治療(Discseel® Procedure)はすべり症に対して、日帰りで行える椎間板治療となります。メスを使用しないので、お体の負担は少なくご高齢の方にも治療を受けていただくことが可能です。
すべり症の症状が辛い。この場合は温めるべき?冷やすべき?のまとめ
すべり症に対しては、温めるべきです。温めることにより、血流の改善や痛みの緩和が期待できます。温め方は、ぬるま湯に10分ほどゆっくり浸かってください。無理に熱い湯船に浸かる必要はありません。冬場であれば、貼るカイロもお勧めです。腰よりもやや下の位置に貼ることによって、腰全体を温めることが出来ます。ただ、夏にまでカイロを貼ってしまうと汗を大量にかき、余計に体を冷やすことになってしまいます。夏は冷房が効きすぎていることが多いので、温める事よりもブランケットを使うなどして体を冷やさないことを意識してください。すべり症にとって、温めることやエクササイズを行うことは有効です。ただ、それによってすべり症が完治することはありません。根本から治すためには、外科手術や椎間板治療が必要となります。まずは専門医の診察を受けていただければと思います。
参照先
腰痛に対する温泉療法の臨床効果 岡本誠,芦田耕三,山本和彦,岩垣尚史,柘野 浩史,保崎 泰弘,御舩尚志,光延文裕,谷崎勝朗,多田慎也,原田実根 岡山大学医学部付属病院三朝分院内科 岡山大学医学部第二内科 1997年12月 68巻p.51-58
引用リンク
この記事の著者
医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行
2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任
腰椎すべり症
腰椎すべり症とは背骨が前方や後方にずれてしまう疾患です。腰痛・足の神経障害の他に間欠性跛行(かんけつせいはこう)の症状を引き起こします。