概略

ディスクシール治療(Discseel® Procedure)は椎間板修復治療です。損傷して変性した線維輪を修復して、椎間板の機能をある程度回復させることが可能です。腰椎椎間関節症(椎間関節性腰痛)は関節の炎症によって引き起こされますので、残念ながらディスクシール治療(Discseel® Procedure)による治療効果は期待できません。


ディスクシール治療(Discseel® Procedure)で椎間関節性腰痛は治療できる? 序論

目次

はじめに

他院で腰椎椎間関節症(椎間関節性腰痛)と診断された70代の男性患者様がディスクシール治療(Discseel® Procedure)を希望され来院されました。MRI検査で椎間板変性が確認されましたが、線維輪の損傷が見られませんでした。こちらの患者様にディスクシール治療(Discseel® Procedure)は椎間関節性腰痛に有効でしょうか?今回はこの問題についてお答えします。


結論

ディスクシール治療(Discseel® Procedure)は椎間板再生治療です。
腰椎椎間関節症(椎間関節性腰痛)に対応できると考えにくいです。
もし変性した椎間板の線維輪に亀裂が入ったことで、髄核が漏れ出た場合、線維輪を修復して椎間板の機能をある程度回復できます。その際に腰椎椎間関節症(椎間関節性腰痛)への圧力が減り、炎症が改善することで症状も緩和されるであろうと考えます。


椎間関節性腰痛(腰椎椎間関節症)

椎間関節とは

椎間関節は脊椎の後方、左右にあり、積み木のように重なっている椎骨を繋げ、背骨が自由に曲がったり捻ったりすることを可能にする関節です。クッションの役割を果たしている椎間板と供に身体を支えています。

椎間関節性腰痛(腰椎椎間関節症)とは

椎間関節性腰痛(腰椎椎間関節症)は、加齢や怪我の影響により椎間関節が炎症を起こしたり、動きが悪くなったりすることで引き起こされる腰痛の症状を言います。腰痛は左右どちらかに起こることが多く、時には、お尻や太ももの裏にまで痛みが波及することもあります。

椎間関節性腰痛(腰椎椎間関節症)の症状

腰椎椎間関節症の症状には次のようなものがあります。

  • 激しい腰痛(特に動いているとき)
  • 腰のこわばり
  • 運動能力の制限
  • 背中を後ろに曲げたり、まっすぐにしたりすると痛みが増加する
  • 坐骨神経痛の症状

椎間関節性腰痛(腰椎椎間関節症)の治療法

保存治療

  • 装具療法(コルセットを着ける)
  • 薬物療法(痛み止めの内服など)
  • 理学療法(リハビリでストレッチや筋力トレーニングなど)
  • 痛み止めの注射(椎間関節ブロック)

手術

  • 外科的手術
  • 再生治療

研究レポート

Spine(2007年)に掲載された比較研究によると、椎間関節症は30代前半に頻繁に発生し、多くの方は20 歳になる前にした重労働の量に関連していることが示されています。椎間関節症は20~29歳の57%、30~39歳の82%、40~49歳の93%、50歳~59歳の97%に確認されました。発生する位置としては、腰椎の下方(L4-L5またはL5-S1)が最も一般的でした。


まとめ

たいていの椎間関節性腰痛(腰椎椎間関節症)は我慢できる程度ですが、進行すると骨が変性(変形)し、神経に影響を及ぼします。もし発見が遅れ、椎間板が変性し、線維輪から髄核が漏れた場合は、ディスクシール治療(Discseel® Procedure)により線維輪を修復して、椎間板の機能をある程度回復させることが可能です。症状の悪化を防ぐためにも、なるべく早く専門医と相談することをお勧めします。

ディスクシール治療(Discseel® Procedure)で椎間関節性腰痛は治療できる? 結論

参考文献参照元

①Prevalence of lumbar facet arthrosis and its relationship to age, sex, and race: an anatomic study of cadaveric specimens - 2007 - Jason David Eubanks, Michael J Lee, Ezequiel Cassinelli, Nicholas U Ahn - Spine (Volume 32, Issue 19, P 2058-62)
②Clinical features of patients with pain stemming from the lumbar zygapophysial joints. Is the lumbar facet syndrome a clinical entity? - 1994 - A C Schwarzer, C N Aprill, R Derby, J Fortin, G Kine, N Bogduk - Spine (Volume 19, Issue 10, P 1132-7)
③Facet joint syndrome: from diagnosis to interventional management - 2018 - Romain Perolat, Adrian Kastler, Benjamin Nicot, Jean-Michel Pellat, Florence Tahon, Arnaud Attye, Olivier Heck, Kamel Boubagra, Sylvie Grand, Alexandre Krainik - Insights into Imaging (Volume 9, Issue 5, P 773-789)
④Pathogenesis, diagnosis, and treatment of lumbar zygapophysial (facet) joint pain - 2007 - Steven P Cohen, Srinivasa N Raja - Anesthesiology (Volume 106, Issue 3, P 591-614)
⑤The anatomy of lumbosacral posterior rami and meningeal branches of spinal nerve (sinu-vertebral nerves); with an experimental study of their functions - 1956 - H E PEDERSEN, C F BLUNCK, E GARDNER - Journal of Bone and Joint Surgery (Volume 38-A, Issue 2, P 377-91)

参考文献のリンク

Prevalence of lumbar facet arthrosis and its relationship to age, sex, and race: an anatomic study of cadaveric specimens
Clinical features of patients with pain stemming from the lumbar zygapophysial joints. Is the lumbar facet syndrome a clinical entity?
Facet joint syndrome: from diagnosis to interventional management
Pathogenesis, diagnosis, and treatment of lumbar zygapophysial (facet) joint pain
The anatomy of lumbosacral posterior rami and meningeal branches of spinal nerve (sinu-vertebral nerves); with an experimental study of their functions

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任