概略

極度な精神的ストレスが慢性的な腰痛を引き起こす可能性を示唆しており、その因果関係は戦争で戦った兵士を対象とした研究調査で明らかになりました。慢性的な痛みが精神的ストレスを悪化させ、回復を遅らせるなどの負のサイクルを生み出します。慢性的な痛みのある人は、精神的ストレスの原因を特定して対処することを推奨します。


目次

腰痛の原因は腰骨だけじゃない

日々の診療の中で、検査や診察ではこれと言って原因が見当たらないのに強い腰痛を訴える患者様がいらっしゃいます。お話を伺うと、日常生活の中で強い精神的ストレスがかかる生活環境におられることが大変多くございました。そこで今回は精神的ストレスが腰痛を引き起こし悪化させる原因になっているのかある研究結果をもとにご紹介したいと思います。


極度な精神的ストレスが腰痛を引き起こす

海外の論文(※1)を拝見していると、イラク、アフガニスタン等の戦闘地域では明らかな外傷がないにも関わらず兵士の腰痛発生率が急増する事が報告されています。そして、腰痛を発症した兵士の復帰率は13%しかないことも同時に報告されております(※2)戦時下において腰痛は重大な問題を引き起こす頃が示唆されています。この様に極度の精神的ストレスにさらされるような生活環境では腰痛が生じ、悪化するため統計的に見ても偶然起こったとは考えにくいことが言えます。また腰痛が悪化する事で直接及び間接的にも、精神的ストレス自体を増大させてしまう事でさらなる腰痛悪化を引き起こし、最悪の場合、負のサイクル(精神的ストレス→腰痛→精神的ストレス増加→腰痛悪化→…)が形成されてしまうこともあるのです。


精神的ストレスの改善・対策

対策としては精神的ストレスの改善という事になりますが、医師としては患者様に腰痛の原因が精神的ストレスである可能性を示唆し、正しく病態を説明し個々の患者様が精神的ストレスの改善を図れるように生活のアドバイスやリハビリ指導や診断書等の作成等をお手伝いをさせて頂いております。


まとめ

精神的ストレスによる腰痛は引き起こされ悪化することがあります。極度なストレスを感じていないか、生活環境に影響が出ていないかご自身をケアすることが大切です。検査や診察を受けることで身体の状態を知り、医師に相談しながら治療法を検討されることを強くお勧めします。

参考文献 参照元

※参考論文および文献―
①Cohen SP,Nguyen C,Kapoor SG,et al:Back pain during war: an analysis of factors affecting outcome.Arch Intern Med 169 : 1916-1923,2009.
②CohenSP,Brown C,Kurihara C,et al : Diagnoses and factors associated with medical evacuation and return to duty for service members participating in Operation Iraqi Freedom or Operation Enduring Freedom : aprospective cohort study.Lancet 375 : 301-309.2010

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任