ディスクシール治療は、切開を行わず椎間板を修復・再生する治療法です。2024年11月27日、アメリカの第三者機関による調査結果を基に、この治療法の有効性を示す論文が発表されました。
本ブログは12/16(月)10時頃にプレスリリースとして掲載された内容です。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000120950.html
目次
2050年には世界中で腰痛患者が8億人を超える予測
世界疾病負担研究(GBD)2021によると、2020年時点での世界の腰痛患者数は約6億1900万人とされています。この数は今後さらに増加し、2050年には8億4300万人を超えると予測されています。特に80~84歳の高齢層での腰痛発生率が高く、少子高齢化が進む日本では、さらに深刻な問題となると考えられます。
※「Global, regional, and national burden of low back pain, 1990–2020, its attributable risk factors, and projections to 2050: a systematic analysis of the Global Burden of Disease Study 2021」論文内の2020年性別・年齢別の世界の腰痛有症率より引用
患者への負担が少なく再発しにくい治療法
腰痛治療として、日本では切開手術やボルトを使った固定術が一般的です。しかし、これらの治療は外科的手術ができない患者や高齢患者の身体に大きな負担を与えることや、術後の再発率も課題とされてきました。
2010年、アメリカで開発されたディスクシール治療は、患者への負担を軽減し、再発リスクを抑える新しい治療法です。これまでにアメリカ国内で12,900件以上、日本ではNLC野中腰痛クリニックにおいて5,112件の治療実績があります。特に慢性的な腰痛や、過去に手術を受けても改善が見られなかった患者に対しても治療ができるため腰痛治療の新たな選択肢となっています。
ディスクシール治療は
外科的手術に失敗した患者に効果が期待できる
ディスクシール治療の有効性を確認するため、治療前と治療後3年間にわたり、治療を受けた患者を対象とした追跡調査が実施されました。この調査は、アメリカの第三者機関「Oberd」による再生医療カテゴリーで初の治療調査システムを導入して行われています。
調査概要
- 対象患者数:827人(男性70%、女性30%)
- 年齢層:16~89歳(平均56歳)
- 患者条件
- 理学療法や低侵襲治療を複数回受けても慢性的な腰痛に悩む患者
- MRIまたはレントゲンで腰痛評価を受けた患者
- 過去に外科的手術、ブロック注射、理学療法を受けたが効果が見られなかった患者
- 腰痛発症期間:平均11.2年
- 治療箇所:平均3.7箇所の椎間板
- 調査期間:治療前、治療後1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年、2年、3年
- 評価方法
- 身体機能測定(ODI)
- 腰痛や足の痛みの評価(VAS)
- 生活の質(QOL)
調査結果
治療前後でODIスコア、VASスコア、QOLスコアのすべてにおいて大幅な改善が確認されました。特に治療後12ヵ月の追跡調査では、患者の50%がODIスコアで顕著な改善を示し、複数回の外科手術経験者に対しても有効性が認められています。また、治療に伴う感染症やその他の有害事象は確認されませんでした。
主な評価結果
- 身体機能測定(ODIスコア)
- 治療前の平均:40.9%(「重度の障害」に該当)
- 半年後の平均:33.5%
- 3年後の平均:23.1%(「中程度の障害」に改善)
※ODIスコアは、合計スコアを50点で割り、100を掛けた百分率で計算
数値が少なくなるほど身体機能が改善していると評価される - 腰痛・足の痛み(VASスコア)
- 治療前の平均:6.0点
- 半年後の平均:4.2点
- 3年後の平均:3.2点
※VASスコアは、痛みを10点満点で評価する方法(0点が痛みなし、10点が最大の痛み)
※1年後のODIスコアおよびVASスコアが悪化している原因について、本研究ではCOVID-19のパンデミックが影響している可能性が指摘されています。同時期に作成された他の論文でも、精神的な不安感に伴う一時的な疼痛の増加が認められており、これが悪化の一因と考えられます。 - 生活の質(EuroQOL)
- 治療前の平均: 0.61点(「日常生活に支障あり」)
- 半年後の平均: 0.65点
- 3年後の平均: 0.76点(「支障はなくかなり良好な状態」に改善)
※0~1で評価する方法で数値が1に近づけば近づくほど健康体であると評価される。
QOL15%の改善は治療の有効性を示し、ディスクシール治療が慢性的な腰痛や手術後の患者に対して効果的であることを証明しています。全体を通じてディスクシール治療は、慢性的な腰痛や外科手術後の患者にとって重要な治療法であり、その有効性が信頼性の高い調査で実証されています。
ディスクシール治療とは
ディスクシール治療(Discseel® Procedure)は、2010年に脊椎外科専門医であるケビン・パウザ医師が開発した、メスを使わない日帰り治療法です。この治療は椎間板を修復し、腰痛や坐骨神経痛を改善させることを目的としています。
2023年には再生医療として初めて国に認められアメリカ国防総省・退役軍人省より保険適用の認可を得て、アメリカ国内を中心に広がっている治療方法です。
- 導入国
- アメリカ国内20州
- 世界4ヵ国
日本国内ではNLC野中腰痛クリニックがライセンスを取得して治療を提供しています。
他院では同様の治療を受けることはできません。
引用元
①ディスクシール治療論文
Author: Kevin Pauza, Kwadwo Boachie-Adjei, Joseph T Nguyen, Francis Hussey Iv, Jacob Sutton, Akua Serwaa-Sarfo, Patrick M Ercole, Carrie Wright, William D Murrell.Long-term Investigation of Annulargrams and Intra-annular Fibrin to Treat Chronic Discogenic Low Back Pain and Radiculopathy: 1-, 2-, and 3-Year Outcome Comparisons of Patients with and without Prior Surgery
②腰痛増加に関する論文
Author: Manuela L Ferreira,Katie de Luca,Lydia M Haile,Jaimie D Steinmetz,Garland T Culbreth,Marita Cross,Jacek A Kopec,Paulo H Ferreira,Fiona M Blyth,Rachelle Buchbinder,Jan Hartvigsen,Ai-Min Wu,Saeid Safiri,Anthony D Woolf,Gary S Collins,Kanyin Liane Ong et al.Global, regional, and national burden of low back pain, 1990–2020, its attributable risk factors, and projections to 2050: a systematic analysis of the Global Burden of Disease Study 2021
この記事の著者
医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行
2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任