DST法がアメリカ初の脊椎再生医療として承認されました。アメリカ合衆国の退役軍人を対象に保険も適応されることとなりました。


目次

DST法がアメリカ初の脊椎再生医療として承認

当院で2018年6月より治療提供しているDST法(ディスクシール治療)が脊椎再生医療として米国初となる国の承認を受けました。アメリカ合衆国退役軍人省(The U.S. Department of Defense and Veterans Affairs (V.A.))に登録されている退役軍人を対象に政府の補助金を利用してDST法(ディスクシール治療)が提供されることとなります。政府の補助金を対象とした治療申請はハードルが極めて高く、自己幹細胞移植(日本ではジェネシス社と共同で東海大学病院にて治験中)、脂肪肝細胞移植や血小板由来再生治療などは未だ承認されておらず、再生治療として唯一かつ初めてDST法(ディスクシール治療)が登録される運びとなりました。退役軍人所有の中小企業「LOVELL」から退役軍人福祉省に供給される製品リストの中にディスクシール("Disceel")の表記が確認できます。

退役軍人福祉省に供給されるDiscseel
※非外科的脊椎手術:ディスクシール

またDST法(ディスクシール治療)はアメリカで保険適応となっています。アメリカでは高齢者・障害者・低所得者等に限定された医療保険しか存在せず、日本のような保険制度は確立されていません。そのためアメリカで保険適応される事例はほとんどありませんが今回、DST法(ディスクシール治療)がアメリカ合衆国退役軍人省に認可されたことにより退役軍人対象にした保険制度が適応されることとなりました。


DST法(ディスクシール治療)とはどんな治療?

DST法は腰椎の間にある椎間板に注射針のような長い針を刺しフィブリンという薬液を入れて傷ついた椎間板を修復し、人体の自己再生能力を促して腰痛を改善させる治療法です。椎間板変性症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、坐骨神経痛などの腰痛の病気に対して治療を提供しています。
アメリカではFDA(アメリカ食品医薬品局)の許可と治療技術の特許認定がされています。


DST法(ディスクシール治療)の特徴

  • 検査、診察、治療まで1日で完結するため日帰りが可能
  • 入院なし、原則通院なし
  • 体内に金属などの異物の残留なし
  • 治療時間は20~25分程度
  • 治療翌日から日常生活可能、スポーツ等の激しい運動は1ヶ月後から可能

DST法(ディスクシール治療)治療開発・提供経緯

腰痛はアメリカをはじめ世界中で非常に多い症状です。国内でも腰痛は最も多く挙げられる悩みの1つです。厚生労働省が行った平成28年国民生活基礎調査によると腰痛による自覚症状は男性第1位、女性第2位という結果でした。慢性的な腰痛を改善させるためには外科的手術によるメスを使った切開手術が選択されることが多く、切除術や腰椎をボルトで固定する固定術が従来から行われている手術方法ですが、手術へのリスクや術後の長期入院、長期リハビリが懸念されてきました。米国で脊椎疾患を専門に治療・研究していたケビン・パウザ医師はそのような問題に直面する患者様に対して、低侵襲で幅広い年齢の方が受けられるDST法を開発しました。
DST法(ディスクシール治療)は2010年より米国(テキサス州)の脊椎外科専門医であるケビン・パウザ医師を中心としたチームで研究され、臨床治療が開始された脊椎疾患に対する治療法です。こうしたパウザ医師の考えに共感した野中康行医師がパウザ医師と臨床治療に関する知的財産権の提携を結び、共同研究を含めて2018年6月よりDST法(ディスクシール治療)の治療を行っています。

野中院長・パウザ医師との写真

2018年にパウザ医師の下、研修を行った当院長の写真です。ライセンスを取得した際に証明書も発行されています。


院長からのコメント

当院では2018年6月からDST法の治療を開始して約5年が経過しますが、これまでの治療症例数は3,800件以上になります。今回、米国でDST法が再生医療として国に認められ、より幅広い患者様に提供できる機会が与えられたということは大変喜ばしいことです。当院ではより一層、患者様に自信を持ってこの治療を提供できるようにこれからもパウザ医師との医療連携を強化し、医療技術に貢献していきたいと思います。

野中院長コメントの写真

引用先・リンク情報

原文リソース先:Discseel® Technologies Awarded Contract Approval by the Department of Defense and V.A. to Help the Veteran Suicide and Chronic Pain Crises
ケビン・パウザ医師のDST法に関する英語ページリンク先:The Discseel® Procedure
※1:厚生労働省,『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』
"https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c05/15.html",2023/4/24
※2:厚生労働省,平成28年国民生活基礎調査の概況
"https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/16.pdf,2023/4/24

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任