最新腰痛情報/ 院長ブログ
  • ホーム /
  • 院長ブログ /
  • 最新腰痛情報/
  • 【内容更新】ディスクシール治療がアメリカで脊椎再生医療として初めて国に認可され現役・退役軍人に保険適応されました

【内容更新】ディスクシール治療がアメリカで脊椎再生医療として初めて国に認可され現役・退役軍人に保険適応されました

ディスクシール治療(Discseel® Procedure)がアメリカ初の脊椎再生医療として承認されました。また国防省・退役軍人省において現役・退役軍人を対象に保険適応されることとなりました。


目次

アメリカの保険制度について

アメリカの医療制度は、日本のような国民皆保険制度を持たず、主に民間の健康保険が中心となっています。アメリカの健康保険は、大きく分けて以下の3つに分類されます。

  1. アメリカの健康保険事情
    • 民間保険:多くの人が雇用者を通じて保険に加入しますが、自営業者や失業中の人々は自ら保険を購入する必要があります。保険料は高額で、補償範囲も保険会社により異なります。
    • 公的保険:低所得者層向けのMedicaid(メディケイド)や、高齢者向けのMedicare(メディケア)があります。ただし、これらの制度には対象外の人々も多く存在します。
    • 無保険:民間保険に加入せず、公的保険にも該当しない人々は無保険状態となり、医療費を全額自己負担しなければなりません。

こうした保険制度の背景がある中、
ディスクシール治療は現役・退役軍人に対して保険適応となりました。

ディスクシール治療が
現役・退役軍人に保険適応となった背景

腰痛を発症した退役軍人の中には、症状が改善しないどころか悪化し、手術による治療も適用できない状況にある方が多く存在しました。そのため、オピオイド鎮痛薬(麻薬に近い成分を含む)に頼らざるを得ない状況が続いていましたが、それでも十分な効果が得られないケースが多く、結果としてうつ病を発症し、最終的に自ら命を絶つ退役軍人が多いことが深刻な社会問題となっていました。

2010年より、ケビン・パウザ医師が率いる研究チームが治療を提供し、その対象には多くの退役軍人が含まれていました。この治療の中で導入されたディスクシール治療は、退役軍人の症状を改善させる効果が確認され、さらに自殺率の低下も実証されたため、2023年4月に国防総省および退役軍人省によって保険適用として認められることとなりました。当初は退役軍人にのみ対応となっていましたが、その後、現役軍人にも対象の幅が広がっています。

またディスクシール治療は脊椎再生医療として認可されたためアメリカ合衆国退役軍人省(The U.S. Department of Defense and Veterans Affairs (V.A.))に登録されている現役・退役軍人を対象に政府の補助金を利用して治療が提供されています。政府の補助金を対象とした治療申請はハードルが極めて高く、自己幹細胞移植(日本ではジェネシス社と共同で東海大学病院にて治験中)、脂肪肝細胞移植や血小板由来再生治療などは未だ承認されておらず、再生治療として唯一かつ初めてディスクシール治療が登録される運びとなりました。退役軍人所有の中小企業「LOVELL」から退役軍人福祉省に供給される製品リストの中にディスクシール("Discseel")の表記が確認できます。

退役軍人福祉省に供給されるDiscseel

※非外科的脊椎手術:ディスクシール

ディスクシール治療とはどんな治療?

ディスクシール治療は腰椎の間にある椎間板に注射針のような長い針を刺しフィブリンという薬液を入れて傷ついた椎間板を修復し、人体の自己再生能力を促して腰痛を改善させる治療法です。椎間板変性症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、坐骨神経痛などの腰痛の病気に対して治療を提供しています。アメリカではFDA(アメリカ食品医薬品局)の許可と治療技術の特許認定がされています。

ディスクシール治療の特徴

  • 検査、診察、治療まで1日で完結するため日帰りが可能
  • 入院なし、原則通院なし
  • 体内に金属などの異物の残留なし
  • 治療時間は20~25分程度
  • 治療翌日から日常生活可能、スポーツ等の激しい運動は1ヶ月後から可能

ディスクシール治療の開発・提供経緯

腰痛はアメリカをはじめ、世界中で非常に多い症状の一つです。日本国内でも腰痛は最も多く挙げられる健康上の悩みの一つであり、厚生労働省が行った平成28年国民生活基礎調査によると、腰痛による自覚症状は男性で第1位、女性で第2位という結果が報告されています。

慢性的な腰痛を改善する方法として、一般的には外科的手術が選択されてきました。具体的には、患部を切開する切除術や、腰椎をボルトで固定する固定術といった手術方法ですが、これらの手術には感染症などのリスクが伴い、術後の長期入院や再発率が懸念されていました。

このような課題に対し、米国で脊椎疾患を専門に治療・研究していたケビン・パウザ医師は、患者にとってより低侵襲で、幅広い年齢層の方が受けられる治療法の必要性を感じ、ディスクシール治療を開発しました。この治療法は、2010年より米国テキサス州において、ケビン・パウザ医師を中心としたチームによって研究が進められ、脊椎疾患に対する臨床治療が開始され、現在はアメリカの権威ある医師によって20州の医療機関で治療されています。

当院ではディスクシール治療に関する知的財産権で提携を結び、共同研究を通じて2018年6月よりディスクシール治療を日本国内で提供しています。国内でディスクシール治療が受けられるのは当院だけです。

野中院長・パウザ医師との写真

2018年にパウザ医師の下、研修を行った時の写真です。ライセンスを取得した際に証明書も発行されています。

院長からのコメント

当院では2018年6月からディスクシール治療の治療を開始して約7年が経過しますが、これまでの治療症例数は5,000件以上になります。今回、米国でディスクシール治療が再生医療として国に認められ、より幅広い患者様に提供できる機会が与えられていることは大変喜ばしいことです。当院ではより一層、患者様に自信を持ってこの治療を提供できるようにこれからもパウザ医師との医療連携を強化し、医療技術に貢献していきたいと思います。

野中院長コメントの写真

引用先・リンク情報

原文リソース先:Discseel® Technologies Awarded Contract Approval by the Department of Defense and V.A. to Help the Veteran Suicide and Chronic Pain Crises
パウザ医師のインタビュー:VA and the Pentagon look to take advantage of a new spinal procedure for those injured in the line of duty
ケビン・パウザ医師のディスクシール治療(Discseel® Procedure)に関する英語ページリンク先:The Discseel® Procedure
※1:厚生労働省,『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』
"https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c05/15.html",2023/4/24
※2:厚生労働省,平成28年国民生活基礎調査の概況
"https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/16.pdf,2023/4/24


この記事の著者

医療法人蒼優会 理事長・NLC野中腰痛クリニック 大阪本院 院長:野中康行

大阪本院 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任


  • ホーム /
  • 院長ブログ /
  • 最新腰痛情報/
  • 【内容更新】ディスクシール治療がアメリカで脊椎再生医療として初めて国に認可され現役・退役軍人に保険適応されました
閉じる