本日はアメリカ時間で10月28日(月曜日)になります。研修2日目はDr.Pauzaのオフィスで椎間板治療についてカンファレンスを行ってきました。4時間のカンファレンスで学んだことを3つの要点にまとめてご報告したいと思います。
①椎間板治療の現状について

北米では外科的手術自体が行われなくなっているようです。理由は、外科的手術の前に椎間板治療が行われることが増えているためです。椎間板治療には、幹細胞関連治療、PRP治療、ディスクシール治療などがあり、各治療法の比較分析が終了したのですが、有効性は PRP治療 ≦ 幹細胞関連治療<ディスクシール治療 と判明したことから、ディスクシール治療に政府の保険が承認されました。日本国内でもそれらの椎間板治療は行われていますが、残念ながら有効性が比較検討されておらず有効性の優劣に関しては不明でしたが、北米のデータに基づくとディスクシール治療が優位である可能性が高いと思われます。
以上のことから、北米ではディスクシール治療を希望される患者様が急増しており、米国内だけでなく周辺国からも多数の患者が押し寄せているとのことでした。先月はサウジアラビアの王族が親族を合わせて90人前後をまとめて治療をしなくてはならなくなり、大変だったそうです。海外からもオリンピック選手(ボブスレーや体操)が治療を受けに来られているそうです。私も今年に入り2名ほどオリンピック強化選手に対して治療を行いましたが、代表選手間でディスクシール治療が話題になっているようです。
②頸椎治療の現状

北米では、頸椎に対するディスクシール治療の患者数が腰椎治療の患者様と同数程度まで急増しています。理由は、頸椎に対するディスクシール治療が頭痛とめまいまで改善されることが報告されているためです。頸椎治療の有効率も80%以上と腰椎治療を上回る成績が確認されているようです。さらに最近、交通事故後の頸部痛、頭痛、めまいの患者様に対してディスクシール治療が保険適応になったことが患者数急増に寄与しているようです。
③エクソソーム治療との併用

日本でもエクソソーム治療は行われていますが、北米のエクソソーム治療は極めて高濃度のエクソソームが使用されていました。日本では1mlあたり200単位前後ですが北米では1mlあたり100億単位のエクソソームになっています。このような極めて高純度のエクソソームを製造するには、高純度の精製を繰り返し行い製造されるのですが、日本の技術力で製造できるのか私にはわかりません。ただし北米のエクソソームは価格が1mlで40万円以上と非常に高額になっています。ちなみに日本では1mlで1万円程度です。日本のエクソソーム治療について説明したところ、笑われてしまい恥ずかしかったです。
日本と同様に北米でもエクソソーム治療は美容領域で使われていますが、日本との違いは慢性の関節障害やディスクシール治療の補助としても使用されていることです。特に腰椎のディスクシール治療において、Annulogram検査で神経根側にリークが認められる場合に限りエクソソームを混入する形で使用されています。エクソソーム単独では効果が限定的ですが、ディスクシール治療と併用した場合に有効率が向上するとのことでした。
上記以外にも多くの知見を得ましたが、なによりも再生医療に関しては日本よりも数段上の治療が行われていることに驚きました。また、Dr.Pauzaの施設では患者数が増えすぎたために診察だけを担当する専属医師を2名雇用し、1日に15件の治療をこなしているそうです。死ぬほど忙しいと言っておられました。
院長の一言
ショック
治療規模、知見規模、薬品の質のすべてが規格外でした。我々のクリニックも腰痛治療においては国内では先頭を走っていると思っていましたが、北米の足元にも及ばぬレベルだと知りました。北米では腰痛に対するディスクシール治療が政府の保険適応になり、より高精度の追加治療を併用し治療適応の拡大が行われています。技術面での差はないのですが、知識と適応に大きく後れを取っています。ただ、今回の研修により得たことを日本に還元することで、差は確実に縮まると思います。

この記事の著者
大阪本院 院長野中 康行
2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任