はじめに
「脊柱管狭窄症と診断されたけれど、手術をすべきか迷っている」 「医師によって『手術した方がいい』『まだ早い』と意見が違って困惑している」
診察室では、こうしたお悩みを非常によく耳にします。 脊柱管狭窄症の手術は、人生を左右する大きな決断です。だからこそ、教科書的な説明ではなく「本音」の判断基準を知りたいと思われることでしょう。
今回は、当院(野中腰痛クリニック)のYouTubeチャンネルで公開した「脊柱管狭窄症の手術はいつ受けるべきか?医師目線のリアルな判断基準【手術を急ぐ前に見てください】」の内容を基に、手術を受けるタイミングについて、医師の視点で分かりやすく解説します。
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目次
最初に知っておくべき「手術の限界」
まず大前提として、手術すべての症状に対して万能ではありません。多くの方が「手術をすれば、腰の痛みもしびれも全てスッキリ消える」と考えがちですが、実はそうではありません。
手術で「腰痛」と「しびれ」は治らない
あえて厳しいことを申し上げますが、脊柱管狭窄症の手術では、腰自体の痛み(腰痛)の改善は期待しないでください。手術では背中を切り、ボルトなどで固定することもあるため、腰への負担そのものがゼロになるわけではないからです。
また、慢性的に続いている「足のしびれ」についても、手術で完全に取り除くことは非常に難しいのが現実です。

手術の本当の目的は「足の痛み」を取ること
では、何のためにリスクを負って手術をするのでしょうか?それは、坐骨神経痛に代表される「強い足の痛み」を取るためです。
神経の圧迫によって生じる激しい足の痛みを物理的に解放することが、脊柱管狭窄症手術の最大の目的です。まずは「腰痛やしびれを治すためではなく、足の痛みを取るための手段」だと理解してください。

院長が定める決断ライン:「5分」歩けるか?
痛みの感じ方は人それぞれです。「少し痛いだけで手術したい」という方もいれば、「のたうち回るまで我慢する」という方もいます。では、医師である野中はどこで線を引くのか。その基準は明確です。
痛みがあっても「5分以上」歩けるなら手術はしない
もし私(野中)が患者だとして、足に痛みがあったとしても、続けて5分以上歩ける状態であれば、手術はしない方向で考えます。
なぜなら、まだ歩ける状態であれば、飲み薬や、脊髄刺激療法(SCS)、あるいは当院で行っているような切らない椎間板治療など、手術以外の選択肢で症状をコントロールできる可能性が高いからです。
手術を決断する唯一の条件
私が手術(外科的な処置)を検討するのは、足の神経痛が強すぎて「5分以上続けて歩けない(間欠跛行)」状態になった時です。これは「0か1か」の究極の選択です。5分も歩けないとなると日常生活に大きな支障が出ます。ここまで症状が悪化して初めて、手術という選択をします。
リハビリの壁:「75歳」という年齢の目安
もう一つ、手術を決定する上で非常に重要な要素があります。それは「年齢」です。外科手術を受けるタイミングにはリミットがあると考えています。
75歳を境に変わる「手術の成績」
医療データを見ると、脊柱管狭窄症の手術成績は75歳を境に大きく変わることが分かっています。 これは手術そのものが失敗するわけではありません。問題は「術後のリハビリ」にあります。

成功しても「車椅子」になるリスク
手術が成功しても、その後の約3ヶ月間に及ぶリハビリに耐えうる「気力」と「体力」が残っていなければなりません。 75歳を超えると、このリハビリが思うように進まず、結果として足腰が弱り、手術は成功したのに車椅子生活になってしまうというケースがあるのです。
もちろん、75歳以上でもエベレストに登るような体力がある方は別ですが、一般論としては「74歳以下」であることが、手術を前向きに検討できる一つの目安になります。
手術は「0か1か」ではない
まとめると、「手術の判断基準(リアルな本音)」は以下の通りです。
- 74歳以下であること
- 足の痛みが強く、5分以上歩けないこと
この2つが揃った時に初めて、私は手術を受ける決断をします。

いきなり手術を決める前に
脊柱管狭窄症の治療は「手術をするか、我慢するか」の二択ではありません。今の症状が「5分歩ける」レベルであれば、お薬やリハビリ、そして体への負担が少ない椎間板治療(ディスクシール治療など)といった、手術以外の選択肢がたくさんあります。
「手術と言われたけれど迷っている」「自分の年齢や症状で手術をしていいのか不安」という方は、ぜひ一度ご相談ください。画像データだけでなく、あなたのライフスタイルや「これからどう過ごしたいか」に合わせて、最適な治療法を一緒に考えましょう。
腰の痛みでお悩みの方へ
野中腰痛クリニックでは、MRI画像による詳細な診断を行い、あなたの症状に合わせて椎間板治療が適応するかどうかを判断いたします。
遠方の方でもご利用いただける「無料画像相談」も実施しておりますので、手術を検討する前に、ぜひ一度ご相談ください。
当院でのご受診をご希望の方は下記メールフォームよりお気軽にお問合せください。
この記事の著者
大阪本院 院長野中 康行
2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任