はじめに
「朝起きたら腰が痛い」「寝起きに腰がこわばる」そんな経験はありませんか?
実は、腰痛持ちの約9割が起床時に腰の痛みや違和感を感じているという調査結果があります。(当院調査、2025年7月実施)日中は問題ないのに、朝だけ腰が痛いという方は、就寝中の姿勢や寝具が腰に負担をかけている可能性があります。
本記事では、当院が実施した調査データをもとに、腰痛を悪化させる寝姿勢と改善する寝姿勢、そして寝具選びのポイントについて詳しく解説します。
目次
【第1章】起床時の腰痛、実は多くの人が悩んでいる
調査データで明らかになった実態
腰痛持ちの起床時の違和感頻度
- 「ほぼ毎日」26.2%
- 「週に4〜5回程度」13.9%
- 「週に1〜3回程度」23.7%
- 「月に数回程度」30.2%
- 「ほとんどない」6.1%

約9割以上が月に数回以上、起床時に違和感を感じている
寝具が腰痛に影響していると感じる人は約6割
- 「非常に影響している」15.2%
- 「やや影響している」42.3%

【ポイント】
多くの方が起床時の腰痛に悩んでおり、寝具や就寝環境が原因の一つと認識しています。しかし、具体的にどう対策すればよいかわからず、「特に対策していない」方が37.3%と最多という矛盾した状況にあります。
【第2章】腰痛を悪化させる寝姿勢とは
1. 長時間同じ姿勢で寝る
調査では「長時間同じ姿勢で寝ている」ことが腰への負担要因の第2位(31.2%)でした。
寝返りを打たずに同じ姿勢のまま寝続けると、腰の一部分に圧力がかかり続け、血流が悪化します。その結果、起床時に腰のこわばりや痛みを感じやすくなります。
2. うつ伏せ寝
うつ伏せで寝ると、腰が反った状態になり、腰椎に過度な負担がかかります。特に腰部脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアの方には不向きな姿勢です。
3. 柔らかすぎるマットレスでの仰向け寝
柔らかすぎるマットレスは、腰が沈み込んで「くの字」姿勢になり、腰椎に負担をかけます。調査でも「非常に影響している」と回答した方の中に「やや柔らかい」マットレス使用者が多い傾向がありました。
4. 枕が高すぎる・低すぎる
枕の高さが合わないと、首から背骨全体のバランスが崩れ、間接的に腰への負担につながります。

【第3章】腰痛を改善する寝姿勢のポイント
院長が推奨する寝姿勢の3つのポイント
【ポイント1】横向きで寝始める
当院では「寝返りが打ちやすいように横向きで寝始めることが良い」と推奨しています。
横向き寝のメリット
- 背骨が自然なS字カーブを保ちやすい
- 腰への圧力が分散される
- 寝返りを打ちやすい姿勢
【具体的な横向き寝の方法】
- 左右どちらかを下にして横向きになる
- 膝を軽く曲げる
- 膝の間にクッションや枕を挟むとさらに良い
- 下になる腕は前に出すか、枕の下に入れる
【ポイント2】寝返りが打ちやすい環境を整える
「腰痛患者様がマットレスや枕を購入する場合は、心地よいものを選ぶのでは無く、寝返りが打ちやすいものを選ばれる方が良いと考えます。また、大きめのマットレスの方が寝返りが打ちやすいですから、可能であれば大きめのサイズを選ばれると良いですね。」(院長コメント)
寝返りを打ちやすくする条件
- 適度な硬さのマットレス(硬すぎず、柔らかすぎない)
- 大きめのマットレスサイズ(シングルよりもセミダブル以上)
- 寝室の温度を高めに設定(体が縮こまると寝返りが減る)
【ポイント3】仰向けの場合は膝下にクッションを
仰向けで寝る場合は、膝の下にクッションや丸めたタオルを入れると、腰のカーブが自然になり負担が軽減されます。
調査でも「仰向け」で寝る方が36.7%と最多でしたが、正しい仰向け姿勢を取ることが重要です。
【第4章】腰痛を改善する寝具選びのポイント
マットレスの選び方
調査結果から見えた傾向
- 「非常に硬い」「硬い」マットレスが必ずしも良いわけではない
- 「普通」の硬さでも違和感を感じる方が多い
- 個人の体格や腰の状態によって最適な硬さは異なる
【選び方のコツ】
- 「寝返りが打ちやすいか」を基準にする
- 店頭で実際に横になり、寝返りを打ってみる
- 寝返り時に腰や肩が引っかからないか確認
- 体圧分散性をチェック
- 腰だけが沈み込まず、体全体で支えられるか
- サイズは大きめを選ぶ
- シングル < セミダブル < ダブル
- 寝返りのスペースが確保できる
【硬さの目安】
- 腰部脊柱管狭窄症・すべり症:やや硬め〜普通
- 椎間板ヘルニア:普通〜やや硬め
- 筋筋膜性腰痛:普通
調査結果で明らかになった枕の選び方
- 枕の高さは「普通」が48.6%と最多
- 過度に特殊な枕よりも、自然な高さが好まれる傾向
【選び方のポイント】
- 仰向けで寝たとき
- 首のカーブが自然に保たれる高さ
- 顎が上がりすぎず、引きすぎない
- 横向きで寝たとき
- 鼻・首・背骨が一直線になる高さ
- 肩幅分の高さが必要
- 寝返りのしやすさ
- 頭が沈み込みすぎない適度な硬さ
【第5章】就寝時の腰痛対策|今日からできる3つの習慣
1. 寝る前のストレッチ(5〜10分)
調査では22.7%の方が実践。効果的な腰痛予防法です。おすすめストレッチ
- 膝を抱えるストレッチ(仰向けで両膝を胸に引き寄せる)
- キャットアンドカウ(四つん這いで背中を丸める・反らす)
- 腰ひねりストレッチ(仰向けで膝を左右に倒す)
2. 入浴で体を温める
調査では17.1%が実践。血行促進により筋肉の緊張をほぐします。
効果的な入浴法
- 38〜40度のぬるめのお湯に15〜20分
- 就寝1〜2時間前に入浴
3. 寝室の温度管理
当院からのアドバイス
「寝室が寒すぎると体が縮こまり寝返りの頻度が下がってしまうので、就寝時の室温は少し高くしておくことがお勧めです。私も腰痛持ちですが、ゴルフの前日には寝室の温度を高めに設定しています。」(院長コメント)

【第6章】寝具を変えたら腰痛は改善する?調査結果から
寝具変更の効果に関する調査結果
寝具を変更した経験がある方:41.8%
寝具変更後の結果
- 「改善した」13.2%
- 「少し改善した」50.0%
- 「あまり改善しなかった」28.0%
- 「まったく改善しなかった」8.8%

約6割が改善を実感も、約4割は改善なし
なぜ改善しないケースがあるのか?
- 寝具だけが原因ではない
- 椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの疾患が原因の場合、寝具変更だけでは不十分
- 自分に合った寝具を選べていない
- 「心地よい」と「腰に良い」は別
- 寝返りのしやすさを基準に選ぶことが重要
- 寝姿勢や生活習慣の改善も必要
- 寝具だけでなく、寝姿勢・ストレッチ・温度管理などの総合的なアプローチが効果的
【第7章】こんな症状があれば医療機関へ相談を
寝具や寝姿勢を改善しても腰痛が続く場合は、疾患が原因の可能性があります。
受診を検討すべき症状
- 朝の腰痛が3ヶ月以上続いている
- 足のしびれや痛みを伴う
- 前かがみ・後ろに反ると痛みが強くなる
- 長時間歩けない(間欠性跛行)
- 安静にしていても痛みがある
当院の日帰り腰痛治療について
当院では、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などに対して、メスを使わない日帰り治療を提供しています。ご高齢の方や手術ができないと言われた方にも対応可能です。
まとめ
腰痛を改善する寝姿勢・寝具選びのポイント
- 寝姿勢のポイント
- 横向きで寝始める(膝を軽く曲げる)
- 寝返りが打てる環境を整える
- 仰向けの場合は膝下にクッションを
- 寝具選びのポイント
- 「心地よさ」より「寝返りのしやすさ」を重視
- マットレスは大きめサイズを選ぶ
- 適度な硬さ(個人差あり)
- 今日からできる対策
- 寝る前のストレッチ(5〜10分)
- ぬるめの入浴で体を温める
- 寝室の温度を高めに設定
調査では、寝具を変更して改善した方は約6割でした。しかし、改善しなかった方も約4割おり、寝具だけでなく寝姿勢や生活習慣の見直しも重要です。
それでも改善しない場合は、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの疾患が原因の可能性があります。医療機関にご相談ください。
診療案内
当院では、メスを使わない日帰り腰痛治療を提供しています。
寝具や姿勢を改善しても腰痛が続く方は、一度ご相談ください。
関連記事
この記事の著者

大阪本院 院長野中 康行
2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任