多忙な医師も悩む腰痛 — 皆木靖紀先生の症例と背景
野中腰痛クリニック院長の野中です。本日は、私の大学時代の先輩であり、さや美容眼科クリニックの理事長兼院長を務めていらっしゃる皆木靖紀先生(48歳)の治療症例をご紹介します。
 皆木先生は、私と同じくスポーツを楽しまれており、ゴルフやスキー、サーフィン、そして普段からの鍛錬を長年続けてこられました。しかし、その結果、腰の痛みに悩まされ、仕事にも大きな支障が出ている状況でした。特に医師という職業は体が資本であり、腰痛により診療ができなくなることは、患者さんの健康被害にも繋がる可能性があります。
 皆木先生は東京の町田から来院され、今回、ご本人の許可を得て、その治療内容を分かりやすく解説します。
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目次
48歳で発覚した典型的な椎間板変性症(中等度)
皆木先生の腰のMRI画像を確認した結果、椎間板の損傷を確認しました。
【MRI所見】
- 損傷部位
第4腰椎と第5腰椎の間(L4/L5)、および第5腰椎と仙骨の間(L5/S1)の椎間板
 - 状態
椎間板が、他の部位に比べて黒く変色して変形を伴っており、厚みも減少している状況が疑われます。
 - 診断
椎間板変性症の典型的なタイプであり、ヘルニアによる痛みが強く疑われる状態でした。
 
皆木先生は48歳ですが、長年のスポーツ活動により、40代でも椎間板の損傷が発生することがわかります。幸い、椎間板がまだ完全に潰れきっているわけではなく、この状況は「中等度」と判断され、比較的治りやすい状況であると考えられました。



造影検査(アニュログラム)で明確になった椎間板の「ひび割れ」
治療室にて治療箇所を特定するため、まず椎間板検査(アニュログラム)から開始しました。
 検査では、皮膚から1〜2cmほどの深さに針を挿入し、椎間板内に造影剤を注入します。健康な椎間板であれば造影剤は漏れませんが、皆木先生の椎間板からは、造影剤が黒く染み込む様子が確認されました。これは、椎間板の中央部から周囲にかけて明確なひび割れ(損傷)が存在しており、造影剤がこぼれ出ている証拠です。このひび割れが、痛みの原因であると考えられました。

確実な治癒を目指すディスクシール治療を実施
検査の結果、皆木先生の椎間板に損傷があったため、ディスクシール治療が適用となりました。
- 薬剤の注入
損傷が確認されたL4/L5およびL5/S1の椎間板に対し、薬剤を注入しました。
 - 薬剤の様子
注入される薬剤は透明で色は映りませんが、椎間板内に浸透し、約40秒で内部で固まります。
 - 再発防止への配慮
再発を防ぐため、損傷部位には多めに薬剤を注入しました。
 
この治療は、単に損傷を塞ぐだけでなく、椎間板の機能改善を目指しています。注入された薬剤は一時的に固まった後、体内で徐々に吸収されていきます。この吸収される過程で、椎間板内に線維細胞が再生し、結果として椎間板が強化される仕組みになっています。


治療後の経過と今後のアドバイス:スポーツ再開に向けて
治療は無事に終了しました。治療直後の皆木先生の状態は以下の通りです。
- 腰の違和感
一時的な腰の鈍痛・違和感がありました。
 - 麻酔の影響
注入した麻酔薬の影響で、右足にしびれ感が残っていますが、麻酔が切れると解消していきます。
 
麻酔が切れた後であれば、歩行はもちろん、車、電車、自転車の利用も可能です。
 ただし、注入した薬剤が固まり、馴染んでいく期間が必要なため、皆木先生が楽しまれているゴルフやスキーなどの「激しい運動」はしばらく控えるようアドバイスしました。薬剤は体内で取れることはないため、軽い活動(例えば3月に予定されている海外旅行)は問題ありません。

まとめ
皆木先生の治療が終わり、術後の一時的な腰の鈍痛・右足の痺れはありましたが、安静にしていただき無事に帰宅されました。翌日には治療後に出ていた症状はなくなり、問題なく日常生活を過ごされているようです。またこの3ヵ月後には皆木先生とゴルフに行きました。
 その様子も動画に収めていますのでぜひご覧ください。

関連情報
【関連動画・記事】
 皆木先生の治療の様子をブログで紹介⇒こちらから
 ディスクシール治療の解説動画は⇒こちらから
【当院の治療法】
 ディスクシール治療について⇒こちらから
この記事の著者
 大阪本院 院長野中 康行
2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任