背骨のお役立ち情報 / 院長ブログ

【改善実例】MRIに異常なし⁉️17歳を苦しめた「見えない腰痛」

はじめに

野中腰痛クリニックでは、腰痛の原因の一つとして炎症が関わっていることを繰り返し説明していますが、今回は、画像では異常が見られないにもかかわらず長期間にわたり痛みに苦しんでいた17歳の症例を通して、慢性炎症とその治療の可能性について解説します。


動画はこちら▼

目次

慢性炎症とは

慢性炎症とは、炎症が慢性化した状態を指します。一般に「慢性化していると治りにくい」というイメージがありますが、実際はそうではありません。

慢性炎症について
  • 年齢と慢性化

    慢性化は年齢に関係なく起きる現象です。若い方(10代)でも症状が慢性化する可能性は十分にあります。また、年配の方でも慢性状態から改善する可能性は十分にあります。

  • 重症化の回避

    症状が3ヶ月、半年と続く場合には、重症化する前に一度しっかりと検査や治療を受けることが望ましいです。

患者様の情報と診断

患者プロフィール

17歳、男性の高校生で、野球のピッチャーをしています。
1年前に野球で腰を痛めました。 症状は、腰、お尻、太ももにかけての痛みとしびれが1年間ずっと続いていました。 来院時は、高校野球の予選や将来の進学を控えており、切実な状態でした。

患者プロフィール

他院での画像所見(MRI)

様々な病院を受診しMRIも撮影しましたが、画像上は全く問題がないという診断でした。

  • 椎間板は白く、水分量や厚みも十分で綺麗
  • ヘルニア、狭窄症、骨の滑りなども全く見られない
MRI画像

そのため、「大丈夫だ」として、リハビリや薬を飲んで様子を見る保存的治療が行われていました。

当院での見解(見えない炎症と組織障害)

画像診断で問題がなくても、我々は炎症が原因である、あるいは炎症が続いたことによる組織障害が原因である可能性を考慮しました。

  • 過去の損傷

    1年前にヘルニアがあった可能性がありますが、若い方であったため、ヘルニアは吸収され、椎間板の穴も修復されていったと考えられます。

  • 慢性化のメカニズム

    急性期の炎症自体は収まっていても、炎症が慢性化した結果として、椎間板の周囲(筋肉や靭帯)といった組織にダメージが残っている状態でした。

  • 血流と癒着

    神経や組織を栄養する血管の血流不足が起きたり、神経のところで癒着が起きたりしている可能性があり、これらが痛みの原因となっていると考えられました。

MRI画像内に椎間板の損傷あり

治療法

通常の保存的治療では改善が見込めないこのトラブルに対して、当院では以下の2つの治療法を組み合わせて実施しました。治療時間は約10分程度でした。

治療の画像

治療内容

  • PRP (自己多血小板血漿) 療法

    自分の血液に含まれる再生因子を利用し、組織の修復、血流がない箇所の血流回復、細胞の状態を良くすること(再生能力の活性化)を期待します。

  • オゾン療法

    活性酸素(オゾン)の力により、悪い組織を壊して治す、あるいは組織の癒着を剥がす(解除する)といった効果を期待します。

  • 実施箇所

    椎間板の周りや神経の周りといった、トラブルの原因箇所に対してオゾンを注入しました。治療後の映像では、オゾンが椎間板の周囲や神経に沿って広がっている様子が確認されました。

PRP療法+PODT法①
PRP療法+PODT法②
PRP療法+PODT法③

治療経過と結果

治療前の症状スコア(10段階)は、腰の痛み8、足の痛み4、しびれ3と、強い痛みがありました。

治療後の経過

まとめ

炎症の慢性化は、年齢に関係なく10代の若者でも十分に起こり得ます。また、慢性化していたとしても、様々な治療法が存在し、改善する可能性はあります。
保存的治療法で改善しなかった場合でも、諦めずに、PRPやオゾンなど、組織の修復や血流改善、癒着解除を目的とした様々な治療法を検討することが可能です。

まとめ

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この記事の著者

野中腰痛クリニック 大阪本院 副院長:石田貴樹

大阪本院 副院長石田 貴樹

2009年:高知大学卒業・医師免許取得、2012年:神戸市立医療センター西市民病院勤務、2013年:兵庫県立尼崎病院勤務、2014年:関西労災病院勤務、2019年:ILC国際腰痛クリニック勤務、2021年:野中腰痛クリニック勤務、2022年:2年間の研修を経て10月にライセンスを獲得、2023年:医療法人蒼優会理事就任・野中腰痛クリニック副院長就任


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