はじめに
「腰痛治療にはレーザーやPRP、ディスクシール治療など、たくさんの種類があってどれが自分に合うのか分からない…」
「ヘルニアや脊柱管狭窄症と診断されたけど、治療法の違いがよく分からない…」
このようにお悩みではありませんか?腰痛治療には様々な選択肢がありますが、その効果を最大限に引き出すには、ご自身の腰の状態を正しく理解し、最適な治療法を選ぶことが不可欠です。
この記事では、数多くの腰痛治療の根本的な考え方と、症状の「ステージ」に応じた治療法の選び分けについて、専門家の視点から分かりやすく解説します。
この記事では、その内容を5分でわかる要約としてお届けします。
動画視聴の予習・復習にぜひご活用ください。
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目次
腰痛の本当の原因は「椎間板」の損傷(0:00〜)

日帰り腰痛治療には様々な治療法が存在しますが、そのほとんどは腰の骨と骨の間でクッションの役割を果たしている「椎間板(ついかんばん)」を治療の対象としています。

椎間板は、骨同士がぶつからないように衝撃を吸収するだけでなく、体をねじる関節の役割や、骨がずれないようにする滑り止めの働きも担う、腰の要です。
この椎間板が傷むことで、腰痛はもちろん、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、すべり症といった様々な病気を引き起こします。

つまり、効果的な腰痛治療を行うには、この「椎間板がどのように壊れているのか」を見極めることが最初のステップとなります。
あなたの椎間板はどのステージ?2つの壊れ方(7:00~)
椎間板の壊れ方には、大きく分けて2つのステージがあります。これを車のタイヤに例えて見ていきましょう。
ステージ①:変形・ヘルニア(パンクしていない状態)
椎間板は、外側を頑丈なゴム(線維輪)が覆い、内部にゼラチン状のクッション(髄核)が詰まった構造をしています。
腰に強い圧力がかかると、中の圧力が高まり、風船を押しつぶした時のように、外側のゴムがポコンと飛び出してしまうことがあります。
これが「椎間板ヘルニア」と呼ばれる状態です。
この段階では、外側のゴムは破れておらず、まだパンクはしていません。主に30代〜40代の方に見られることが多い状態です。

ステージ②:断裂(パンクしてしまった状態)
ヘルニアの状態からさらに負担がかかり続けると、ついに外側のゴム(線維輪)に亀裂が入り、中のクッション成分が外に漏れ出してしまいます。
これが、タイヤが「パンク」してしまったのと同じ状態です。
パンクした椎間板はクッションの役割を果たせず、潰れて薄くなっていきます。
その結果、骨が変形したり(変形性腰椎症)、神経の通り道が狭くなったり(脊柱管狭窄症)、骨がずれたり(すべり症)といった、より深刻な状態に進行します。
この状態は、主に50代以降の方に多く見られます。

【ステージ別】最適な腰痛治療法の選び方(14:00~)
このように、椎間板の「壊れ方のステージ」によって、選ぶべき治療法は大きく異なります。
パンクしていない椎間板(ヘルニア)への治療法:レーザー治療(PLDD)、ディスコゲル治療
- 対象
- ステージ①の「パンクしていない」椎間板ヘルニアの方(主に30代〜40代)
- 目的
- 高まった椎間板内部の圧力を下げること(減圧)
このステージでは、パンパンに膨らんだ風船の空気を抜くように、椎間板内部の圧力を下げることが治療の目的となります。
- レーザー治療(PLDD)
- 椎間板にレーザーファイバーを挿入し、内部のクッション(髄核)を蒸発させて空間を作ることで圧力を下げます。
- ディスコゲル治療
- 薬剤を注入し、化学的に髄核を溶かして圧力を下げます。
これらの治療は、パンクを修理するのではなく、あくまで「減圧」を目的としています。

パンクしてしまった椎間板への治療法:ディスクシール治療
- 対象
- ステージ②の「パンクしてしまった」椎間板が原因の脊柱管狭窄症やすべり症の方(主に50代以降)
- 目的
- 破れてしまった線維輪の亀裂を塞ぎ、パンクを修理すること
パンクしてしまった椎間板に減圧治療を行っても意味がありません。まずは穴を塞ぐ「パンク修理」が必要です。
ディスクシール治療は、検査で椎間板の破れ(パンク)を確認した後、その亀裂に特殊な薬剤を注入して穴を塞ぎます。
これにより、クッション成分の漏れを防ぎ、椎間板機能の回復と修復を促します。

【まとめ】正しい診断と治療選択が重要です(17:40~)
腰痛治療には様々な選択肢がありますが、最も大切なのはご自身の椎間板がどのステージにあるのかを正確に診断することです。
- 椎間板がパンクしておらず内圧が高い状態(→減圧治療が有効)
- 椎間板がパンクして狭くなっている状態(→パンク修理が必要)

この記事の著者

大阪本院 院長野中 康行
2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任