患者様の情報
30代 女性
疾患・症状
患者様の状態
患者様は3年以上腰痛と坐骨神経痛に悩まれており、近くの整形外科で椎間板ヘルニアと診断されています。
検査
MRI

腰のMRI検査です。複数の椎間板で変形が確認され、椎間板ヘルニアと診断できますが、椎間板の厚みは残っている状態です。椎間板変性の重症度を示すPfirrmann分類ではGradeⅢというところでしょう。GradeⅢならば椎間板内圧が上昇している可能性があります。GradeⅣ以上では椎間板損傷が進行している為、一般的にディスクシールなどの修復治療が適応になります。

治療
Pfirrmann分類だけでは椎間板内圧が高いのか低いのか分かりません。椎間板内圧が高ければ減圧治療であるPLDDやセルゲル法が適応になり、椎間板内圧が低ければディスクシール治療やDRT治療が適応になります。MRIだけでは判定できませんので、Annulogram検査で椎間板内圧を確認していきます。。
Annulogram検査
Annulogram検査です。すべての椎間板に造影剤が黒く染み込んでいくことが確認できます。造影剤は液体であり、液体が染み込む隙間があるという事は【椎間板の内圧が低下していること】を意味します。反対に椎間板内の圧力が高ければ、造影剤は絶対に染み込みません。
治療前後のレントゲン

椎間板内の圧力が低下しているため、椎間板の損傷を修復する目的でディスクシール治療を行いました。この写真は治療前後のレントゲン写真になります。
まとめ
この様にMRI検査だけでは椎間板内の圧力や損傷がどの程度存在するかは不明であるため、椎間板治療をする前にかならずAnnulogram検査をするべきです。北米では一般的にAnnulogram検査が行われており、行わなければ損害賠償訴訟になりかねないそうです。従来の日本の様にMRI検査だけで治療法を決定してしまうとダメなんですね。また、PLDDでもセルゲル法でもステロイド製剤を使用しているので、適応外の治療を行ったとしても一時的に炎症が収まることがあり、効果があったと勘違いする場合があるので注意が必要になります。
今回の治療法
ディスクシール治療(Discseel® Procedure)
治療期間
日帰り
治療費用
1,320,000円~1,650,000円(税込)
リスク・副作用
治療後2週間程度は、一時的に症状が悪化する可能性があります。ごく稀に椎間板の容量が増えたことによって、周りの筋肉や関節、靭帯などの広がりにより、筋肉痛や腰の違和感が出現することもあります。
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この記事の著者

大阪本院 院長野中 康行
2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任