患者様の情報
30代 男性
疾患・症状
患者様の状態
22歳でヘルニアを発症し、内視鏡手術を行い改善されていましたが、32歳で再発し、椎間板が再生すると言われてディスコゲル治療を3箇所の椎間板に行われました。いったんは改善がみられましたが、ヘルニアが再発し、今回当院を受診されました。
検査
MRI検査
MRIでは椎間板L5/Sにヘルニアを認めます。また、椎間板L3/4と4/5に椎間板変性を認め、線維輪の損傷を疑います。
X線検査

X線検査では椎間板L3/4とL5/Sでは椎間板内にタングステンの粉末の残留を認めますが、椎間板L4/5ではタングステンは確認できません。
治療
Annulogram検査
Annurogram椎間板造影検査では、全週性の線維輪の損傷及び脊髄方向へのリーク(漏れ出し)を認めますので、線維輪を修復するためにディスクシール治療を行いました。
ディスクシール治療
椎間板L3/4では椎間板外にタングステンの異物が溢れないように、冷や冷やしながら細心の注意をはらって治療を行いました。
治療前後のレントゲン

治療前後のレントゲン写真になります。左側が治療前、右側が治療後になります。
まとめ
治療に当たって
ディスコゲル治療(セルゲル法)後は、椎間板に様々なダメージが加わっており、内部に生体では分解できない人工物が様々入っているので、再治療でディスクシール治療ができるとは限りません。どのようなリスクやトラブルが起きるかは未知の部分がありますので、治療前には十分に説明を行い、患者様には同意を得ております。
考察
22歳でヘルニアに対する内視鏡手術を行われた経緯があるため、手術による椎間板線維輪の大きな損傷が起きており、年齢的に修復が困難であるため、ヘルニアを再発したのだと考えられます。
ディスコゲル治療(セルゲル法)について
ディスコゲル治療(セルゲル法)は、アルコールで椎間板の髄核を脱水・壊死させることで椎間板の内圧を下げますので、ヘルニアが小さくなり症状の改善に寄与したものと考えます。。ただし、ディスコゲルのセルロースは植物由来であり、生体では分解できないものですので、そのような異物が組織の再生をすることはありません。セルロースが組織を再生させるという文献もありません。線維輪のひび割れている部位が修復されることはないので、悪化をするという悪いスパイラルに陥ります。再発しても再治療には相当のリスクが伴います。
我々は線維輪の損傷が疑われる椎間板に対して、今までもPLDD(レーザー治療)やディスコゲル治療(セルゲル法)を積極的に行っておりません。ディスクシール治療を受けられた方でも再発はありますが、ディスコゲルとは異なり適応症例に制限はなく、治療薬成分による組織傷害のリスクもないため再治療も可能です。
副院長の一言
左官職人
最近、自宅の壁に漆喰を塗っています。子供と一緒に地味な養生・パテ埋めから、下地塗り・本漆喰塗りをやっています。天然素材なので有機溶媒などの目や鼻につく嫌な匂いや刺激はなく、とても呼吸がしやすい気持ちいい空間が出来つつあります。

ただし、窓を閉め切って行う作業なのでとても過酷です。なんでこの暑い時期にやってるんだろう……と。職人さんには頭が上がりません。感謝感謝です。

今回の治療法
ディスクシール治療(Discseel® Procedure)
治療期間
日帰り
治療費用
1,320,000円~1,650,000円(税込)
リスク・副作用
治療後2週間程度は、一時的に症状が悪化する可能性があります。ごく稀に椎間板の容量が増えたことによって、周りの筋肉や関節、靭帯などの広がりにより、筋肉痛や腰の違和感が出現することもあります。
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この記事の著者

大阪本院 副院長石田 貴樹
2009年:高知大学卒業・医師免許取得、2012年:神戸市立医療センター西市民病院勤務、2013年:兵庫県立尼崎病院勤務、2014年:関西労災病院勤務、2019年:ILC国際腰痛クリニック勤務、2021年:野中腰痛クリニック勤務、2022年:2年間の研修を経て10月にライセンスを獲得、2023年:医療法人蒼優会理事就任・野中腰痛クリニック副院長就任