患者様の情報
60代 男性
疾患・症状
患者様の状態
椎間板ヘルニアに対してディスコゲル治療(セルゲル法)を受けられた男性患者様ですが、腰痛と坐骨神経痛の改善がないため当院を受診されています。
検査
治腰のレントゲン検査です。第3腰椎と第4腰椎、第4腰椎と第5腰椎に黒く映っている部分が確認できます。レントゲンで黒く映っている部分は金属(タングステン)です。
正面から見たレントゲンです。金属部分のほとんどが椎間板の外にはみ出しています。かなり危ない状態です。
ディスコゲル治療(セルゲル法)とは?
ディスコゲル治療(セルゲル法)は椎間板内にエチルアルコールを投与することで組織を脱水壊死させて、髄核を科学的に融解し椎間板内圧を下げることを目的とした治療になります。患者様も間違えられるのですが、椎間板を修復するのではなく、逆に融解させることを目的とした治療です。
万一、椎間板の外側にエチルアルコールが漏れてしまうと、神経を含む組織まで融解してしまい神経障害が出現してしまうので、ディスコゲルにはグリセオールが入っています。もちろん、グリセオールに組織を修復する作用はなく、水溶液であるエチルアルコールとグリセオールを混ぜる事で、粘度を高めて、椎間板の外側にエチルアルコールが流れ出てしまわないようにするためのものです。その他、ディスコゲルには金属(タングステン)が含まれていますが、椎間板を修復する作用があるわけではありません。金属(タングステン)はレントゲンで黒く映るので、ディスコゲルが椎間板の中にあるのかどうかを確認する為に混入されているものです。
患者様への説明
患者様は、ディスコゲル治療(セルゲル法)を受けられるときに「椎間板を修復する」と説明されていたので、その説明自体が間違っており本当は「椎間板を融解する」ことを目的とした治療であると説明しました。ディスコゲルの論文でもそのように記載されています。
レントゲン写真をお見せして、椎間板の外側に金属(タングステン)が存在しているので、エチルアルコールとグリセオールも椎間板の外側に存在している事を説明しました。通常は、椎間板の中に存在しなくては効果が出ないこと、幸いにも穿刺部位が神経と離れていたので、神経を壊死させることがなかったので、神経障害は合併していませんでしたが、数センチずれていればどうなったかわからなかったこともご説明しました。
患者様には、上記の理由で椎間板ヘルニアが治らないのは当たり前であり、他の治療法を検討するべきだとご案内し、とりあえず当院でリハビリをされることになりました。
【解説】セルゲル法では椎間板が修復しない件
まとめ
適応外の治療
患者様の話が事実であるならば、治療説明の根本から「うそ」になります。さらに、椎間板の外側にディスコゲル治療(セルゲル法)が行われており、治療としてあまりに適当でずさんです。そもそも椎間板容量が低下している為に、ディスコゲル治療(セルゲル法)の適応すら無い可能性が高いと思います。
最後に
自由診療に限っては、医師の説明を鵜呑みにして騙されないように気を付けてください。私の知る限り本当に優れた技量を持っている医師は、北米のDr.Kevin.Pauzaですね。私も10年後には追いついているはずです……知らんけど。

今回の治療法
診察のみ
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この記事の著者

大阪本院 院長野中 康行
2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任