治療症例 / 院長ブログ

保存的治療で改善しない10代の腰痛・下肢のしびれはHIZからのリークが原因

患者様の情報

10代 男性

疾患・症状

状態

半年ほど前に体育の授業中に腰痛を足の疼痛・しびれを自覚し、整形外科病院を受診されました。保存的治療で経過をみられるも改善が無く、他院を受診するも同様の対応で改善がないため当院を受診されました。VASスコアは8~10です。


検査

MRI検査

MRI検査

MRI検査でL4/5とL5/Sに椎間板変性、軽度の膨隆、HIZを認めます。

HIZ(High Intensity Zone)

診断

線維輪の損傷がある事は明らかであり、ヘルニアもほとんどないことから、線維輪からの髄核成分の漏出による炎症が原因である可能性が高いことが推測されます。

治療方針

損傷している椎間板に隣り合う椎間板は損傷している可能性がありますので、椎間板の変性が少なくても損傷の有無を確認するためにAnnulogram(椎間板造影検査)をすることがプロトコールで決まっております。今回はL3/4、4/5、5/Sの3箇所に対してディスクシール治療を行います。PLDDでの除圧は効果的ではないですが、選択肢の1つではあります。ただし、ストレートバック(脊椎がまっすぐ)であることから下部椎間板が損傷しやすい体質である事、線維輪の損傷部位が大きいことから将来的なメリットも考慮し、患者様とそのご両親と治療のメリット・デメリットを相談し治療方針を決定いたしました。


治療

Annulogram(アニュログラム検査)

漏出

HIZに一致した部位でのリークを認めます。大きな割れ目であることが分かります。

治療前後のレントゲン写真

治療前後のレントゲン写真

幸いにもL3/4は軽微な損傷はあるものの大きな問題はありませんでした。


あとがき

最近、若年者の治療を行うことが増えてきました。特に10代の患者様の椎間板はまだまだ再生力がありますので、自然経過でも改善する可能性がありますが、悪化が進行するケースもあります。治療費用のこともありますので椎間板修復治療をするかどうか悩むことも多いです。ディスクシール治療やDRT法などの修復治療により現在の症状の改善が期待できることや、将来的に損傷の進行を予防できる可能性があることもメリットですが、最大のメリットは治療に伴うデメリットがほぼほぼ無いことだと思います。今後も患者様の声を聴き、十分な説明を行い、患者様にとって良かったと思っていただける選択ができることを心がけて行きたいと思います。


副院長の一言

昨日から急に寒くなりましたね。布団から出られない季節になりました。その瞬間だけは一生起きなくてもいいとさえ思ってしまいます。雪遊びは好きで、寒さは平気なのですが、その刹那だけが耐えられないのです。去年はいい雪がたくさん降り積もりましたね。今年も期待していますよ!子供たちは夏の終わりから滑りたくて滑りたくてウズウズしています(笑)


今回の治療法

ディスクシール治療(Discseel® Procedure)

治療期間

日帰り

治療費用

1,320,000円~1,650,000円(税込)

リスク・副作用

治療後2週間程度は、一時的に症状が悪化する可能性があります。ごく稀に椎間板の容量が増えたことによって、周りの筋肉や関節、靭帯などの広がりにより、筋肉痛や腰の違和感が出現することもあります。


関連するの疾患と症状

変形性腰椎症

椎間板変性症

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椎間板変性症とは、背骨の間にある椎間板(ついかんばん)が変形する疾患です。椎間板の変形により、腰椎椎間板ヘルニア腰部脊柱管狭窄症腰椎すべり症などの様々な病気につながる恐れがあります。


この記事の著者

野中腰痛クリニック 大阪本院 副院長:石田貴樹

大阪本院 副院長石田 貴樹

2009年:高知大学卒業・医師免許取得、2012年:神戸市立医療センター西市民病院勤務、2013年:兵庫県立尼崎病院勤務、2014年:関西労災病院勤務、2019年:ILC国際腰痛クリニック勤務、2021年:野中腰痛クリニック勤務、2022年:2年間の研修を経て10月にライセンスを獲得、2023年:医療法人蒼優会理事就任・野中腰痛クリニック副院長就任


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