治療症例 / 院長ブログ

Discogel治療(別称:セルゲル法)で椎間板が修復すると説明された50代男性

患者様の情報

50代 男性

疾患・症状

患者様の状態

過去にPLDDを受けられ改善していたが、症状が再発したため他院を受診し、Discogel治療(別称:セルゲル法)を受けられにも関わらず症状が改善しないとのことで当院を受診されました。腰痛と両側の臀部痛を認めています。


検査

X線検査

X線検査

X線検査でL3/4とL5/Sで椎間板内にタングステンの粉末を認めます。L4/5ではハッキリとしません。

MRI検査

MRI検査

MRIでL2/3~L5/Sでの椎間板変性を認めます。狭窄所見も強くないため、線維輪の損傷による炎症が原因の可能性があります。


所見

線維輪の炎症が原因であれば線維輪の修復で症状の改善が期待できますので、治療法としてはディスクシール治療が適応でありますが、Discogel治療(別称:セルゲル法)後であるため、慎重に適応を検討しないといけません。

他院では、Discogel治療(別称:セルゲル法)で椎間板が再生すると言われたようですが、セルロース(植物由来)は生体では分解できない異物であり、椎間板を修復すると述べている文献はないことからも、医学的に再生することはあり得ません。また、アルコールは組織を破壊することはあれども再生することもありません。当然ですが、金属の粉末もです。

ご本人でもいろいろ検索され、医学的に再生効果がないことが分かり落胆され、当院を受診されました。

どのような治療でも必ず症状が改善するということはありません。残念ながら、ディスクシール治療やDRT治療でも改善しない方はいらっしゃいます。ここで問題なのは、症状が改善しなかったことではなく、再生する効果のないものをあたかも再生するかのように説明を受けていることなのです。

間違えてはいけないのは……
Discogel治療(別称:セルゲル法)は椎間板をアルコールで壊死させる治療です!
セルロースで組織が再生することはあり得ません!


治療

セルゲル法はこのような異物を挿入している治療ですので、ディスクシール治療を行うことでどのような合併症や後遺症が起きるか分かりません。異物を椎間板外に押し出してしまい神経を損傷してしまう可能性もあります。患者様には治療のリスクを十分に説明し、同意を得て治療を行いました。

Annulogram検査

AnnulogramでL2/3を含めて線維輪の損傷を認めました。幸いなことに、L3/4はディスコゲルが注入されていますが、椎間板の変性・損傷はそれほど進行していないように見えます。

ディスクシール治療

いつも以上に注意深くフィブリン製剤を注入し、異物の脱出が無いように細心の注意を払い、無事に治療が終了しました。

治療前後のレントゲン

治療前後のレントゲン

治療前後のレントゲン写真になります。左側が治療前、右側が治療後になります。


副院長の一言

「100%椎間板が再生すると聞いていたのに」とか「セルロースが線維輪を修復すると言われました」と、悲しみや悔しさがにじむ表情で患者様がお話になるのを聞くたびに心が痛みます。なぜこんなことが起きているのでしょうか? なぜこんな説明をすることが可能なのでしょうか? 同じ医者のはずなのですが理解に苦しみます。これ以上苦しまれる患者様が増えないことを心から祈るばかりです。


今回の治療法

ディスクシール治療(Discseel® Procedure)

治療期間

日帰り

治療費用

1,320,000円~1,650,000円(税込)

リスク・副作用

治療後2週間程度は、一時的に症状が悪化する可能性があります。ごく稀に椎間板の容量が増えたことによって、周りの筋肉や関節、靭帯などの広がりにより、筋肉痛や腰の違和感が出現することもあります。


関連するの疾患と症状

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアとは、背骨の間にある椎間板(ついかんばん)が外に飛び出し、神経を圧迫する疾患です。坐骨神経痛やぎっくり腰などの症状を引き起こします。

変形性腰椎症

椎間板変性症

変形性腰椎症

椎間板変性症とは、背骨の間にある椎間板(ついかんばん)が変形する疾患です。椎間板の変形により、腰椎椎間板ヘルニア腰部脊柱管狭窄症腰椎すべり症などの様々な病気につながる恐れがあります。


この記事の著者

野中腰痛クリニック 大阪本院 副院長:石田貴樹

大阪本院 副院長石田 貴樹

2009年:高知大学卒業・医師免許取得、2012年:神戸市立医療センター西市民病院勤務、2013年:兵庫県立尼崎病院勤務、2014年:関西労災病院勤務、2019年:ILC国際腰痛クリニック勤務、2021年:野中腰痛クリニック勤務、2022年:2年間の研修を経て10月にライセンスを獲得、2023年:医療法人蒼優会理事就任・野中腰痛クリニック副院長就任


閉じる