患者様の情報
30代 男性
疾患・症状
状態
患者さまは、長距離トラックの運転手をされており、数年来の腰痛に悩まされていました。数ヵ月前に動けなくなるほどのぎっくり腰と下肢の疼痛・しびれを発症され、現在はやや小康状態なものの、臀部の疼痛と尾骨の強い疼痛を主訴に来院されました。身体診察を行い、両側の仙腸関節を押すと疼痛を認めることから、仙腸関節障害と診断しました。尾骨を触るととても強い痛みを感じられます。
MRI検査

MRIでL4/5の椎間板変性とHIZ(High Intensity Zone)を認めますので、椎間板の巨大な裂け目があることが分かります。画像上は明らかではありませんが、隣り合う椎間板にも損傷がある可能性があります。尾骨には明らかな骨折はありませんでした。
治療
治療内容
- DRT3箇所
- 両側仙腸関節PRP
- 尾骨周囲へのトリガーポイントPRP
椎間板による症状は落ち着いてきているため、ディスクシール治療でもいいのですが、DRT法を提案いたしました。理由としましては、両側仙腸関節障害と尾骨の疼痛を認めることから、これらには一般的なブロック注射が選択肢となりますが、私の経験上、ブロック注射で効果が無かった方でもPRPを併用した治療だと改善することがあるため、今回は様々な効果を期待してDRTを行い、余ったPRPで追加の治療を行うこととしました。
Annulogram検査
L4/5でHIZに一致した部位のリークを認めます。巨大な線維輪の損傷部位です。

L3/4は椎間板の変性をほぼ認めませんが、造影検査をすると小さいですが損傷を認めました。早期の損傷が見つかりましたが、検査を行わないとわからかなったことです。「見た目はきれいだから大丈夫だろう」で済まさず、プロトコル通りにすることが重要だと改めて思いました。襟を正し、粛々とやるべきことをやることが重要なのですね。
DRT法
椎間板にDRT治療を行いました。仙腸関節を造影し、正しい位置に針が入っていることを確認しPRPを注入しました。
治療後経過
治療直後から下肢のしびれ、仙腸関節の疼痛、尾骨の痛みも全く無くなりました。ブロック注射は治療直後から改善を認めることが多いですが、椎間板修復治療の治療効果は、一般的に3ヵ月~1年を要することが多いです。ただし、稀に治療直後から効果を認めることがあります。患者様も僕らも嬉しいことなのですが、理由が説明できません。一時的には麻酔の効果もありますが、今後の経過を見守っていきたいと思います。
副院長の一言
仙腸関節へのPRP治療やPRPのトリガーポイント治療は一般的な治療方法ではありませんが、PRPの治療は比較的リスクが少なく、今回は椎間板治療のついでに治療をした感じです。少しでも皆様の症状が改善するように、頭を悩ませ、努力し、進歩できるようにもがき続けています。
今回の治療法
DRT法(経皮的椎間板再生治療)
治療期間
日帰り
治療費用
1,430,000円~1,760,000円(税込)
リスク・副作用
治療後は内出血・腫れ・発赤・疼痛・かゆみ・変色・および圧痛が発生することがあります。ごく稀に椎間板の容量が増えたことによって周りの筋肉・関節や靭帯などの広がりにより筋肉痛や腰の違和感が出現することもあります。
禁忌事項
血液疾患に罹患中の方(血小板減少症、高度の欠乏性貧血など)、感染に伴う全身症状(発熱など)、癌・悪性腫瘍と診断され術後治療中の方は治療できません。
関連するの疾患と症状
椎間板変性症
椎間板変性症とは、背骨の間にある椎間板(ついかんばん)が変形する疾患です。椎間板の変形により、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症などの様々な病気につながる恐れがあります。
坐骨神経痛
坐骨神経痛とは、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などを原因とし、腰から下部の臀部や脚部に痛みや痺れを感じる症状です。
この記事の著者
大阪本院 副院長石田 貴樹
2009年:高知大学卒業・医師免許取得、2012年:神戸市立医療センター西市民病院勤務、2013年:兵庫県立尼崎病院勤務、2014年:関西労災病院勤務、2019年:ILC国際腰痛クリニック勤務、2021年:野中腰痛クリニック勤務、2022年:2年間の研修を経て10月にライセンスを獲得、2023年:医療法人蒼優会理事就任・野中腰痛クリニック副院長就任