概略
長時間座っていると椎間板に圧力がかかり、筋力の低下や腰椎の柔軟性の低下に繋がることで腰痛を引き起こす可能性があります。腰痛を防ぐには、30〜45分ごとに立ち上がって動くようにしたり、散歩やストレッチをするのも有効です。
はじめに
長時間歩いたり、立ったりすると腰に違和感や痛みを覚えることはありませんか?たいていの場合、数分座って休んだら自然と回復しますが、慢性的な腰痛をお持ちの方は毎回長時間座ると痛みが出て、座ることが億劫になると診察時におっしゃっていました。「座った状態で腰の筋肉がリラックスできるならばなぜ長時間座り続く人は腰痛なりやすくなるでしょうか?」今回は、このような疑問について説明したいと思います。
結論
腰痛の原因は様々で、複数の要因が絡んでいる場合もありますが、これまでの研究で長時間の座位が腰痛発症の危険因子である可能性が指摘されています。
長時間の座位と腰痛の因果関係について言及されている可能性のあるメカニズムは、椎間板内圧の増加、腰椎の硬さ、腰部筋力の低下、および体重過多につながる代謝の減少です。
研究結果
2002年、英国アバディーン大学の研究によると長時間の座位は軟部組織の負荷につながり不快感を引き起こします。 座った姿勢は老廃物の蓄積を引き起こし椎間板の変性を加速させ、椎間板ヘルニアにつながる可能性高いことを確認されています。
*2003年、Occupational Medicine雑誌の研究において、自己申告にて職業上、座位時間(すなわち、3時間以上)と腰痛の重症度の増加との間に有効な関連が確認されました。
*2018年、The Spine Journal 雑誌に掲載された研究は、韓国人口(50歳以上)対象にした調査では、座位時間と腰痛の関連性を示す強いエビデンスが発表されています。
統計に要りますと、成人は通常、1 日あたり 6 ~ 8 時間、または起きている時間の 45 ~ 50% 以上を座った姿勢で過ごしているそうです。長時間の座位を避けることができないのであれば、座ったときの姿勢をどうにかできないものでしょうか?
腰痛を予防する対策
- 一日の大半をデスクワークで過ごす人は、30~45分座る、10~15分立つを交互に繰り返すこと
- 45分間座っていたら、立ち上がって体を動かしましょう。水を飲んだり、エアースクワットをしたり、とにかく体を動かすこと
- 1日の中で、何度も体勢を変えること
- 日中、定期的に短時間のウォーキングをすること(一度に45分歩くのではなく、朝15分、昼15分、夕方15分と一日に分けて歩くようにすると長時間の座り姿勢を減らすこと)
- 夜、ソファでゴロゴロする人は45分毎に立ち上がって体を動かすこと
まとめ
姿勢を変えずに長時間座ると運動不足による筋力の低下や柔軟性の低下は腰痛を引き起こす要因となることに間違いはありません。腰痛持ちの人の多くは、何時間も座っているか、座りっぱなしの生活をしているので治療と共に生活習慣を変える必要があります。動くことは、背骨の椎間板に水分を与え、血液を循環させ、栄養を供給することを意味し、早い回復と怪我の防止につながりますので定期的に体を動かすことをオススメします。
参考文献参照元
①Longer sitting time and low physical activity are closely associated with chronic low back pain in population over 50 years of age: a cross-sectional study using the sixth Korea National Health and Nutrition Examination Survey - 2018 - Sang-Min Park, Ho-Joong Kim, Hyunseok Jeong, Hyoungmin Kim, Bong-Soon Chang, Choon-Ki Lee, Jin S Yeom - The SPINE JOURNAL (Volume 18Issue 11p1969-2170)
②Ergonomics in Spine Surgery - 2022 - Joshua M Kolz, Scott C Wagner, Alexander R Vaccaro, Arjun S Sebastian - Clinical Spine Surgery (35(8):p 333-340)
③Is objectively measured sitting time associated with low back pain? A cross-sectional investigation in the NOMAD study - 2015 - Nidhi Gupta, Caroline Stordal Christiansen, David M Hallman, Mette Korshøj, Isabella Gomes Carneiro, Andreas Holtermann - PLOS ONE (Pubmed ID 25806808)
④Disc pressure measurements - 1981 - A L Nachemson - Ovid Technologies, Inc. (Spine. 6(1):93-97)
⑤Effects of prolonged sitting on the passive flexion stiffness of the in vivo lumbar spine - 2005 - Tyson A C Beach, Robert J Parkinson, J Peter Stothart, Jack P Callaghan - The SPINE JOURNAL (Volume 5, Issue 2, p121-230)
参考文献のリンク
①Longer sitting time and low physical activity are closely associated with chronic low back pain in population over 50 years of age: a cross-sectional study using the sixth Korea National Health and Nutrition Examination Survey
②Ergonomics in Spine Surgery
③Is objectively measured sitting time associated with low back pain? A cross-sectional investigation in the NOMAD study
④Disc pressure measurements
⑤Effects of prolonged sitting on the passive flexion stiffness of the in vivo lumbar spine
この記事の著者
医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行
2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任