概略

季節性アレルギーは慢性的な腰痛を悪化させる可能性があります。これはアレルギーが体内で炎症を引き起こし、背中の神経を刺激するためです。アレルギーと腰痛の両方を防ぐために、治療と生活習慣の改善が必要です。


慢性腰痛と花粉症は関係 序論

目次

はじめに

毎年2月中旬から慢性腰痛患者様からのお問い合わせが増えてきます。しかも、花粉症をお持ちの患者様が特に多く見られる傾向にあります。果たしてこれは偶然でしょうか?
今回は、慢性腰痛と花粉症の関連性についてお話したいと思います。


結論

花粉症を代表とする季節性アレルギーは、背骨や関節の痛みを引き起こす可能性がある、と複数の研究が示唆されています。


季節性アレルギー(花粉症)と慢性腰痛の関係

季節性アレルギーが慢性腰痛を引き起こす主な原因は、アレルギー反応により生じた炎症だと考えられています。この炎症は、体がアレルゲン(抗原)を排除しようとすることによって発生し、腰椎などの神経細胞を興奮させて症状を悪化させるのではないかと考えられています。

季節性アレルギーにより腰痛や関節痛が増えるもう1つの要因は疲労です。アレルゲンと戦うために体が一生懸命働いているため、疲れやすくなり、腰痛を悪化させることが分かっています。また、くしゃみ、咳、なども、筋肉や関節の痛みの原因になります。


研究報告

1920年代にはS.H.Rowe博士が慢性的な筋肉痛には食物アレルギーが関係していることを、1950年代にはW.N.Sisk博士がアレルギーと「突然の激しい痛み」の間に同様の関連を示し、A.H.Rinkel博士はアレルギーの症状の1つとして「腰痛」を挙げています。

さらに1999年、疫学者のHurwitzとMorgensternが20歳から39歳を対象に大規模な調査を実施したところ、アレルギー歴のある患者は腰痛やうつ病に苦しんでいると訴える確率が通常の50%高いことがわかりました。また、2009年のJournal of Pain誌の研究では、失禁やアレルギーがある女性はそれらがない女性より腰痛発症リスクが高いと結論付けています。

Journal of Allergy Disorders & Therapy(2015年)

サウスカロライナ州にある職業・環境医学センターの医師が、慢性腰痛患者の中でアレルギー治療を受けに来る人を観察していました。その中で、アレルギー症状と腰痛の両方の緩和を目的に来院されるのは花粉が多い時期であると指摘しています。 以上の観察に基づき、治療的発見研究所のSue Killianと、リフォルニア州プロビデンスにあるビーチツリー研究所のJohn McMichaelは、アレルギーと腰痛を併発した2つのケースを研究し、いずれも挑発的中和法のコースで症状が緩和された研究結果を発表しました。


アレルギー季節の間に痛みを防ぐ方法

アレルギーと腰痛の両方を防ぐために、いくつかの治療方法と生活習慣の改善が必要です。

  • 加湿器/空気清浄機/エアフィルターの使用
  • 屋外に出た後はシャワーを浴びること
  • 花粉やカビのレベルに気を付けること
  • 週に一度、寝具を洗濯すること
  • アレルギーの薬服用/アレルギー予防注射

まとめ

花粉症(季節性アレルギー)は腰痛を悪化させる可能性がありますので、医師に相談する際にアレルギーについてもお話ししていただくと良いでしょう。アレルギーが必ず腰痛を引き起こすわけではありません。しかし、この因果関係を理解することで、腰痛の予防や最適な治療を案内することができます。アレルギー持ちの方や季節的な腰痛に悩まされている方は、念のために専門機関でアレルギーとの関係を調べてはみてはいかがでしょうか。

慢性腰痛と花粉症は関係 結論

参考文献参照元

①ALLERGIC TOXEMIA AND MIGRAINE DUE TO FOOD ALLERGY - 1930 - A H Rowe - California and Western Medicine (Volume 33, Issue 5, P 785-93)
②GASTRO-INTESTINAL ALLERGY - 1931 - ALBERT H. ROWE - JAMA (Volume 97, Issue 20, P 1440-1445)
③Do Incontinence, Breathing Difficulties, and Gastrointestinal Symptoms Increase the Risk of Future Back Pain? - 2009 - Michelle D Smith, Anne Russell, Paul W Hodges - The Journal of Pain (Volume 10, Issue 8, P 876-86)
④Seasonal Allergy Induced Back Pain: A Report of Two Cases - 2015 - Sue Killian, John McMichael - Journal of Allergy Disorders & Therapy
⑤Cross-sectional associations of asthma, hay fever, and other allergies with major depression and low-back pain among adults aged 20-39 years in the United States - 1999 - E L Hurwitz, H Morgenstern - American Journal of Epidemiology (Volume 150, Issue 10, P 1107-16)

参考文献のリンク

ALLERGIC TOXEMIA AND MIGRAINE DUE TO FOOD ALLERGY
GASTRO-INTESTINAL ALLERGY
Do Incontinence, Breathing Difficulties, and Gastrointestinal Symptoms Increase the Risk of Future Back Pain?
Seasonal Allergy Induced Back Pain: A Report of Two Cases
Cross-sectional associations of asthma, hay fever, and other allergies with major depression and low-back pain among adults aged 20-39 years in the United States

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任