概略
椎間板ヘルニアにとってお風呂は有効です。入浴により筋肉がリラックスし、血液循環が良くなるため痛みの軽減に繋がります。ただし、長時間の入浴や高温のお湯は腰痛を増悪することが考えられるため、適度な温度と時間を心掛けることが大切です。
目次
椎間板ヘルニアとお風呂
椎間板ヘルニアに入浴は効果的です。湯船に浸かることにより、血流が良くなり、筋肉が柔らかくなります。その結果、周りの神経へのストレスが軽減され、椎間板ヘルニア由来の痛みやしびれの改善効果が期待できます。まずは、ぬるま湯に15分ほど浸かってみてください。その後に腰や足の症状に少しでも改善があれば、明日以降も継続して行うべきです。改善が無いどころか、悪化する場合はあなたの椎間板ヘルニアの症状は急性期の可能性があります。
入浴が効果的な場合と悪化する場合
- 効果がある場合……急性期が過ぎており慢性期に入っている
- 悪化する場合……急性期の最中
急性期とは、椎間板ヘルニアが発症してすぐの症状が1番強い時期のことです。くしゃみや咳といったちょっとでも腰に負担がかかると痛みが出てしまいます。この時期は炎症が最も強く出ており、その時期にお風呂で腰を温めすぎてしまうと、かえって炎症が強くなり、症状が増悪する場合があります。くしゃみや咳だけでも激痛があるときは急性期だと考え、お風呂で温めすぎることはお控えください。熱すぎるお湯は避け、ぬるめの湯船に少し浸かるか、シャワーで済ますことを推奨します。
反対に湯船に浸かって改善がみられる場合は、慢性期に入っていると考えます。慢性期とは、急性期が終わり炎症が少し治まってる時期です。この場合は積極的に温めて良い時期です。ぬるめのお湯に15分ほどゆっくりと浸かってみてください。心身ともにリラックス効果が期待出来ます。上記の対応は、椎間板ヘルニアだけではなく、ぎっくり腰などの腰痛にも同じことが言えますので、ご参考になさってください。
入浴で悪化した場合の対処法
入浴して症状が悪化する場合は、急性期により炎症が治まっていない可能性が考えられます。その場合の対処方法としては、腰など痛い場所を冷やしてください。冷やすことにより炎症を抑える効果があります。ビニール袋に氷と少量の水を入れて、10分から15分程度冷やします。冷たすぎる場合は、タオルを当てるなど調整してみてください。
椎間板ヘルニアや腰痛に有効な入浴方法
40℃前後の湯船に15分ほど浸かってください。血液循環が改善して、じんわりと筋肉が柔らかくなってきます。心身ともにリラックスをした方が良いので、考え事をせず脱力を心がけてください。入浴剤など、お好みの香りを加えることもリラックスにはお勧めです。入浴の前後には、最低でもコップ1杯は水分補給をしてください。入浴後に少しでも症状の緩和がみられれば、継続して行ってください。
入浴後に効果的なストレッチ
- 四つ這い姿勢になります(手は肩の真下、膝は股関節の真下)
- 顔を前に向けて、腰を反ります
- ゆっくりと最初の姿勢に戻ります
- この動きを10回繰り返します
- 1セット10回、1日3セット行います
ポイント
- 入浴後に体をさらに柔らかくするようなイメージです。腰を反るときに痛みが出る場合は、中止してください。
お風呂に入っても症状が変わらない方へ
椎間板ヘルニアとは、椎間板というクッションに傷がつき、中にある組織が漏れ出てしまうことです。お風呂に入り、血液循環や筋肉の柔軟性を改善させることは良いことですが、それによって椎間板の傷自体が治るわけではありません。椎間板の傷を治すためには、椎間板治療を行う必要があります。当院では、ディスクシール治療といった椎間板ヘルニアの根本治療を行っています。メスを使いませんので、お体への負担は少なくご高齢の方でも治療を受けていただくことが可能です。また、日帰り治療になりますので入院も必要ありません。入浴やお薬やリハビリテーションなどで改善が無い患者様は、是非一度当院での治療をご検討ください。
まとめ
椎間板ヘルニアに悩む方にとって、お風呂は腰の負担を軽減する有効な手段です。温かいお湯に浸かることで血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎ、痛みが軽減されます。ただし、過度な温熱療法や長時間の入浴は逆効果となるので、適度な温度と時間を守ることが重要です。理想的な入浴方法としては、ぬるめのお湯に15分程度浸かることが推奨されます。また、入浴後に軽いストレッチを行うことで筋肉の柔軟性が増し、腰にかかる負担をさらに軽減できます。適切な入浴方法を実践し、腰に負担がかからないようにすることで、日常生活の質を向上させることができます。専門医のアドバイスを参考に、自分に合った入浴方法を見つけ、健康的な生活を送りましょう。
参照先
腰痛症に対する温泉療法の効果 岡本 誠,芦田 耕三,山本 和彦,岩垣 尚史,柘野 浩史,保崎 泰弘,御舩 尚志,光延 文裕,谷崎 勝朗,多田 慎也,原田 実根 岡山大学医学部付属病院三朝分院内科 岡山大学医学部第二内科 1997年12月68巻p.51-58
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この記事の著者
医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行
2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアとは背骨の間にある椎間板(ついかんばん)が外に飛び出し神経を圧迫する疾患です。坐骨神経痛、ぎっくり腰などの症状を引き起こします。