腰椎すべり症は大きく2つに分類されます。腰椎変性すべり症は加齢により骨がすべることで痛みを感じ、腰椎分離すべり症は腰椎分離症が進行したものです。いずれの腰椎すべり症であっても、痛みを軽減する方法はリハビリや薬、コルセットなどです。しかし、すべり症は自然に治ることはなく、骨が元に戻るわけでもありませんので、根本的に治すには外科手術や椎間板治療が必要です。


目次

すべり症の種類と痛みの原因とは

すべり症は大きく2つに分けることが出来ます。「腰椎変性すべり症」と「腰椎分離すべり症」です。種類ごとに痛みの原因も変わります。

腰椎変性すべり症の痛みの原因

腰椎変性すべり症とは、腰骨が前後にずれてしまう病気です。中高年の方に多く見られ、第4腰椎に発症することが多いです。腰椎変性すべり症の痛みの原因としては、多くは加齢が原因であるといわれています。加齢により椎間板が変性(傷む)することで、腰骨や椎間板がずれます。また、重たいものを持つなど腰に負担が掛かる動きも原因の1つです。体重増加も関係があるといわれています。

腰椎分離すべり症の痛みの原因

腰椎分離すべり症とは、腰椎分離症が進行したものです。腰椎分離症とは、腰骨にひびが入ってしまう病気です。成長期のスポーツ選手に多く見られ、第5腰椎に発症することが多いです。腰椎分離すべり症の痛みの原因としては、多くは若いころに行った激しいスポーツにより腰椎(腰骨)に亀裂(ひび)が入り、分離する事といわれています。ジャンプや腰を捻る動きを繰り返し行うと、発生リスクが高くなります。分離症は10代で起こり、時間をかけて分離すべり症と進行します。


すべり症の治療方法とは

すべり症の治療方法は大きく分けて「保存療法」と「外科手術」の2つになります。

保存療法

保存療法とは、リハビリテーションやお薬、注射などの外科手術以外の治療のことを言います。どなたでも気軽に行うことが出来ますが、すべり症の根本治療ではありませんので完治はしません。

外科手術

外科手術は、すべり症の根本治療となります。ただ、お体の負担が大きくなります。全身麻酔が必要、入院・リハビリが必要、皮膚を切開しなければならないなどがデメリットとして考えられます。外科手術は、2つに分けることが出来ます。

  • 除圧術
  • 固定術

除圧術は、骨や靭帯を削る、取り除くことにより脊柱管<神経の通り道>を広げる方法です。腰椎(腰骨)が不安定な場合は、手術が適応とならない場合があります。固定術は、上下の腰骨をプレートやスクリューといった器具を使用し、固定する方法です。

すべり症の痛みの緩和方法

すべり症の痛みを和らげるには、まずは姿勢を整えることが重要です。すべり症はほとんどの場合、骨が前にすべる「前方すべり症」です。筋肉が足りない、関節が硬いと反り腰姿勢になります。反り腰姿勢になると、余計に骨が前にすべってしまい、症状は増悪します。反り腰姿勢にならないためには、ご自宅でストレッチが必要です。簡単に行えるものがあるので、次の項目でご紹介します。他には、

  • 痛み止めの注射を打つ
  • お薬を飲む
  • コルセットを着ける

上記の方法なども痛みの対処療法として考えられます。ただ、いくらストレッチやお薬を飲んでも、すべっている骨が元に戻ることはありません。根本的にすべり症の痛みを取り除くには、外科手術や椎間板治療が必要となります。

ご自宅で出来るすべり症のストレッチ

  1. ベッドの端に仰向けになります
  2. ベッドから片脚を下ろし、上の脚は曲げておきます
  3. この姿勢のまま20秒キープし、股関節の付け根を伸ばします
  4. ベッドの反対側へ移動し、反対の脚も行います
  5. このストレッチを1日に3回ほど行ってください

ポイント

  • 脚を下ろす時に腰が反らないように<ベッドと腰の間に隙間が無いようにして、「気持ち良いな」と感じる範囲で行ってください。

すべり症の椎間板治療をお探しの方へ

外科手術は、すべり症に対する根本治療ですがお体への負担は大きくなります。「全身麻酔は怖い」「長期の入院はしたくない」「体にメスを入れたくない」など様々なご意見があるかと思います。当院で行っている、DST法(ディスクシール治療法)はすべり症に対して、日帰りで行える椎間板治療となります。メスを使用しないので、お体の負担は少なくご高齢の方にも治療を受けていただくことが可能です。


なぜ痛い!?すべり症の痛みの原因と緩和方法を専門医師が解説!のまとめ

すべり症には「腰椎変性すべり症」と「腰椎分離すべり症」の2種類があります。腰椎変性すべり症とは、加齢や腰に負担の大きい姿勢や動作を続けてしまうことにより、腰骨が前後にずれてしまう病気です。痛みの原因は、多くは加齢といわれています。中高年の方に多く、体重増加も関係があるといわれています。腰椎分離すべり症とは、腰椎分離症が進行したものです。腰椎分離症とは、若い頃にスポーツなどにより腰に負担の大きい動作を続けてしまうことにより、腰骨にひびが入ってしまう病気です。痛みの原因は、多くは若いころに行った激しいスポーツにより腰椎(腰骨)に亀裂(ひび)が入り、分離する事といわれています。ジャンプや腰を捻る動きを繰り返し行うと、発生リスクが高くなります。すべり症のほとんどは、骨が前にすべる「前方すべり症」に分類されます。すべり症の痛みの緩和としては、

  • リハビリを行う
  • 痛み止めの注射を打つ
  • お薬を飲む
  • コルセットを巻く

といった上記の方法が考えられます。ただ、上記の治療をいくら行っても、前にすべっている骨が元に戻ることはありません。すべり症の根本治療には、外科手術や椎間板治療が必要となります。すべり症が自然に完治することはありませんので症状が増悪する前に、専門医の診察を受けることをお勧めいたします。


参照先

腰椎変性辷り症における手術症例の検討 伊原 公一郎, 河合 伸也, 小田 裕胤, 海永 泰男, 種窪 康, 芦田 一郎, 新庄 信英 整形外科と災害外科 1987年 36巻2号p.483-485

引用リンク

腰椎変性辷り症における手術症例の検討

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任


腰椎すべり症

腰椎すべり症

腰椎すべり症とは背骨が前方や後方にずれてしまう疾患です。腰痛・足の神経障害の他に間欠性跛行(かんけつせいはこう)の症状を引き起こします。