すべり症を改善するには、コルセットを着用することやインナーマッスルを強化することが有効です。適切に使用することで体幹を安定させ、反り腰防止やすべり症の痛みの緩和など腰の負担を減らします。コルセットは巻き方に留意しましょう。きつく巻きすぎると血行不良を引き起こす可能性があり、呼吸がしにくい場合はコルセットを緩める必要があります。
目次
すべり症とコルセットについて
すべり症の原因は様々ですが、1つは加齢により椎間板(クッション)が変性(傷がつくこと)することにより腰椎(腰骨)や椎間板がずれます。すべり症は骨が前にすべる「前方すべり症」が多くみられます。反り腰姿勢になると、余計に前方へ骨はすべってしまいます。少しでも反り腰姿勢を取らないためには、「コルセットを着けて体幹を安定させる」、「インナーマッスルを鍛える」この2点が主な解決策となります。
インナーマッスルとは
インナーマッスルとは、 身体の深い位置にある筋肉のことを言います。主な役割としては、腰を支えたり、良い姿勢を保つことになります。特にすべり症の方に重要と言われるのは、下記の4つの筋肉です。
- 腹横筋(ふくおうきん)……腹筋の中でも体の一番深い場所にある筋肉です。
- 横隔膜(おうかくまく)……呼吸時に関連が深いといわれる筋肉です。
- 多裂筋（たれつきん）……腰や背中の筋肉の中でも体の一番深い場所にある筋肉です。
- 骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)……骨盤の下の方に位置し、尿や便漏れに関連が深いといわれる筋肉です。
これらのインナーマッスルを鍛えることにより、姿勢が安定して反り腰姿勢を防ぐことが出来ます。
すべり症にコルセットは有効か
すべり症にコルセットは有効です。コルセットを巻くことにより、体幹(体を支える部分)が安定します。結果、腰の痛みの緩和が期待できます。ただ、正しくコルセットを巻く必要があります。間違った方法ですと、症状が増悪する場合があります。注意点は、コルセットを巻くことにより、痛みが和らいだとしてもそれは一時的なものだということです。すべり症が完治したわけではありません。
すべり症のコルセット使用方法
- 症状が強く出ている
- 庭仕事などの作業を行う
- 重たいものを持つ
- 長時間の移動(車や電車)
このようなときにコルセットは巻いてください。就寝時やお食事の時は外していただいて構いません。「必要なときにだけ着ける」といった意識が大切となります。
コルセットを巻く時の注意点
- 1日中巻かない
- きつく巻きすぎない
上記2点に注意してください。コルセットを巻くと楽になるので、つい1日中着用される方がおられます。長時間着用すると、インナーマッスルが低下する可能性があります。本来であれば体を支えるのは、腹筋や背筋などのインナーマッスルです。コルセットはそのインナーマッスルの代わりをしています。長期間インナーマッスルを使わなければ、筋力は当然落ちていきます。また、コルセットをきつく巻きすぎることも注意です。きつめに巻いた方が効果的と思われるかもしれませんが、血行不良を起こすリスクもあるので巻く強さにはご注意ください。コルセットを巻いた状態で、呼吸がしにくければそれはきつく巻きすぎています。緩すぎることも問題ですが、「きつければきつい方が良い」というのは誤解です。
コルセットの種類
コルセットには、いくつか種類があります。骨折をしているなど病態によって使用するコルセットが変わります。大きく2つに分けることが出来ます。
軟性コルセット
すべり症以外でもヘルニアや腰痛症の方が巻くタイプのコルセットです。コルセットを巻くことで体幹の安定性が増し、症状の緩和が期待できます。この後の動画で巻いているコルセットも、軟性コルセットに分類されます。
硬性コルセット
圧迫骨折後などに巻く、固定力が高いタイプのコルセットです。軟性コルセットより安定感が増す分、動きにくく感じることがあります。
正しいコルセットの巻き方
- コルセットの上部がおへそ、下部が骨盤の上部あたりにくるように巻くことを意識します
- まずは内側にくる部分を引っ張りながら巻きます
- 外側にくる部分も引っ張りながら巻きます
- 最後にテープを引っ張りながら巻きます
注意ポイント
- お腹が苦しい場合は、巻く位置が上すぎます
- 深呼吸をして息苦しい場合は、コルセットを巻く強さがきつすぎます
- かぶれる可能性があるので、肌に直接は巻かないでください
メスを使わない日帰りで出来るすべり症の治療とは
外科手術は、腰椎すべり症に対する根本治療ですがお体への負担は大きくなります。「全身麻酔は怖い」「長期の入院はしたくない」「体にメスを入れたくない」など様々なご意見があるかと思います。当院で行っている、DST法<ディスクシール治療法>はすべり症に対して、日帰りで行える椎間板治療となります。メスを使用しないので、お体の負担は少なくご高齢の方にも治療を受けていただくことが可能です。
すべり症とコルセットについてのまとめ
すべり症にコルセットは有効です。ただ、常時コルセットを巻くと、インナーマッスル(体を支える筋肉)が低下し、症状が増悪する可能性があります。
- 症状が強く出ている
- 庭仕事などの作業を行う
- 重たいものを持つ
- 長時間の移動(車や電車)
このようなときにだけ着用して、「必要な時にだけ巻く」といった意識をお持ちください。また、巻き方も重要です。きつく巻きすぎたり、巻く位置が高すぎる場合があります。血行不良などのリスクが考えられます。動画を参考にして巻いてみてください。コルセットはすべり症に対して有効ですが、痛みが減ったからといってすべり症が治ったわけではありません。完治を目指すのであれば、まずは専門医の診察を受けていただくことをおすすめします。
参照先
〔特集〕腰痛症における体幹筋力測定の意義と臨床応用 腰痛症における体幹筋の重要性とその測定の臨床的意義 前澤 靖久,馬場 久敏 日本腰痛学会雑誌 2001年7巻1号p.26-30
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この記事の著者
医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行
2002年：川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年：神鋼加古川病院（現加古川中央市民病院）勤務、2011年：医療法人青心会郡山青藍病院（麻酔科・腰痛外来・救急科）勤務・医療法人青心会理事就任、2018年：ILC国際腰痛クリニック開設、2020年：医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年：NLC野中腰痛クリニック開設、2023年：医療法人蒼優会開設・理事長就任
腰椎すべり症
腰椎すべり症とは背骨が前方や後方にずれてしまう疾患です。腰痛・足の神経障害の他に間欠性跛行（かんけつせいはこう）の症状を引き起こします。