概略

腰椎すべり症の治療法として手術が選択肢となることがありますが、そのメリットとデメリットを理解することが重要です。手術の主なメリットは、症状の緩和と生活の質の向上です。手術により神経の圧迫が解消され、痛みやしびれが軽減されることが期待できますが、手術にはリスクも伴い、感染症や神経損傷、再発の可能性が考えられます。手術方法には、内視鏡手術や固定術などがあり、それぞれに適応症状やリスクが異なります。医師と相談し、自身の症状やライフスタイルに最適な方法を選ぶことが大切です。


目次

腰椎すべり症の治療方法は?

すべり症の治療方法には、大きく2つに分けることが出来ます。

保存療法

保存療法とは、外科手術以外の治療方法を言います。

  • 内服薬……痛みを抑える鎮痛作用のあるお薬を服用することにより、痛みを和らげます。
  • ブロック注射……神経を包む膜や、神経の周りに注射を打つことにより、痛みを和らげます。
  • コルセット……不安定な腰椎にコルセットを巻くことにより、安定させ、痛みを和らげます。
  • リハビリテーション……筋力トレーニングを行い腰椎を支える筋力を強化することで、安定させ、痛みを和らげます。

保存療法の良い点は、リスクが少なく、気軽に始めることが出来ることです。ただ、根本治療ではございませんので、すべり症が完治することはありません。

外科手術

日常生活が送れないほど症状が進行している場合は、保存療法では無く、外科手術が適応となることがあります。すべり症の根本治療になりますが、リスクもあります。


腰椎すべり症の外科手術の種類とそのメリットやデメリット、後遺症について

すべり症の外科手術は大きく2つに分けることが出来ます。それぞれ特徴、リスクについてご説明いたします。

腰椎後方除圧術

神経を圧迫している椎弓(脊椎の一部)、靭帯や関節突起(腰の骨の出っ張り)の一部を取り除く手術となります。内視鏡で必要部分のみを切除する方法(部分椎弓切除術)と広範囲に追及を切除する方法(広範囲椎弓術)があります。部分椎弓切除術の場合、術後約2-5日で歩行ができ、2週間ほどで退院となります。切開の範囲が狭いメリットはありますが、その分視野も狭くなるので椎骨が安定していない場合など重度の場合は手術適応外になることがあります。広範囲椎弓術の場合は、そのようなデメリットはありませんが、切開範囲が広いのでその分感染症や合併症のリスクは高くなります。また、一度広範囲に切除した場合は、再手術が出来ないことがあります。後遺症としては、神経や血管を傷つけることによる下肢の痛みやしびれの出現。膀胱直腸障害といった尿や便のトラブル。細菌感染が起こり、化膿することなどが考えられます。全身麻酔を行い、皮膚を切開するのでお身体の負担は大きくなります。

脊椎固定術(椎体間固定術)

椎骨(腰骨)を安定させるためには、脊椎固定術が適応となります。患者さん自身の骨(移植骨)や人工骨を挿入したり、プレート、スクリュー、ロッド、スペーサーといった医療器具を使ったりして、脊椎を固定する方法です。椎弓や椎間関節、椎間板や黄色靭帯を切除します。椎間板の代わりにスペーサーを挿入し、プレートをセットしロッドやスクリューで固定します。術後はリハビリが必要なため1か月ほどの入院期間が必要です。メリットとしては、腰椎の不安定性があり痛みが激しい場合でも適応となることです。骨を削り神経の通り道を広げることで症状の回復が期待できます。一方デメリットは、切開範囲が広く、手術時間も長いため、感染症、合併症などのリスクが内視鏡手術に比べると高くなります。固定を行うので、体を動かす際の違和感などを感じることも考えられます。全身麻酔を行い、皮膚を切開するのでお身体の負担は大きくなります。後遺症としては、腰椎後方除圧術同様に、神経や血管を傷つけることによる下肢の痛みやしびれの出現。膀胱直腸障害といった尿や便のトラブル。細菌感染が起こり、化膿することなどが考えられます。


外科手術は怖くて他の治療方法をお探しの方へ

すべり症に対して外科手術は有効です。しかし、外科手術にもメリットデメリットが存在します。長期の入院やリハビリが必要であったり、感染症や後遺症のリスクもあります。外科手術はすべり症に対しての根本治療となりますが、「メスを使用するのが怖い」「家庭の事情で入院することが難しい」と仰る方も多くおられます。NLC野中腰痛クリニックでは、メスを使わずにすべり症の日帰り治療を行うことが出来ます。


まとめ

すべり症の治療には手術が選択肢の一つとして考えられます。手術の主なメリットは、神経の圧迫を解消し、痛みやしびれを軽減することで、生活の質を向上させることです。手術には内視鏡手術や固定術がありますが、それぞれに異なる適応症状やリスクが伴います。デメリットとしては、感染症や神経損傷、再発のリスクがあります。すべり症の治療法を選ぶ際には、患者の症状の重さや日常生活への影響を考慮し、専門医との詳細な相談が不可欠です。保存的治療が効果を示す場合も多く、手術は最後の手段として検討されるべきと考えられますので、治療法の選択にはリスクとベネフィット(恩恵)を理解し、個々の症状に最適な方法を選ぶことが重要です。


参照先

腰椎変性すべり症に対するわれわれの術式選択とその手術成績 武政 龍一 山本 博司 谷 俊一 谷口 愼一郎 河野 真介 中国・四国整形外科学会雑誌 2000年12巻2号p.351-356

引用リンク

腰椎変性すべり症に対するわれわれの術式選択とその手術成績

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任


腰椎すべり症

腰椎すべり症

腰椎すべり症とは背骨が前方や後方にずれてしまう疾患です。腰痛・足の神経障害の他に間欠性跛行(かんけつせいはこう)の症状を引き起こします。