脊柱管狭窄症には、尿漏れや排尿障害といった尿に関する症状を引き起こす場合があります。尿漏れや排尿障害は、生活の質を低下させるだけでなく、腎臓や泌尿器系にも悪影響を及ぼす可能性があります。これらの症状を予防・改善させるためには、投薬や筋力トレーニングなどの保存療法や外科手術を検討する必要があります。


目次

脊柱管狭窄症が進行すると尿漏れが起きることがある

先述した通り、馬尾神経が圧迫される馬尾型では、尿漏れなどの症状が出現する場合があります。馬尾神経が圧迫されると、骨盤の神経にも障害が起きます。馬尾神経は膀胱の機能とも関係があり、馬尾神経の圧迫が続くと、尿漏れなどの尿障害に繋がるおそれがあります。

排尿障害とは

排尿障害とは、膀胱に尿を貯め、貯まった尿を体外へ出すといったサイクルに障害が起きることを言います。排尿障害は、尿を上手く出せない排出障害、尿を上手く貯めれない蓄尿障害の2つに分類することが出来ます。


神経因性膀胱とは

神経因性膀胱とは、中枢神経(脳と脊髄の神経)や末梢神経(全身に走る神経)の障害により、膀胱や尿道の機能障害が出現することを言います。

神経因性膀胱の症状と改善方法は

神経因性膀胱では、トイレが近くなったり、反対に尿意を感じにくくなったり、尿の勢いが無くなる、尿が自力では出せなくなるといった症状がみられます。自力で尿が出せなくなる場合は、自己導尿といい、カテーテルを使い排尿を促す方法もあります。神経因性膀胱を改善するには、腎機能の回復に努める必要があります。障害の種類によりますが、投薬治療、電気刺激治療、注射、外科手術などが考えられます。 状態により治療方法も変わります。症状が出ている場合は、専門医にご相談していただく必要があります。


排尿障害を予防する運動は

排尿障害を筋力トレーニングにて予防することは可能です。正しいフォームで、正しいトレーニングを行う必要があります。

尿漏れや排尿障害を予防する体操

  1. 椅子に座ります
  2. 丸めたタオルを手で持ちながら、内ももで潰します
  3. 1セット20回、1日3セット行います

ポイント

  • 出来るだけ力強く、タオルを圧迫してください

尿漏れや排尿障害を予防する体操②

  1. 仰向けに寝転がります
  2. 膝を曲げて、内ももに丸めたタオルを挟み込みます
  3. タオルが落ちないように、内ももに力を入れながらお尻を上げていきます
  4. 1セット10回、1日3セット行います

ポイント

  • 腰が反らないように腹筋にも力を入れてください

脊柱管狭窄症が進行し、尿漏れが起きてしまったらどうすれば良いか

脊柱管狭窄症と尿漏れは関係します。様々な予防方法がありますが、骨盤周辺の筋力トレーニングを行うことは有効です。ただ、正しい筋力トレーニングを行っても全ての症状を予防出来るわけではありません。 脊柱管の狭窄具合が重度の場合や、神経の損傷具合により、尿漏れなどの症状が進行する場合もあります。そのような場合は専門の医師にMRI画像を撮影してもらい、診察を受けることをお勧めします。保存療法(投薬や筋力トレーニング)ではなく、外科手術と診断される場合もあると思います。「メスを使用するのが怖い」「家庭の事情で入院することが難しい」と仰る方も多くおられます。NLC野中腰痛クリニックでは、メスを使わずに脊柱管狭窄症の日帰り治療を行うことが出来ます。


脊柱管狭窄症と排尿障害についてのまとめ

脊柱管狭窄症由来の尿漏れ予防に骨盤周辺の筋力トレーニングは有効です。筋力が衰えると、体を支えることが難しくなり、正しい姿勢が取り辛くなります。その結果、姿勢が乱れて正しい姿勢が保てなくなり、脊柱管(神経の通り道である骨のトンネル)が細くなり、脊柱管狭窄症の症状が悪化するおそれがあります。正しい骨盤周辺の筋力トレーニングを行うことにより、脊柱管狭窄症由来の尿漏れを予防することに繋がります。反対に、筋力が落ち姿勢が悪くなり、椎間板への負担が増すと、脊柱管狭窄症は悪化します。脊柱管狭窄症を正しく理解し、筋力トレーニングなどのケアを行っていただければと思います。今の症状には、どのようなことを気を付けるべきかが分からないといった場合は、医師などの専門家にまずはご相談されることをお勧めします。


参照元

神経因性膀胱における排尿効率改善に関する診断と治療 山田薫 中新井邦夫 大園誠一郎 末盛毅 青山秀雄 泌尿紀要 1983年7月29巻7号p.739-754

神経因性下部尿路機能障害 (神経因性膀胱) の機序と治療の最新知識 山西友典 内山智之 布施美樹 山口千晴 整形外科と災害外科 2013年27巻1号p.4-12

引用リンク

神経因性膀胱における排尿効率改善に関する診断と治療

神経因性下部尿路機能障害 (神経因性膀胱) の機序と治療の最新知識

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任


腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症とは背骨にある神経の通り道「脊柱管」が狭くなる疾患です。腰痛、足の神経障害や歩行困難などの症状を引き起こします。