概略

腰部脊柱管狭窄症の患者様でも仕事は続けられますが、立ち仕事には注意が必要です。長時間同じ姿勢を続けると症状悪化の要因となっているため、定期的に姿勢を変えることが重要です。特に立ち仕事の場合は片足を小さな台に乗せるなどの対策が有効です。また、重いものを持つことや捻る動作は避け、適切なストレッチを取り入れることで症状のコントロールが可能ですので、手術後も適切なリハビリと注意を守れば仕事復帰できます。


目次

長時間の立ちっぱなしは脊柱管狭窄症に悪い?

脊柱管狭窄症は、仕事や事故などの負荷や加齢によりクッションである椎間板が潰れ、背骨が変形した結果、骨のトンネル(脊柱管)が狭くなっていく疾患です。腰痛や下肢のしびれの症状を引き起こし、放置すると歩行障害や排尿・排便障害など日常生活に支障をきたす恐れがあります。

長時間の立ちっぱなしは、脊柱管狭窄症の症状を悪化させる要因となっています。立ち姿勢だけでなく、座り姿勢などその他の姿勢にも言えることですが、同じ姿勢は椎間板(腰のクッション)に対して大きなストレスとなります。同じ立ち姿勢を続けると、筋肉で体を支えることが難しくなっていき、椎間板に負担を掛けてしまいます。

長時間の立ちっぱなしの時に出来ることは?

日常生活において、お仕事や台所作業など長時間の立ちっぱなし姿勢をとらなければならない場面もあると思います。そのようなときは、小さな台を足元に用意してください。片足ずつその台に足を置いてください。数分ずつ台に乗せる足を交代させてください。台の高さは低めのもので十分です。足を乗せることにより、股関節が曲がります。股関節が曲がると骨盤や腰が少し後ろに傾き、脊柱管が広がります。同時に血流も良くなり、症状の緩和が期待できます。

長時間の立ちっぱなしの時におすすめのストレッチ

ストレッチ①

  1. 片足を後ろに引きます
  2. 前足の太ももに両手を置き、膝を曲げていきます
  3. 1回20秒程度伸ばします、左右同様に1日3セット行います

ポイント

  • 後ろ足の膝はしっかりと伸ばし、踵が床から離れないように注意します

ストレッチ②

  1. 肩幅に足を広げます
  2. 太ももに手を着きながら背中を丸めます
  3. 1回20秒程度伸ばします、1日3セット行います

ポイント

  • 痛くない、気持ちが良い範囲で伸ばします

立ち仕事は脊柱管狭窄症に悪い?

脊柱管狭窄症になっても仕事をすることは出来ます。ただ、仕事内容によっては避けた方が良いこともあります。ご自身の腰の状態を確認しながら、お仕事を行っていただければと思います。姿勢や動きによっては、腰が痛むこともあると思いますが、腰や足の痛みしびれが増悪することは極力お控えください。

仕事を行う時に気を付けることは?

1番気を付けるべき点は、重量物を持たないことです。どうしても持たなければいけない場合は、コルセットを使用し、少しでも腰の負担を軽減させてください。また、同じ姿勢を取り続けないことも大切です。立ちっぱなしだけではなく、デスクワークなどの長時間の座り姿勢も注意が必要です。30分に1度は立ち上がり、歩いてみたり、簡単な体操を行うなど姿勢を変える必要があります。
同様に体を捻る動きにも注意が必要です。例えば、物を左から右に繰り返し移動させるような動きは症状の悪化に繋がります。椎間板は捻る動きに対して弱いと言われています。勢いよく振り向くなどの動作には十分に注意してください。


手術後の仕事復帰は可能か

手術後の仕事復帰も可能だと考えます。先述した通り、重量物を持つ、長時間の同じ姿勢、捻る動きには細心の注意を払う必要があります。少しでも異変を感じれば、まずはその姿勢や動きを中止してください。まずは主治医に相談の上、お仕事内容の変更なども考えなければなりません。


症状がどうしても改善しない場合は

脊柱管狭窄症に対して、姿勢や動きを変える、ストレッチを行うことは有効です。ただ、正しいストレッチを行っても全ての症状が緩和されるわけではありません。脊柱管の狭窄具合が重度の場合などは、姿勢や動きの改善を行っていても症状が変わらない場合もあります。そのような場合は専門の医師にMRI画像を撮影してもらい、診察を受けることをおすすめします。保存療法(投薬やストレッチ)ではなく、外科手術と診断される場合もあると思います。「メスを使用するのが怖い」「家庭の事情で入院することが難しい」と仰る方も多くおられます。NLC野中腰痛クリニックでは、メスを使わずに日帰り治療を行うことが出来ます。

まとめ

腰部脊柱管狭窄症は、脊柱管が狭くなっていき、神経を圧迫することで腰痛や下肢の痛み、しびれを引き起こします。この状態でも仕事を続けることは可能ですが、特に立ち仕事には注意が必要です。長時間の同じ姿勢は症状を悪化させるため、定期的な姿勢変更が推奨されます。例えば、片足を小さな台に乗せるといった対策が有効です。また、重いものを持つことや捻る動作は避けるべきです。適切なストレッチやエクササイズも症状の管理に役立ちます。手術を受けた場合でもリハビリを継続し、医師の指示に従うことで仕事復帰が可能です。症状の悪化を防ぐためには、日常生活での注意が不可欠です。整形外科医など専門家のアドバイスを受けながら、適切な治療と生活習慣の改善を図りましょう。


参照元

某製造工場における腰痛と作業姿勢及び生活習慣のとの関係 山本華代 神代雅晴 衛藤理砂 藤井敦成 赤築秀一郎 鈴木秀樹 産業衛生学雑誌 2004年46巻 p.78-88

引用リンク

某製造工場における腰痛と作業姿勢及び生活習慣のとの関係

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任


腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症とは背骨にある神経の通り道「脊柱管」が狭くなる疾患です。腰痛、足の神経障害や歩行困難などの症状を引き起こします。