概略
腰椎ベルトは短期間の使用であるなら筋肉が脆弱になることはなく、腰痛の軽減や術後の回復に役立ちます。しかし、長期間に渡って使用すると筋肉が筋肉が萎縮し、怪我のリスクが高まります。メリットとデメリットを理解したうえで、腰椎ベルトの正しく用法しましょう。
目次
はじめに
腰椎ベルトは、腰痛患者様に対し腰痛の予防や治療を目的に着用します。しかし、腰椎ベルトを長く使い続けると筋肉が腰椎ベルトのサポートに依存し、徐々に弱って腰痛がさらに悪化するという説も有ります。腰椎ベルトの着用に関して見解が統一されておらず、患者様はどの意見が正しいのかわからず混乱されてしています。
今回は、腰椎ベルトの正しい用法についてお話ししたいと思います。
結論
短期間であれば腰椎ベルトで筋肉を弱めることはないと考えられます。「腰椎ベルトのせいで腰が弱っているのではないか?」と疑問に思う方は、往々にしてベルトの使い方が不適切なので、専門医と相談する必要があります。
腰椎ベルトの効果
腰の状態によりますが、理学療法などの他の治療法と組み合わせて腰椎ベルトを短期間使用すると有効であると考えられます。正しく使用された腰椎ベルトは下記の効果・効能が有ります。
十分なサポート
腰椎ベルトは、腰と腹部をより安定させ、体重を腰部から腹部に移動させる機能があります。そのため、背筋や腰椎関節、椎間板等にかかる負担が減少され、痛みを軽減することができます。
腰部の安定
腰椎ベルトは、腰と腹部をより安定させ、体重を腰部から腹部に移動させる機能があります。そのため、背筋や腰椎関節、椎間板等にかかる負担が減少され、痛みを軽減することができます。
腰椎の関節の動きの制限
腰が痛い人は、椎骨の動きを抑える必要があります。腰椎ベルトは、腰椎関節の微小な動きを大きく制限することで治癒プロセスを促進し、痛みを軽減し、脊髄神経がさらに損傷する可能性を減らすことができます。
腰椎ベルト装着時の懸念点
腰椎ベルトが適切に着用されていない場合や腰を維持されていない場合は、多くの問題が発生するリスクがあります。ベルトの不適切な使用による問題には、次のようなものがあります。
皮膚病変
フリーサイズとマークされているベルトなど、不適切にフィットするベルトは皮膚の炎症や損傷を引き起こす可能性があります。
筋萎縮
バックサポートベルトを長期間使用すると筋肉が萎縮し、後々怪我をするリスクがあります。
他の筋肉に負荷が移動
脊椎の一部の動きを制限すると他の筋肉に負荷がかかるため、それらの筋肉が損傷する可能性があります。
胃腸障害
一部のベルト着用者は、腹部の圧迫により消化器系の問題が発生したと述べています。
高血圧
筋肉が圧迫されると、血圧や安静時の心拍数も上昇します。
科学的根拠
Spine(2014年)
腰椎ベルトによる腰椎のサポートと動作制限が腰痛治療の効果を高めることが証明されました。
福島医学雑誌(2012年)
腰痛の治療に腰椎ベルトを使用すると、痛みが大幅に緩和されるだけでなく、限られた期間に関連する筋力が増強されることが報告されています。腰椎ベルトを長時間使用しても背筋は弱くならず、腰を十分にサポートします。
PLoS One Journal(2015年)
腰椎ベルトは、患者の健康と生活の質を向上させ、姿勢の安定性を改善し、仙腸関節関連の腰痛を軽減することができると説明されています。
Journal of Occupational Medicine(2002年)
腰痛持ちの在宅介護員の70%が腰痛ベルトの装着により恩恵を受けたと告白しています
まとめ
腰椎ベルトは腰痛の軽減や術後の回復に有効ですが、理学療法の代わりにはなりません。運動やリハビリなど、筋肉強化を専門家指導の下に行うことをお勧めします。腰椎ベルトを使用するにあたって長時間の装着はしないようにしましょう。また、ベルトをしたまま寝ることはお勧めできないので寝る前に必ず外してください。慢性的な腰痛の場合は、適切な治療を受けることで痛みの緩和が出来ますので医師に相談する方がよいでしょう。
参考文献参照元
①A randomized clinical trial comparing extensible and inextensible lumbosacral orthoses and standard care alone in the management of lower back pain - 2014 - David C Morrisette, Jacek Cholewicki, Sarah Logan, Gretchen Seif, Stephanie McGowan - Spine (Volume 39, Issue 21, P 1733-42)
②Lumbar supports for prevention and treatment of low back pain - 2008 - I C D van Duijvenbode, P Jellema, M N M van Poppel, M W van Tulder - Cochrane Database of Systematic Reviews (Volume 2008, Issue 2)
③A systematic review of randomised controlled trials assessing effectiveness of prosthetic and orthotic interventions - 2018 - Aoife Healy, Sybil Farmer, Anand Pandyan, Nachiappan Chockalingam - PLoS One (Volume 13, Issue 3)
④The effects of a 3-week use of lumbosacral orthoses on proprioception in the lumbar spine - 2006 - Jacek Cholewicki, Krupal R Shah, Kevin C McGill - Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy (Volume 36, Issue 4, P 225-31)
⑤Effects of long-term corset wearing on chronic low back pain - 2012 - Naoto Sato, Miho Sekiguchi, Shinichi Kikuchi, Hiroaki Shishido, Katsuhiko Sato, Shinichi Konno - FUKUSHIMA JOURNAL OF MEDICAL SCIENCE (Volume 58, Issue 1, P 60-65)
参考文献のリンク
①A randomized clinical trial comparing extensible and inextensible lumbosacral orthoses and standard care alone in the management of lower back pain
②Lumbar supports for prevention and treatment of low back pain
③A systematic review of randomised controlled trials assessing effectiveness of prosthetic and orthotic interventions
④The effects of a 3-week use of lumbosacral orthoses on proprioception in the lumbar spine
⑤Effects of long-term corset wearing on chronic low back pain
この記事の著者
医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行
2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任