概略

腰痛が治らないと悩まれている方が大変多いです。腰痛は発症してからの経過期間や発症した原因によって治療方法が異なりますが、手術が必ずしも必要なわけではありません。時間や活動性に関係のない腰痛は判別がしやすいので、心当たりがある場合は早期に医療機関を受診されることをお勧めします。


目次

腰痛が治らない方必見!原因や症状別の対処方法を解説

あなたの腰痛はどのくらい続いていますか?

腰痛診療ガイドラインによれば腰痛発症からの経過期間は以下の3つに分かれています。

急性腰痛
症状発生から4週間未満の場合

亜急性腰痛
症状発生から4週間以上、3ヵ月未満の場合

慢性腰痛
症状発生から3ヵ月以上経過している場合

3つの段階に分けることによって腰痛に対する治し方や治療方法を検討していきます。

そもそも腰痛の原因は?

腰痛には大きく分けて脊椎(腰骨)またはその周辺の筋肉や靭帯組織に由来する原因と神経・内臓・血管・心因性等の原因の2つの原因があります。腰椎は脊髄と通って脳まで繋がっているため腰痛が起きる原因は様々な病気が関連している可能性があるためです。

腰(脊柱)に原因があるもの

腰痛診療ガイドライン2019によると脊椎とその周辺の運動に携わる筋肉や靭帯による腰痛の原因は75%が診断により判明できると言われています。

  • 椎間関節性:22%
  • 筋・筋膜性:18%
  • 椎間板性:13%
  • 狭窄症:11%
  • 椎間板ヘルニア:7%
  • 仙腸関節性:6%

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアは骨と骨の間にある椎間板が神経に飛び出ることを言います。主に過度なスポーツや重労働などで椎間板に負担がかかり椎間板内の圧力が高くなることで神経に飛び出し腰痛を引き起こします。ヘルニア軽度の場合は内服やリハビリで様子を見ることを推奨していますが、稀に急性期の強い腰痛が出現する場合があります。その場合は外科的手術で飛び出た椎間板を切除する方法により腰痛を緩和させることもできます。

脊柱管狭窄症

脊柱管狭窄症

脊柱管狭窄症は神経の通り道である「脊柱管」が狭くなることを言います。椎間板から脊柱管が圧迫され狭くなる場合もあれば、神経の後ろを通る黄色靭帯(おうしょくじんたい)が分厚くなることによって圧迫される場合もあります。主に加齢によって脊柱管が狭くなっている場合が多く、高年齢層に多く見られる疾患です。また脊柱管狭窄症の特徴として数メートル歩くと腰痛が辛く休憩しないと歩くことができない「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」の症状があります。脊柱管狭窄症の場合もヘルニアと同様にまずは内服やリハビリで様子を見ます。しかし歩行ができない状況になったり、排尿障害になったりする場合は外科的手術を選択する場合もあります。外科的手術は脊椎固定術といって腰椎を固定し、骨を安定させることで神経への負担を軽減させることで腰痛を緩和させる方法です。

腰椎すべり症

腰椎すべり症

腰椎すべり症は骨が前に滑ることを言います。腰椎の間にある椎間板が変形することで不安定になり、上下の腰椎が滑り、後ろの神経を圧迫することによって痛みが発生します。すべり症は脊柱管狭窄症と症状が似ており、間欠性跛行の症状や坐骨神経痛などの症状を引き起こす場合があります。腰椎すべり症は大きく分けて2つの原因があります。1つは加齢による椎間板の変形が原因で起こる変性すべり症。もう1つは激しいスポーツなどで腰椎の後ろ側にある突起部分の骨が骨折し分離する分離すべり症があります。腰椎すべり症の場合も同様に内服やリハビリで様子を見ることが第一選択になりますが、腰椎が強くすべり、症状も強く出ている場合は脊椎固定術で腰椎を安定させる外科的手術を選択されることもあります。

腰以外に原因があるもの

腰痛診療ガイドライン2019によると腰以外の原因には以下のようなことが考えられます。

  • 神経由来
  • 内臓由来
  • 血管由来
  • 心因性

このような原因によって腰痛が発生している場合があります。


すぐに病院を受診すべき方の特徴

腰痛診療ガイドライン2019においては腰痛の危険信号を示す定義が記されています。

  • 発症年齢< 20 歳または> 55 歳
  • 時間や活動性に関係のない腰痛
  • 胸部痛
  • 癌,ステロイド治療,HIV 感染の既往
  • 栄養不良
  • 体重減少
  • 広範囲に及ぶ神経症状
  • 構築性脊柱変形
  • 発熱

特に「時間や活動性に関係のない腰痛」は判別がしやすく、心当たりがある場合にはすぐに医療機関を受診されることをお勧めします。


保険診療と自費診療の治療方法の違い

慢性的な腰痛や症状の強い腰痛に対しては手術を選択する場合があります。手術方法は腰の状態によって異なりますが「椎間板ヘルニア」のように神経への圧迫を減らすため神経にあたる部分を切り離す切除術や不安定な腰椎を固定させる固定術があり、また内圧が高くなった椎間板の圧力を下げる除圧術などの治療法があります。手術方法によっては保険が使えるものと使えないものがあります。MEL法(内視鏡下腰椎椎弓切除術)、ME-PLIF/TLIF(内視鏡下腰椎椎体間固定術)のようにメスを使って切開する手術は保険が使えますが、当院の治療のようにメスを使わないDST法(ディスクシール治療)は保険が使えません。

手術費用負担手術方法手術時間
保険診療(2~3割)メスを使う全身麻酔1時間~3時間程度
自費診療(10割)メスを使わず局所麻酔15分~30分程度

当院の腰痛治療方法

当院では検査(MRI・レントゲン)の上、診察を行い症状や原因に応じて治療法を決定していきます。椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症や腰椎すべり症に対する椎間板治療が有効な疾患に対して治療を行っており、従来の手術と比較して日帰りで身体への負担が少ない5種類の治療法を提案しています。

DST法(ディスクシール治療)

腰椎と腰椎の間にあるクッション機能をもった椎間板に特殊な薬剤を入れることによって傷が入った椎間板を修復し、機能を改善させる治療法です。
DST法の治療方法について詳しくはこちら

PIDT法(経皮的椎間板インプラント治療)

PIDT法(経皮的椎間板インプラント治療)ディスコジェルは欧州で広く行われている腰椎椎間板ヘルニアに対する低侵襲治療です。
PIDT法の治療方法について詳しくはこちら

PLOT法(経皮的オゾンレーザー治療)

腰椎椎間板ヘルニアに対する低侵襲治療であるレーザー治療(PLDD法)とオゾン治療(PODT法)を同時に行う事で、双方の利点を併せる事を目的とした治療です。
PLOT法の治療方法について詳しくはこちら

PODT法(経皮的椎間板オゾン治療)

PODT法とは、0.8mmの針(穿刺針)を用いて椎間板髄核内にオゾンを注入し、椎間板炎による腰痛や腰椎椎間板ヘルニアによる神経痛を改善させる方法です。
PODT法の治療方法について詳しくはこちら

PLDD法(経皮的レーザー椎間板減圧術)

PLDD法とは腰椎椎間板ヘルニアの原因である椎間板内の圧力上昇に対しての圧力を下げるレーザー治療です。
PLDD法の治療方法について詳しくはこちら


病院に行くほどではない腰痛の対処法

症状が軽い方、少しの運動で腰痛の改善を感じられる方は以下のような対策がお勧めです。

  • 座る姿勢に気を付けて、長時間座り続けないようにする(適度に席を立つなど)
  • 物を持ち上げるときは膝を落としてから持ち上げるようにする
  • 寝具(マットレス・枕)は体にあったものを使うようにする
  • 適度なウォーキングやストレッチを週1回は取り入れるようにする
  • 湿布や痛み止めの服用をしてみる
姿勢を正す
ウォーキングする
内服薬

整骨院や整体院などに通うことで一定の効果を感じられる場合があります。また当院でも運動の重要性を考えリハビリ施設を併設しています。腰痛に特化した運動方法を提案しています。


まとめ

腰痛が治らないと悩まれている方は当院にお問い合わせいただく患者様にも非常に多く、症状のでかたは一人ひとり異なります。だからこそ、症状発生からの期間や腰痛がどのようにして起きているのかを正確に診断することが非常に重要です。当院では慢性的な腰痛がお持ちの患者様、早期社会復帰を望まれる患者様に対して日帰りでできる椎間板治療を提供しています。ご予約やお問い合わせ等お気軽にご相談ください。


参考文献参照元

1:日本整形外科学会,日本腰痛学会."腰痛診療ガイドライン2019(改定第2版)".株式会社南江堂.
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001110/4/Low_back_pain.pdf(参照2022-12-17)

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任