概略
新型コロナウイルスは腰痛を引き起こす可能性がありますが、腰痛だからといって必ずしも新型コロナウイルス感染症に感染したとは限りません。身体の痛みは、主に新型コロナウイルスに感染したことで体内の免疫系統のシステムが反応して引き起こされると考えられています。これはインフルエンザなど他のウイルスによる感染症であっても起こり得ます。
目次
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は腰痛の原因になる?
2019年(令和元年)に中国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が初めて報告されてから、わずか数ヵ月後にはパンデミックとなり、全世界の人々に大きな被害を与えました。日本だけでも2022年12月までに約2,649万人が感染したと報告されています。現在はワクチン接種が進んだことにより感染者数は減少傾向ではありますが、一方でウイルスに感染した後、発熱、咳、倦怠感などのインフルエンザに似た症状と供に腰痛を訴える人が増えているそうです。しかし、本当に新型コロナウイルスが腰痛の原因となりうるのでしょうか?
今回は大変感心が高いと思われる新型コロナウイルス感染症と腰痛についてお話したいと思います。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は腰痛の主要症状の1つ
新型コロナウイルス感染症は主に呼吸器系のウイルスで、肺にのみ感染を起こすと考えられていますが、欧米ではデルタ変種に感染した患者の63%、オミクロン変種に感染した患者の42%が、主要症状の1つとして腰痛を報告しているという複数の調査結果が発表されています。多くの場合、痛みは急性期から存在していますが、中には罹患後1ヵ月から3ヵ月の間に新たに発症した場合もあります。
新型コロナウイルス感染症の症状としての腰痛
2020年のBest Practice & Research Clinical Anaesthesiology誌の調査結果によると、痛みは新型コロナウイルス感染症の最も一般的な症状であり、初期症状の1つとして現れることが多いとされています。
また同年のIrish Journal of Medical Science誌の調査によると、感染した 210 人のグループの 69.3% が痛みの症状が出たことを報告しています。 また、痛みを報告した46.6%の人は痛みが主な症状であると報告し、さらにその中の43.6%の人が腰痛を報告しました。
さらに同年のFrontiers in Neurologyによる研究レビューでも、腰痛は最も頻繁に報告される新型コロナウイルス感染症の症状の1つであることがわかりました。ちなみに研究者が分析した症例の約10%が腰痛と報告されています。
念のためお伝えしますと、腰痛を経験したからと言って、必ずしも新型コロナウイルス感染症に罹患しているわけではありません。それらは一般的なインフルエンザの初期症状でもありますし、椎間板変性や脊柱管狭窄症等の脊椎疾患が原因の場合もあります。
新型コロナウイルス感染症が腰痛を引き起こすメカニズム
一般的な身体の痛み、筋肉痛、または関節痛は、新型コロナウイルス感染症やその他のウイルス感染の一般的な症状で、主に身体の免疫反応によって引き起こされると考えられています。今回の新型コロナウイルス感染症に感染すると、痛みの原因となる炎症を引き起こす物質の放出が促されることが複数の医学誌によって示されました。
腰痛の原因が新型コロナウイルス感染症かどうかの判断
腰痛にはさまざまな原因が考えられます。腰痛が新型コロナウイルス感染症によって引き起こされたものかどうかは、新型コロナウイルス感染症の診断テストが陽性でない限り分かりません。しかも、この診断テストは100%正確ではありません。
2020年のIrish Journal of Medical Science誌に掲載された研究によると、新型コロナウイルス感染症の人が経験する痛みの強さは、他のウイルス感染症と同様に軽度から中等度であると報告されており、深い痛みと表現されることが多いようです。また、筋肉損傷による痛みに比べて、姿勢を変えることで緩和される可能性は低いとされています。
NLC野中腰痛クリニックによる脊柱菅狭窄症の治療実績
腰部脊柱管狭窄症の治療実績をご紹介します。中高年以上の患者さまが多く、治療中のご様子までご覧いただけます。当院の腰部脊柱管狭窄症の治療実績はこちらをご覧ください。
NLC野中腰痛クリニックの日帰り腰痛治療の実績は、6,358件(集計期間:2018年6月~2024年10月)
新型コロナの影響で運動が出来なくなり、左臀部と左脚を中心に激しい痛みとしびれが出現された患者さまです。複数の椎間板が潰れ、さらにズレも見られ、その結果脚の神経に障害が出現し、激しい痛みの原因となっています。今回、ディスクシール治療(Discseel® Procedure)により、椎間板を修復する事で脚の神経障害を改善させます。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と腰痛まとめ
新型コロナウイルス感染症の患者様から腰痛や筋肉痛になったとよく聞きます。多くの場合、痛みは病気の初期症状として現れます。身体の痛みは、主に新型コロナウイルスに感染したことで体内の免疫系統のシステムが反応して引き起こされると考えられています。腰痛だからといって、必ずしも新型コロナウイルス感染症に感染したとは限りません。インフルエンザなど他のウイルスによる感染症であっても、身体の痛みを引き起こすケースが往々にしてあります。自分の腰痛が新型コロナウイルス感染の症状かどうかを確かめるには、PCR検査などの診断テストが陽性であることが必要です。しかし、診断テストが陰性なのに腰痛が緩和されない場合は、腰骨や椎間板が原因の可能性があるので一度専門医に相談してみてください。きっとお力になってくれるはずです。
参考文献参照元
①Impact of COVID-19 pandemic on chronic pain management: Looking for the best way to deliver care - 2020 - Filomena Puntillo, Mariateresa Giglio, Consultant Anesthetist, Nicola Brienza, Omar Viswanath, Ivan Urits, Alan D. Kaye, Anesthesia, Joseph Pergolizzi, Antonella Paladini, Giustino Varrassi - Best Practice & Research Clinical Anaesthesiology (Volume 34, Issue 3, P 529-537)
②Clinical presentations of pain in patients with COVID-19 infection - 2021 - Sadiye Murat, Bilinc Dogruoz Karatekin, Afitap Icagasioglu, Celal Ulasoglu, Sacit İçten, Onur Incealtin - Irish Journal of Medical Science
(Volume 190, Issue 3, P 913-917)
③Neurological and Musculoskeletal Features of COVID-19: A Systematic Review and Meta-Analysis - 2020 - Auwal Abdullahi, Sevim Acaroz Candan, Muhammad Aliyu Abba, Auwal Hassan Bello, Mansour Abdullah Alshehri, Egwuonwu Afamefuna Victor, Naima Aliyu Umar, Burak Kundakci - Frontiers in Neurology (Volume 11, P 687)
④Pain as clinical manifestations of COVID-19 infection and its management in the pandemic era: a literature review - 2020 - I Putu Eka Widyadharma, Ni Nyoman Shinta Prasista Sari, Kadek Enny Pradnyaswari, Kadek Tresna Yuwana, I Putu Gede Danika Adikarya, Clarissa Tertia, I A Sri Wijayanti, I A Sri Indrayani, Desak Ketut Indrasari Utami - Egypt J Neurology Psychiatr Neurosurgery (Volume 56, Issue 1, P 121)
⑤A Study of the Effects of the COVID-19 Pandemic on the Experience of Back Pain Reported on Twitter® in the United States: A Natural Language Processing Approach - 2021 - Krzysztof Fiok, Waldemar Karwowski, Edgar Gutierrez, Maham Saeidi, Awad M. Aljuaid, Mohammad Reza Davahli, Redha Taiar, Tadeusz Marek, Ben D. Sawyer - International Journal of Environmental Research and Public Health (Volume 18, Issue 9, P 4543)
参考文献のリンク
①Impact of COVID-19 pandemic on chronic pain management: Looking for the best way to deliver care
②Clinical presentations of pain in patients with COVID-19 infection
③Neurological and Musculoskeletal Features of COVID-19: A Systematic Review and Meta-Analysis
④Pain as clinical manifestations of COVID-19 infection and its management in the pandemic era: a literature review
⑤A Study of the Effects of the COVID-19 Pandemic on the Experience of Back Pain Reported on Twitter® in the United States: A Natural Language Processing Approach
この記事の著者
医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行
2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任