概略

非特異的腰痛とは、特定の原因に起因しない腰痛の総称です。主に、怪我や筋肉の緊張、悪い姿勢、ストレスなどによって引き起こされる可能性がありますが、MRIなどの画像診断を行っても痛みの原因を特定することはとても困難であり、外科的手術で対応することも稀です。日常生活におけるストレスを減らし、適度な運動をすることで非特異的腰痛の改善が期待できます。


非特異的腰痛症って何? 序論

目次

はじめに

非特異的腰痛症という言葉を耳にしたことはあるでしょうか? 医師の診断を受けた方は聞いたことがあるかもしれませんね。と言いますのも、先日来院された患者様から他院の先生に関して大変興味深いご意見をお聞きしました。患者様が仰るには「何回も病院まで足を運んでMRIとレントゲン写真も撮ったのに、結局このようなあいまい診断結果(非特異的腰痛症)がしか出ない」というものです。聞き馴染みのない言葉と原因がはっきりしない診断で患者様の苛立ちもとても理解できます。
今回はそんな非特異的腰痛症について、わかりやすく解説したいと思います。


非特異的腰痛

厳密な原因が特定できない腰痛のことを非特異的腰痛と言います。患者様の立場からすれば、腰痛の原因が特定されることを期待するのは当然だと思います。非特異的腰痛症は、その語感からどうしても曖昧に聞こえてしまいますが、実際はそれほど悪くない診断結果です。なぜなら、少なくとも腰痛原因の一部を除外できる結果であるからです。

除外できる腰痛原因

  • 腫瘍
  • 骨折
  • 骨粗鬆症
  • 骨や関節の変形、脊柱の過度の湾曲など
  • 炎症性疾患(全身に影響を与える病気で、特に関節や脊椎を攻撃するもの)
  • 神経根症候群 (脊椎の中または近くで神経根が損傷しているもの)
  • 馬尾症候群

患者様の腰痛が、上記のどれにも該当しないことがわかると、随分とお気持ちが楽になるのではないかと思います。


非特異的腰痛のタイプ

非特異的腰痛は「急性腰痛」「亜急性腰痛」「慢性腰痛」の3つに分類されます。この分類は、腰痛の期間に基づいており、急性腰痛は6週間未満の腰痛、亜急性腰痛は6週間から12週間、慢性腰痛は12週間以上の腰痛を指します。

非特異的腰痛の主な原因

  • 外傷性損傷
  • 腰椎の捻挫またはひずみ
  • 姿勢の負担
  • ストレス

非特異的腰痛の症状

  • 鋭く突き刺さるような痛み
  • 感覚異常
  • 痺れ
  • 麻痺
  • 硬直状態
  • 腰の動きの制限
  • 放散痛(臀部・大腿部)
  • 長時間座り続くと痛む
  • 立ち上がることができない
  • 憂鬱な気分
  • 痛みのない時期が比較的に少なくなる

「背部痛理学療法診療ガイドライン」より抜粋


非特異的腰痛の治療

非特異的腰痛を外科的手術で対応できるケースは非常に稀です。慢性的な非特異的腰痛の改善策として「安心感を与えること(認知行動療法)」「活動的に過ごすよう勧めること(理学療法)」があり、急性・亜急性の非特異的腰痛には、「有酸素運動(運動療法)」「短期間に限定して非ステロイド性抗炎症薬の投与(薬物療法)」が推奨されています。いずれにせよ、日常生活におけるストレスを減らし、適度な運動をすることで非特異的腰痛の改善が期待できます。


まとめ

非特異的腰痛症とは腰痛の総称であり、MRIなどの画像診断を行っても痛みの原因を特定することはとても困難です。腰痛とその症状が何か、総合的に診た上でジャッジする必要があります。長引く腰痛にご不安な方は、お近くの専門医にご相談するか、当院にお問い合わせください。様々な治療法があり、患者様の症状に最適な治療法をご提案できればと思います。

非特異的腰痛症って何? 結論

参考文献参照元

①Association of low back pain with muscle weakness, decreased mobility function, and malnutrition in older women: A cross-sectional study - 2021 - Satoshi Kato, Satoru Demura, Kazuya Shinmura, Noriaki Yokogawa, Tamon Kabata, Hidenori Matsubara, Yoshitomo Kajino, Kentaro Igarashi, Daisuke Inoue, Yuki Kurokawa, Norihiro Oku, Hiroyuki Tsuchiya - PLOS ONE (Volume 16, Issue 1)
②Non-specific low back pain - 2017 - Chris Maher, Martin Underwood, Rachelle Buchbinder - The Lancet (Volume 389, Issue 10070, P 736-747)
③Diagnosis and Characters of Non-Specific Low Back Pain in Japan: The Yamaguchi Low Back Pain Study - 2016 - Hidenori Suzuki, Tsukasa Kanchiku, Yasuaki Imajo, Yuichiro Yoshida, Norihiro Nishida, Toshihiko Taguchi - PLOS ONE (Volume 11, Issue 8)
④Clinical practice guidelines for the management of non-specific low back pain in primary care: an updated overview - 2018 - Crystian B Oliveira, Chris G Maher, Rafael Z Pinto, Adrian C Traeger, Chung-Wei Christine Lin, Jean-François Chenot, Maurits van Tulder, Bart W Koes - European Spine Journal (Volume 27, Issue 11, P 2791-2803)

参考文献のリンク

Association of low back pain with muscle weakness, decreased mobility function, and malnutrition in older women: A cross-sectional study
Non-specific low back pain
Diagnosis and Characters of Non-Specific Low Back Pain in Japan: The Yamaguchi Low Back Pain Study
Clinical practice guidelines for the management of non-specific low back pain in primary care: an updated overview

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任