概略

フィットしない靴を履くと、骨盤が傾き、腰痛を引き起こす可能性があります。また、足の筋肉が衝撃を吸収できず、腰への負担が増しているためだとも考えられます。腰痛を予防するためには、足に合った靴を履き、インソールを使用することで慢性的な腰痛の改善が期待できます。


靴が原因で腰痛になることはある? 序論

目次

はじめに

農作業やスポーツ、交通事故や加齢など腰痛の原因は様々です。しかし、必ずしも明確な原因がある腰痛ばかりではありません。それは時に身につけるものが原因である場合もあります。
今回は、『靴』が腰痛の原因になるかどうかについてお話したいと思います。


結論

靴が原因で引き起こされる腰痛は、足の筋肉が衝撃を吸収できず、腰への負担が増しているためだと考えられます。


靴と腰痛の関係性

足は身体を支える土台です。土台が歪んでいると、腰や膝、背中等の他の部分も歪んでしまう可能性があります。

研究報告

2011年にJournal of Manipulative and Physiological Therapeuticsで掲載された研究において、腰痛患者のグループに靴のインソール(中敷き)を使用し1年間観察記録を取りました。その結果、患者全体の78%が痛みの緩和及び改善されたことが確認されました。

靴による影響

お身体に合っていない靴を履き続けると、下記の様な影響が生じます。

  • 骨盤が傾くことにより、腰や背中への負担が増大する
  • かかとがつま先より下に位置し、骨盤が回転してしまう
  • 足裏のアーチ型が維持できなくなり、衝撃吸収性が失われる
  • ヒールが2センチを超えると胸を前に突き出す形になり、背骨が自然なS字カーブを描くことができず、腰への負担が大きくなる

腰痛の方が避けるべき靴

腰痛を引き起こす、または悪化させる可能性がある靴は避けることが最善と考えます。

  • 靴底が完全に平らな靴
  • 衝撃を吸収しない靴
  • クッション性はあるが、サポート力がない靴

まとめ

足に合った靴を履くことは、単にファッションの問題だけでなく、腰と背中、そして足の健康にとって極めて重要です。適切な靴を履くことで関節や腰痛を軽減、または予防するための鍵となりますので、今一度ご自身の足と靴を確認してみてはいかがでしょうか?

靴が原因で腰痛になることはある? 結論

参考文献参照元

①Footwear-Generated Dynamic Biomechanical Manipulation and Perturbation Training for Chronic Nonspecific Low Back Pain - 2018 - Se Won Lee, Ratnakar Veeramachaneni, Ibrahim Abou Saleh, Karen Morice, Timothy Tiu, Yungtai Lo, Kevin Frison, Matthew N Bartels - PM&R (Volume 10, Issue 8, P 836-842)
②Low-Back Pain Associated With Leg Length Inequality - 1981 - L G Giles, J R Taylor - Spine (Volume 6, Issue 5, P 510-521)
③Conservative Correction of Leg-Length Discrepancies of 10mm or Less for the Relief of Chronic Low Back Pain - 2005 - Ruth Defrin, Sarit Ben Benyamin, R Dov Aldubi, Chaim G Pick - Archives of Physical Medicine and Rehabilitation (Volume 86, Issue 11, P 2075-2080)
④Shoe Orthotics for the Treatment of Chronic Low Back Pain: A Randomized Controlled Pilot Study - 2011 - Jerrilyn A Cambron, Manuel Duarte, Jennifer Dexheimer, Thomas Solecki - Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics (Volume 34, Issue 4, P 254-260)

参考文献のリンク

Footwear-Generated Dynamic Biomechanical Manipulation and Perturbation Training for Chronic Nonspecific Low Back Pain
Low-Back Pain Associated With Leg Length Inequality
Conservative Correction of Leg-Length Discrepancies of 10mm or Less for the Relief of Chronic Low Back Pain
Shoe Orthotics for the Treatment of Chronic Low Back Pain: A Randomized Controlled Pilot Study

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任