概略
高コレステロールによる脂質異常は、腰部血管の動脈硬化を引き起こし、椎間板変性や腰痛を発症させる可能性があります。また、動脈硬化のリスクを高めます。動脈硬化症(動脈にプラークが溜まる)等の心血管系疾患がある人は、細い動脈の血液供給が著しく減少するため、椎間板に多くの栄養が行き渡らず、変性しやすくなると言われています。
はじめに
高コレステロールが心臓発作や脳卒中のリスクを高めることはよく知られていますが、これらが背骨にも影響を与えることをご存知ですか?今日は、高コレステロールと腰痛の因果関係についてお話ししたいと思います。
結論
高コレステロールによる脂質異常は腰部血管の動脈硬化を引き起こし、椎間板変性や腰痛を発症させるメカニズムとして示唆されています。
椎間板と背骨の構造
椎間板は水とコラーゲンを含む混合物でできています。椎間板はクッションのような役割を果たし、背骨の椎骨を支えるのに役立っています。椎間板には直接栄養を供給する血管がなく、外側にある腰椎と仙骨の動脈から受動拡散という形で栄養が供給されています。これらの動脈は、喫煙、糖尿病、高コレステロールの悪影響を非常に受けやすいです。特に高コレステロールは、動脈硬化のリスクを高める可能性があり、動脈硬化症(動脈にプラークが溜まる)等の心血管系疾患がある人は、細い動脈の血液供給が著しく減少するため、椎間板に多くの栄養が行き渡らず、変性しやすくなるのだそうです。
研究
アメリカ国立衛生研究所医学図書館(2018年)
日本で毎年行われる健康診断の大規模データに基づいた研究で、血清脂質と腰痛の関連が分析されました。その結果、高コレステロールによる血清中のLBP濃度が高い方に、全身に軽微な炎症を引き起こす可能性が示唆されました。
高コレステロールの原因
高コレステロールになる可能性については、いくつかの要因が関わってきます。高コレステロールになる可能性を高める危険因子は以下の通りです。
- 年齢:コレステロール値は年齢とともに上昇する傾向があります
- 性別:男性、閉経後の女性
- 家族に高コレステロールの人がいる
- 高脂肪食
- 過体重または肥満であること
- 体を動かさない生活
高コレステロール治療
高コレステロールかどうかを調べるには、医師による健康診断と血液検査を行うことが必要です。血液検査では、総コレステロール、HDLコレステロール(善玉コレステロール)、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)、トリグリセリドなど、血液中の脂質濃度が測定されます。これらの検査で高コレステロールが確認された場合、医師はおそらく食事療法と生活習慣の改善を勧めるでしょう。その内容は以下の通りです。
- 飽和脂肪酸とトランス脂肪酸を制限した健康的な食事をすること
- 運動の増加
- ストレスを管理する健康的な方法を見つける
- 禁煙
- 薬の服用
まとめ
年齢や遺伝等の危険因子に対してできることは多くありませんが、肥満、喫煙、糖尿病、高コレステロール、高血圧等の危険因子をコントロールすることは誰にでもできます。コレステロール値を記録することは、心血管系の健康を維持するための方法の1つに過ぎませんが、よりよく管理するために専門医と緊密に連携し、効率的に行うことをお勧めします。
参考文献参照元
①Atherosclerotic Disease and its Relationship to Lumbar Degenerative Disk Disease, Facet Arthritis, and Stenosis With Computed Tomography Angiography - 2018 - William J Beckworth, John F Holbrook, Lisa G Foster, Laura A Ward, James R Welle - PM&R (Volume 10, Issue 4, P 331-337)
②Association between serum lipids and low back pain among a middle-aged Japanese population: a large-scale cross-sectional study - 2018 - Takahiko Yoshimoto,corresponding author Hirotaka Ochiai, Takako Shirasawa, Satsue Nagahama, Mariko Kobayashi, Akira Minoura, Ayako Miki, Yingli Chen, Hiromi Hoshino, Akatsuki Kokaze - Department of Hygiene, Public Health and Preventive Medicine, Showa University School of Medicine(Volume 24)
③Symptomatic disc herniation and serum lipid levels - 2011 - Umile Giuseppe Longo, Luca Denaro, Filippo Spiezia, Francisco Forriol, Nicola Maffulli, Vincenzo Denaro - European Spine Journal (Volume 20, Issue 10, P 1658–1662)
④Factors associated with lumbar intervertebral disc degeneration in the elderly - 2008 - Mika Hangai, Koji Kaneoka, Shinya Kuno, Shiro Hinotsu, Masataka Sakane, Naotaka Mamizuka, Shinsuke Sakai, Naoyuki Ochiai - The Spine Journal (Volume 8, Issue 5, P 732-740)
⑤Serum Cholesterol & Chronic Low Back Pain - 2008 - Dr. Bahram Jam - Physical Therapy Web
⑥Is there a Relationship between Blood Lipid Profile andLumbar Spinal Stenosis? - 2020 - Ezgi Akar, Mustafa Efendioğlu - HAYDARPAŞA NUMUNE MEDICAL JOURNAL (Volume 60, Issue 2, P 194-197)
参考文献のリンク
①Atherosclerotic Disease and its Relationship to Lumbar Degenerative Disk Disease, Facet Arthritis, and Stenosis With Computed Tomography Angiography
②Association between serum lipids and low back pain among a middle-aged Japanese population: a large-scale cross-sectional study
③Symptomatic disc herniation and serum lipid levels
④Factors associated with lumbar intervertebral disc degeneration in the elderly
⑤Serum Cholesterol & Chronic Low Back Pain
⑥Is there a Relationship between Blood Lipid Profile and Lumbar Spinal Stenosis? [PDF]
この記事の著者
医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行
2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任