概略
腰椎椎間板ヘルニアは、腰椎の椎間板が飛び出して神経を圧迫する病気です。加齢、過度な運動、生活習慣(喫煙等)によって椎間板が損傷を受け症状が発生します。発症初期から重度にかけて様々な症状が現れるので、足腰に痛みやしびれがあったり、ぎっくり腰を頻発したりなど、ご自身の症状レベルをチェックして対策を講じましよう。
目次
腰椎椎間板ヘルニアの症状レベルチェックシート
椎間板ヘルニアは腰椎(腰骨)の間にある椎間板(クッションのような役割する組織)が後ろの神経を圧迫することを言います。椎間板ヘルニアの初期症状として腰痛が挙げられます。重い物を持ち上げた時や翌日に腰痛が発症するなどが症状としてよく見られます。初期症状が進行すると以下のような特徴が表れます。現在のご自身の症状と当てはまる項目はいくつありますか?
腰椎椎間板ヘルニアの症状
- 腰痛や足の痛み・痺れがある
- お尻から足にかけて痺れ・痛みがある
- 足に力が入りにくい
- 慢性的な腰痛・足の痛み・痺れがある
- 時々ぎっくり腰になる
日常生活で起こる腰椎椎間板ヘルニアの症状
- 長時間立ち話ができない
- 洗面が辛い
- 掃除機をかけるなどの家事が辛い
- つまずきやすくなった
- 座って作業することが辛い
- 散歩できる時間が減った
この項目に1つでも当てはまった方は「腰椎椎間板ヘルニア」の可能性があります。治療方法や現在の症状を悪化させないためにも整形外科にて診察を受けることをお勧めします。
10代から起こる腰椎椎間板ヘルニアの原因とは?
椎間板ヘルニアの原因はいくつかありますが主に加齢、過度な運動、生活習慣(喫煙等)によって椎間板が損傷を受け症状が発生します。また稀なケースですが遺伝的要因も関係しています。神経に飛び出し痛みや痺れが発生します。椎間板ヘルニアは若年層(10代~)で発症することも多く症状も様々です。椎間板ヘルニアは初期症状であれば軽い腰痛、進行すると年2・3回のぎっくり腰程度、重度になると立ち上がることができないくらい痛みが強く出ることもあり、重度の場合は早期の手術が必要になることがあります。
腰椎椎間板ヘルニアの2つの診断方法
椎間板ヘルニアの診断方法に画像での診断と身体を動かして診断する方法があります。
MRI画像にて腰椎椎間板ヘルニアを診断
MRI画像ではレントゲンでは見ることができない椎間板や神経の状態を確認することができます。神経への圧迫の程度を確認でき、また腰の何番目に椎間板ヘルニアが出ているのかも確認することができます。
腰椎椎間板ヘルニアの下肢伸展挙上(かししんてんきょじょう)テスト ※通称SLRテスト
これは腰から足先に向かって伸びる坐骨神経の障害を調べるテストです。ラセーグテストとも呼ばれることがあります。また腰からの痛みと非常によく似た股関節痛があるかどうかも判断することができます。
テストの手順
- 痛みが出ている方を上にして寝ます
- 膝を伸ばして少しずつ足を挙げていきます
椎間板ヘルニアの場合は、足を挙げると痛みが発生します。足を挙げても痛みがない場合は股関節痛が原因と判断できるのです。SLRテストを実施することで椎間板ヘルニアかどうか高い確率で判断することができるため、診察時にSLRテストを行うことも多いです。尚、セルフチェックは医療機関の医師が病名を特定する方法の1つでしかありません。このセルフチェックだけで病名が特定できるわけではありません。あくまでもご自身のお身体の状態を確認する方法として参考にしてください。
保存療法・外科的手術による腰椎椎間板ヘルニアの治療方法
椎間板ヘルニアの治療方法について説明します。
腰椎椎間板ヘルニアの保存療法とは
- 薬物療法
- ブロック注射
- 運動療法
- 装具療法(コルセット固定など)
症状が軽度あるいは初期の治療方法として選択されることが多いです。外科的手術はリスクが伴うため、保存療法で改善が見られるのであればまずはその方法を続けてみることをお勧めします。しかしながら、保存療法でも症状の改善がない場合には外科的手術も検討する必要があります。
腰椎椎間板ヘルニアの手術療法とは
- 椎間板切除術(LOVE法)
- 椎間板摘出術(MD法、MED法)
- 経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(PELD法)
- 椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア)
- 経皮的椎間板減圧術(PLDD法)
椎間板ヘルニアの手術には大きく分けて2つあります。皮膚を切開してヘルニアを取り除く切除術と皮膚を切らずにレーザーや酵素薬を入れる椎間板治療です。切除術はヘルニアを切り取るため、神経への圧迫を早く取り除くことができます。特に症状が強くヘルニアも神経に大きく飛び出している場合は外科的手術が有効です。また手術の成功率は80~90%程度を言われています。しかし、手術後に再発する可能性もあるため手術後も予防として適度な運動は続ける必要があります。椎間板治療はメスを使わないため日帰りもしくは1泊2日の入院で日常生活に戻ることができます。椎間板ヘルニアが軽度~中程度であり、ご高齢や外科的手術ができないと診断された方であっても治療が可能です。しかし、外科的手術と同様に再発する可能性があるため手術後の適度な運動は続けなければいけません。また、ヘルニアの場合は一生に一度しか治療ができないため再治療はできません。
腰椎椎間板ヘルニアに対する当院の椎間板治療とは?
当院では椎間板治療に特化した治療を提供しています。椎間板ヘルニアに有効な治療法としてPLDD法以外にディスクシール治療(Discseel® Procedure)を行っています。ディスクシール治療(Discseel® Procedure)は従来の手術方法とは考え方が異なります。椎間板を切除したり、レーザーで焼いたりすると症状の改善は見込めるのですが、切った後の傷口を塞いでいないため傷口からヘルニアが再発する可能性があるためです。ディスクシール治療(Discseel® Procedure)は原因となる傷口を塞ぐことで症状を改善し、また再発する可能性を下げることが目的となっています。PLDD法と同じく、日帰りで治療ができるため入院の必要がなく、お身体への負担も少ない治療方法となっています。しかし、治療後効果が出るまでには3~6カ月程時間がかかります。
NLC野中腰痛クリニックによる腰椎椎間板ヘルニアの治療実績
当院における腰椎椎間板ヘルニアの治療実績をご紹介します。腰部脊柱管狭窄症と併発するケースも多く、また坐骨神経痛などの症状もみられます。当院の腰椎椎間板ヘルニアの治療実績はこちらをご覧ください。
NLC野中腰痛クリニックの日帰り腰痛治療の実績は、6,466件(集計期間:2018年6月~2024年11月)
椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症による間欠性跛行で難儀されている患者さまです。検査をしたところ、椎間板がほとんど潰れてしまっている状態でしたが、ディスクシール治療(Discseel® Procedure)を行うことで椎間板の修復と症状改善を図りました。
腰椎分離症と腰椎すべり症と診断されておられる患者さまです。4年ほど前より左坐骨神経の領域に疼痛としびれが出現しておられ、原因治療を目的にディスクシール治療(Discseel® Procedure)を行いました。
【まとめ】腰椎椎間板ヘルニアの症状をご自身で確認するために診断を受けることが重要
今回ご紹介した症状チェックシートでご自身の状態を確認することから始めてみてください。椎間板ヘルニアは発症初期から重度にかけて様々な症状が現れます。特に日常生活で腰を丸めると痛みが出やすいという方は椎間板ヘルニアの可能性があるため、一度検査をしてお身体の状態を確認されることをお勧めします。
この記事の著者
医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行
2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアとは背骨の間にある椎間板(ついかんばん)が外に飛び出し神経を圧迫する疾患です。坐骨神経痛、ぎっくり腰などの症状を引き起こします。