椎間板治療が脊柱管狭窄症に向いていない場合は? 序論

目次

【はじめに】椎間板治療が脊柱管狭窄症に向いていない場合は?

当クリニックで治療を受けたご友人の紹介で、脊柱管狭窄症の60代の男性患者様が来院されました。診察の結果、残念ながら椎間板治療(DST法・ディスクシール治療)に適応外となったため、外科的手術をお勧めしました。患者様は「友人の脊柱管狭窄症はDSTで良くなったのに、なぜ私は適応外なのでしょうか?」とがっかりされたご様子でした。
本日は、当院の椎間板治療が患者様のお身体に適応するか否かといった疑問についてお答えしたいと思います。


脊柱管狭窄症の原因によって治療法が異なります

脊柱管狭窄症の原因が変性した椎間板であれば、椎間板治療が適応になります。しかし、別の要因であった場合、良い結果が期待できないので、外科的手術など別の治療法をお勧めします。


腰部脊柱管狭窄症の原因と症状について

脊柱管の構造

背骨は大きく「背骨」「椎間板」「神経」「黄色靭帯」の4つから出来ています。また神経は、背骨にあるトンネルの中を通っております。そのトンネルの名前を脊柱管と言います。

脊柱管狭窄症とは

脊柱管狭窄症とは、椎間板が変性や突出してヘルニアになったり、骨が突出したり、黄色靭帯が分厚くなったりすることで、神経が通っている脊柱管が狭くなる病気です。

脊柱管狭窄症の症状

脊柱管狭窄症により狭くなった脊柱管の中で神経の圧迫や炎症が生じ、下半身に様々な神経症状が出現します。多くの場合、次のようなものがあります。

  • 臀部や足の痛み
  • しびれ
  • 衰弱
  • 痙攣(けいれん)
  • 尿もれ

脊柱管狭窄症の原因

  • 先天的要因
    致し方ないことですが、生まれ持って脊柱管が狭いと成長とともに症状が出やすくなります。
  • 事故等による骨の損傷
    交通事故やスポーツによる怪我により、トンネルの中が狭くなったり、骨のズレが生じてしまったりします。
  • 骨の経年劣化
    加齢により椎間板の変性や骨の変形、靱帯の緩みなどが起こり、最終的に狭窄へ追い込まれます。

NLC野中腰痛クリニックによる脊柱菅狭窄症の治療実績

腰部脊柱管狭窄症の治療実績をご紹介します。中高年以上の患者さまが多く、治療中のご様子までご覧いただけます。当院の腰部脊柱管狭窄症の治療実績はこちらをご覧ください。
NLC野中腰痛クリニックの日帰り腰痛治療の実績は、5,558件(集計期間:2018年6月~2024年2月)


まとめ

脊柱管狭窄症の発症リスクは50歳を過ぎると増加します。脊柱管狭窄症の初期症状(痛みやしびれ)は、よくある加齢によるものだと軽視される傾向にあります。現状の足の痛みやしびれが気になられるようであれば、早めに専門医に相談されるのが適切だと考えます。ごく稀に馬尾症候群の併発が発見される場合があり、その時は緊急手術が必要となりますので……。
脊柱管狭窄症に関して、YouTubeにて模型を使ってわかりやすく解説しておりますので、少し長いですが閲覧いただければ幸いです。


参考文献参照元

①Lumbar Spinal Stenosis: Review Update 2022 - 2022 - Ji-won Kwon, Seong-Hwan Moon, Si-Young Park, Sang-Jun Park, Sub-Ri Park, Kyung-Soo Suk, Hak-Sun Kim, Byung Ho Lee - Asian Spine Journal (Volume 16, Issue 5, P 789–798.)
②Clinical and MRI findings in lumbar spinal stenosis: baseline data from the NORDSTEN study - 2022 - Jørn Aaen, Ivar Magne Austevoll, Christian Hellum, Kjersti Storheim, Tor Åge Myklebust, Hasan Banitalebi, Masoud Anvar, Jens Ivar Brox, Clemens Weber, Tore Solberg, Oliver Grundnes, Helena Brisby, Kari Indrekvam, Erland Hermansen - European Spine Journal (Volume 31, Issue 6, P 1391-1398)
③Lumbar Spinal Stenosis - 2022 - Lite Wu, Ricardo Cruz - StatPearls Publishing
④Factors associated with low back pain in patients with lumbar spinal stenosis: a cross-sectional study - 2022 - Izaya Ogon, Atsushi Teramoto, Hiroyuki Takashima, Yoshinori Terashima, Mitsunori Yoshimoto, Makoto Emori, Kousuke Iba, Tsuneo Takebayashi, Toshihiko Yamashita - BMC Musculoskelet Disord (Volume 23, Issue 1, P 552)
⑤MANAGEMENT OF LUMBAR SPINAL STENOSIS - 1996 - F. Postacchini - Journal of Bone and Joint Surgery (Volume 78, Issue 1)

参考文献のリンク

Lumbar Spinal Stenosis: Review Update 2022
Clinical and MRI findings in lumbar spinal stenosis: baseline data from the NORDSTEN study
Lumbar Spinal Stenosis
Factors associated with low back pain in patients with lumbar spinal stenosis: a cross-sectional study
MANAGEMENT OF LUMBAR SPINAL STENOSIS

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任


腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症とは背骨にある神経の通り道「脊柱管」が狭くなる疾患です。腰痛、足の神経障害や歩行困難などの症状を引き起こします。