概略
筋肉が痩せることを筋萎縮(きんいしゅく)といいます。腰椎椎間板ヘルニアによって神経が炎症を起こした場合、下肢の筋萎縮を引き起こす可能性があります。神経機能の悪化を防ぐために、早期治療が推奨されます。
目次
腰椎椎間板ヘルニアが原因で足が痩せる!?
先日、左足が急に細くなったことに気づいて当院を受診された70代の患者様から「先生、お尻と足の筋肉が痩せたのは椎間板ヘルニアが原因ですか?」とご質問がありました。加齢に伴い足の筋肉が衰えることはよくあることですが、なぜ腰と関係しているのか今日は椎間板ヘルニアと筋肉の因果関係についてお話ししたいと思います。
腰椎椎間板ヘルニアで筋萎縮の可能性有り
腰の神経が足の筋肉に影響を及ぼしている可能性があります。筋肉が痩せることを筋萎縮(きんいしゅく)といいます。筋肉にはたくさんの筋(スジ)があり、それが萎縮すると筋力が低下し、体を動かしにくくしてしまいます。腰の神経が炎症していると激しい腰痛や足の痛みがある・なしに関わらず、正常に神経が働いていないため神経が筋肉に栄養を供給できずその結果、筋肉が成長せず弱くなり筋肉が萎縮してしまうとの研究結果があります。
筋肉の低下と神経の関係について
高齢者(75歳)の足の神経機能と若年層の神経機能を比べると30%減少しており、それ以降は悪化する一方(60%)であることが研究結果によって明らかになっています。
またご自身の年齢よりも身体年齢が若く、健康で強い筋肉を持っている人は椎間板ヘルニアによる原因が解決できると神経の働きが活発になり、神経機能が回復される可能性が高くなりますが、サルコペニア(筋肉の著しい衰え)の状態では、神経機能が回復する可能性は低くなることが分かっています。
つまり、椎間板ヘルニア等の病気により神経機能に問題がある場合はなるべく早く対処することが先決です。
足の筋肉が低下すると、不可能ではないにしても神経機能を回復することはかなり難しくなるのです。神経からの伝達によって筋肉が動いているため長時間神経機能が正常に働いていないと筋力が低下し続けてしまいます。
筋肉が痩せることを予防する方法について
健康な筋肉・体つくりをするためには運動が不可欠です。 強い筋肉を作ることができれば椎間板ヘルニアから起こる神経機能の低下を防ぐことができます。
NLC野中腰痛クリニックによる腰椎椎間板ヘルニアの治療実績
当院における腰椎椎間板ヘルニアの治療実績をご紹介します。腰部脊柱管狭窄症と併発するケースも多く、また坐骨神経痛などの症状もみられます。当院の腰椎椎間板ヘルニアの治療実績はこちらをご覧ください。
NLC野中腰痛クリニックの日帰り腰痛治療の実績は、6,358件(集計期間:2018年6月~2024年10月)
過去に他院さまにて椎間板ヘルニアの外科的治療をされましたが改善がみられない患者さまです。外科的治療の影響からか巨大なヘルニア性変化による疼痛(FBSS・脊椎術後疼痛症候群)を認めたため、ディスクシール治療(Discseel® Procedure)で症状の改善を図りました。
【まとめ】足の筋肉が痩せるのは腰椎椎間板ヘルニアが原因?
椎間板ヘルニアが原因で痛みがあり腰の神経が炎症している疑いがある場合、または足の筋肉が衰えている場合には神経内科や整形外科の医師に相談されることをお勧めいたします。
参考文献参照元
①Failure to expand the motor unit size to compensate for declining motor unit numbers distinguishes sarcopenic from non-sarcopenic older men - 2018 - M Piasecki, A Ireland, J Piasecki, D W Stashuk, A Swiecicka, M K Rutter, D A Jones, J S McPhee - The Physiological Society (Volume596, Issue9)
②Correlation between intervertebral disc degeneration, paraspinal muscle atrophy, and lumbar facet joints degeneration in patients with lumbar disc herniation - 2017 - Dong Sun, Peng Liu, Jie Cheng, Zikun Ma, Jingpei Liu, Tingzheng Qin - BMC Musculoskelet Disord
③Long-term lumbar multifidus muscle atrophy changes documented with magnetic resonance imaging: a case series - 2014 - Mark Woodham, Andrew Woodham, Joseph G Skeate, Michael Freeman - Journal of Radiology Case Reports
④Bilateral leg pain and unilateral calf atrophy caused by polymyositis accompanying lumbar spinal stenosis and disc herniation: a case report - 2022 - In-Hwa Baek, Hyung-Youl Park, Ho-Young Jung, and Jun-Seok Lee - SAGE journals
⑤How does the side of lumbar disc herniation influence the psoas muscle size at the L4-5 level in patients operated for unilateral hip arthroplasty? - 2022 - Yilmaz Guvercin, Ayhan Kanat, Hasan Gundogdu, Ahmet Attila Abdioglu, Ali Riza Guvercin, International Journal of Neuroscience
参考文献のリンク
①Failure to expand the motor unit size to compensate for declining motor unit numbers distinguishes sarcopenic from non-sarcopenic older men
②Correlation between intervertebral disc degeneration, paraspinal muscle atrophy, and lumbar facet joints degeneration in patients with lumbar disc herniation
③Long-Term Lumbar Multifidus Muscle Atrophy Changes Documented With Magnetic Resonance Imaging: A Case Series
④Bilateral leg pain and unilateral calf atrophy caused by polymyositis accompanying lumbar spinal stenosis and disc herniation: a case report
⑤How does the side of lumbar disc herniation influence the psoas muscle size at the L4-5 level in patients operated for unilateral hip arthroplasty?
この記事の著者
医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行
2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアとは背骨の間にある椎間板(ついかんばん)が外に飛び出し神経を圧迫する疾患です。坐骨神経痛、ぎっくり腰などの症状を引き起こします。