概略

椎間板ヘルニアの初期治療には、理学療法や薬物療法、ブロック注射などが選択されます。したがって、椎間板ヘルニアの外科的手術が選択肢となる時期は、保存的治療で症状緩和ができない場合に検討されます。


MRI検査で腰痛が分かるのか? 序論

目次

はじめに

椎間板修復・再生治療が適応できない60代前半の女性患者様に「椎間板ヘルニアの外科的手術が必要な時期はいつ頃わかるものなのでしょうか?」と聞かれました。こちらの患者様のお身体は再生治療に適応できず、馬尾神経障害の疑いが強かったため、出来るだけ早いタイミングでの外科的手術をお勧めしました。
本日はこちらの疑問を解明したいと思います。


結論

椎間板ヘルニアの外科的手術が選択肢となる時期は、保存療法で改善が見られない場合に検討されます


椎間板ヘルニアの対応方法

椎間板ヘルニアの初期治療には、安静、非ステロイド性抗炎症薬、硬膜外ブロック注射、理学療法などの保存的治療が選択されます。具体的には、理学療法(リハビリ)による脊椎を囲む筋肉を強化し、椎間板ヘルニアの痛みを伴う症状を緩和します。


外科的手術が必要な場合

外科的手術は、次のような場合に検討されます。

  • 保存的治療が奏功しなかった
  • 腰痛が足や臀部に放散している(坐骨神経痛)
  • 痛みが常態化し、日常生活に支障をきたしている
  • 脚の脱力感や痺れなどの神経障害が進行している

仮に上記の症状であったとしても、椎間板修復治療(ディスクシール治療・Discseel® Procedure)や非外科的椎間板減圧治療(PLDD法)等でメスを入れることを避けることが出来ます。しかし、残念ながら全ての方に対応できる訳ではありません。稀に椎間板ヘルニアによって直腸や膀胱に機能障害が生じたり、陰部の感覚の喪失や両脚への強い脱力感(馬尾症候群)などが起こることがあります。これらの症状は、緊急を要することもございますので、すぐに救急外来を受診してください。


まとめ

手術にはいくつかの種類があり、年齢、ライフスタイル、重症度等の様々な要因に基づいて選ぶことになります。当院で行っている日帰り腰痛治療の場合、多くの患者様が、術後すぐに歩けるようになられています。また、回復期間が大幅に短縮されるので、術後数日で仕事を再開できている患者様もおられます。
もちろん患者様のお身体の状態に個人差はありますが、外科的手術を行うより早く仕事や趣味に復帰することができますので、一度ご相談いただければと存じます。

MRI検査で腰痛が分かるのか? 結論

参考文献参照元

①Microdiscectomy for lumbar disc herniation - 1994 - J.Goffin - Clinical Neurology and Neurosurgery (VOLUME 96, ISSUE 2, P130-134)
②Long-Term Results of Various Operations for Lumbar Disc Herniation: Analysis of over 39,000 Patients - 2015 - George J Dohrmann, Nassir Mansour - Medical Principles and Practice (VOLUME 24, ISSUE 3, P285-290)
③A New Full-Endoscopic Technique for the Interlaminar Operation of Lumbar Disc Herniations Using 6-mm Endoscopes: Prospective 2-Year Results of 331 Patients - 2006 - S Ruetten, M Komp, G Godolias - Minim Invasive Neurosurg (VOLUME 49, ISSUE 2, P80-87)
④Cauda Equina Syndrome as a Postoperative Complication in Five Patients Operated for Lumbar Disc Herniation - 2001 - T Henriques, C Olerud, M Petrén-Mallmin, T Ahl - Spine (VOLUME 26, ISSUE 3, P293-7)
⑤Cauda equina syndrome: what is the relationship between timing of surgery and outcome? - 2002 - J R W Gleave, R Macfarlane - British Journal of Neurosurgery (VOLUME 16, ISSUE 4, P325-328)

参考文献のリンク

Microdiscectomy for lumbar disc herniation
Long-Term Results of Various Operations for Lumbar Disc Herniation: Analysis of over 39,000 Patients
A New Full-Endoscopic Technique for the Interlaminar Operation of Lumbar Disc Herniations Using 6-mm Endoscopes: Prospective 2-Year Results of 331 Patients
Cauda Equina Syndrome as a Postoperative Complication in Five Patients Operated for Lumbar Disc Herniation
Cauda equina syndrome: what is the relationship between timing of surgery and outcome?

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任


腰椎椎間板ヘルニア

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