概略

腰痛が睡眠を妨げ、逆に睡眠不足が腰痛のリスクを高める可能性があります。また、睡眠中の腰痛原因は1つではありませんので、慢性的な腰痛でお悩みの方は医師に相談することをお勧めします。


睡眠時の腰痛は無視してもよいのか? 序論

目次

はじめに

先日、起床時の腰痛に悩んでおられる患者様を診察したところ、特に腰椎に異常が見られませんでした。患者様は「先生、ありがとうございます。心配するところが無くてよかった」と喜ばれ、私も嬉しくなり喜びを分かち合いました。しかし、注意しないといけない点があるともお伝えしました。
本日は、身体に異常が無くても就寝時や起床時の腰痛に対しての見解を共有したいと思います。


結論

痛みは「何かがおかしい!」という脳への警鐘です。背骨に異常が無くても、就寝時や起床時の腰痛は我慢できる程度であっても軽視していけません。


腰痛と睡眠

昨今の研究によると、腰痛と睡眠不足には因果関係があると示されています。慢性的な腰痛を経験すると睡眠不足に陥りやすいということです。例えば2011年の調査では、参加者の58.9%が腰痛によって睡眠が妨げられたと報告しています。

また、睡眠の質が悪いと腰痛発症のリスクが高くなることも示されました。2021年に発表された研究 (22年間にわたる8601人のデータを調べたもの) によると、長期的に睡眠の質が悪い人は、長期的に睡眠の質が良い人に比べて、腰に関する障害のリスクが約2倍であることがわかったのです。


なぜ寝ると腰痛になるのか?

就寝時に起こる背中の痛みは、首から尾骨まで背骨のどこにでも発生する可能性があるため、理由を1つに絞ることができかねます。ただし、痛みを引き起こす可能性については、いくつかの要因があることがわかっています。

睡眠中に起こる背中の痛みの主な原因

  • 寝ているときの姿勢
  • 寝具のサポートが不十分な場合
  • 最近の怪我
  • 妊娠している

特に腰椎に異常がない場合は、腰痛の原因は寝姿勢と考えられます。痛みで目が覚めたら、寝ているときの姿勢が原因かもしれません。特定の寝姿勢では、首、肩、腰、腰に圧力がかかり、痛みが生じることがあります。

最近の研究により、寝姿勢と脊椎の症状との因果関係を特定するには、十分な証拠がないことがわかりました。しかし、2007年から2008年にかけて腰椎椎間板ヘルニアの手術を受けた患者84名を対象に実施された調査では、横向きで足を組んで寝る患者は、足を組んでいない患者より椎間板ヘルニアを発症する可能性が圧倒的に高い(78%)ことが示されました。

背骨の健康に良い寝姿勢

  • 仰向けで、膝の下に枕を置く
  • 横向きで膝を楽に曲げた状態(必要であれば膝の間に枕を挟む)
背骨の健康に良い寝姿勢

まとめ

寝姿勢や寝具を変えても問題が解決しない場合や、何が自分に合っているのか分からない場合は、より深刻な問題にならないように我慢せずに医師に相談してください。腰痛の原因を徹底的に調べることは何よりも重要です。

睡眠時の腰痛は無視してもよいのか? 結論

参考文献参照元

①Prevalence of sleep disturbance in patients with low back pain - 2011 - Saad M. Alsaadi, James H. McAuley, Julia M. Hush, and Chris G. Maher - European Spine Journal (VOLUME 20, ISSUE 5, P737-743)
②The effect of long-term poor sleep quality on risk of back-related disability and the modifying role of physical activity - 2011 - Eivind Schjelderup Skarpsno, Tom Ivar Lund Nilsen & Paul Jarle Mork - Scientific Reports. (VOLUME 11)
③The Effect of Low Back Pain on Daily Activities and Sleep Quality in Patients With Lumbar Disc Herniation: A Pilot Study - 2019 - Gulsah Kose, Sevinc Tastan, Nail Caglar Temiz, Melek Sari, Yusuf Izci - J Neurosci Nurs. (VOLUME 51, ISSUE 4, P184-189)
④Sleeping Position As An Etiological Factor In Lumbar Disc Herniation - 2009 - Yalçın Kocaoğullar, Selçuk Üniversitesi Meram Tıp Fakültesi Beyin ve Sinir Cerrahisi - alçın Kocaoğullar,Mehmet Erkan Üstün,Ahmet Önder Güney (VOLUME 25, ISSUE 4, P191-193)
⑤Comprehensive Review of Epidemiology, Scope, and Impact of Spinal Pain - 2009 - Manchikanti, Laxmaiah; Singh, Vijay; Datta, Sukdeb; Cohen, Steven P; Hirsch, Joshua A.  - Pain Physician; Paducah (VOLUME 12, ISSUE 4, P35-70)

参考文献のリンク

Prevalence of sleep disturbance in patients with low back pain
The effect of long-term poor sleep quality on risk of back-related disability and the modifying role of physical activity
The Effect of Low Back Pain on Daily Activities and Sleep Quality in Patients With Lumbar Disc Herniation: A Pilot Study
Sleeping Position As An Etiological Factor In Lumbar Disc Herniation
Comprehensive Review of Epidemiology, Scope, and Impact of Spinal Pain

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任