概略
特定の食品が炎症を悪化させたり改善したりすると報告されています。食事療法が腰痛などの炎症の鎮静化に効果的ですので、緑黄色野菜や魚、豆類にオリーブオイルなどを積極的に摂り入れましょう。
はじめに
この2日間で2名の患者さんから、「慢性的な腰痛を改善するために、他にできることはありますか?」という質問を受けました。どちらの患者さんも、運動され、非喫煙者で、痩せていました。また、お二人とも椎間板の膨隆やヘルニアはなく、腰椎椎間板変性症と診断され、当クリニックの椎間板治療の適応ではありませんでした。 本日は重度の椎間板変性なく、理学療法、運動療法などが効いていないのに薬を飲みたくない患者様が出来ることについてお話ししたいと思います。
結論
慢性的な腰痛を改善するために他に出来ることがあります。炎症を低下(鎮める)ダイエットを始めることはその一つです。
炎症の原因とは
日常生活の中で口にする食事が原因
現代医学は、予防ではなく治療に重点を置いた医学だと批判されることがよくあります。通常、炎症が起きると炎症の原因を探って取り除くのではなく、まず、炎症を抑える薬を飲んでしまうことは多いです。原因不明の炎症の場合、私たちが最も多く接しているもの、それは私達が毎日摂取する食べ物と飲み物です。 栄養学の専門家の間では、私たちが口にする食品の多くが全身の炎症を引き起こしている可能性があるという認識が広まっており、食事を変えたところ腰痛などの慢性炎症の症状が大幅に改善したというケースが報告出されています。
食事によって炎症を増加させるもの
一部の食品は、炎症の増加させます。- 精糖
砂糖は、慢性的な軽度の炎症、肥満、高血圧に関連しています。様々な研究で、包装された食品の74%に精製糖が含まれていることが示されています。 - 飽和脂肪
赤身の肉、パスタ、チーズなどに含まれる飽和脂肪は、炎症に反応して肝臓で生成されるC反応性タンパク質の増加に関連しています。 - アルコールの過剰摂取
1日に2杯以上のアルコール飲料を飲むことは、腸内微生物叢を変化させることによって腸の炎症に関連しています。 - 炭水化物
小麦粉=パン、パスタ、ラーメン、うどん、白米などの精製炭水化物を多く含む食品は、血糖値の急上昇に寄与し、体の炎症マーカーを上昇させます。
食事によって炎症を抑えるもの
- 緑の葉野菜(ほうれん草、ケールなど)
- オメガ3脂肪酸を含む魚(サーモン、エビ、サバ、ビンナガマグロ)
- 豆類(黒豆、ひよこ豆、ピント豆、黒目豆)
- ベリー類(ブルーベリー、ストロベリー、ラズベリー)
- アボカド
- オリーブオイル
まとめ
すでに運動をし禁煙をしているにもかかわらず、椎間板変性による慢性的な痛みを抱えている患者さんには非炎症性の食事療法を検討することをお勧めします。 またダイエットを始める前に、主治医に相談することが大切です。医師は体に必要な栄養素を摂取しながら、炎症を抑えることができる食品についてアドバイスしてくれるでしょう。
参考文献参照元
①The Alkaline Diet: Is There Evidence That an Alkaline pH Diet Benefits Health? - 2011 - Gerry K. Schwalfenberg - J Environ Public Health (727630)
②Vitamin D supplementation may improve back pain disability in vitamin D deficient and overweight or obese adults - 2019 - Sharmayne R E Brady, Negar Naderpoor, Maximilian P J de Courten, Robert Scragg, Flavia Cicuttini, Aya Mousa, Barbora de Courten - J Steroid Biochem Mol Biol (185:212-217)
③Vitamin D deficiency may have role in chronic low back pain- 2005 - Peter J Lewis - BMJ (331(7508): 109)
④Dietary Patterns and Interventions to Alleviate Chronic Pain - 2020 - Simona Dragan, Maria-Corina Șerban, Georgiana Damian, Florina Buleu, Mihaela Valcovici, Ruxandra Christodorescu - Nutrients(12(9):2510. doi: 10.3390)
⑤A meta-analysis of the analgesic effects of omega-3 polyunsaturated fatty acid supplementation for inflammatory joint pain - 2007 - Robert J Goldberg, Joel Katz - Meta-Analysis (129(1-2):210-23. doi: 10.1016)
参考文献のリンク
①The Alkaline Diet: Is There Evidence That an Alkaline pH Diet Benefits Health?
②Vitamin D supplementation may improve back pain disability in vitamin D deficient and overweight or obese adults
③Vitamin D deficiency may have role in chronic low back pain
④Dietary Patterns and Interventions to Alleviate Chronic Pain
⑤A meta-analysis of the analgesic effects of omega-3 polyunsaturated fatty acid supplementation for inflammatory joint pain
この記事の著者
医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行
2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任