概略

背中の痛みを無視してはいけない理由として、1つは自然治癒しない可能性があること、もう1つは痛みを放置すると悪化する可能性があることが挙げられます。特に運動した訳でもなく出現する腰痛が3日以上続く場合は放置してはいけません。


腰痛を無視してはいけない理由 序論

目次

はじめに

先週、動けなくなるほどの腰痛が出現した患者様が来院されました。お話を伺うと「何度かぎっくり腰を経験していたが放置していた。」と仰っておられました。この患者様のように軽い腰痛を放置した結果、辛い経験をされる方もおられます。今回は「なぜ腰痛を無視してはいけないのか?」その理由についてお話ししたいと思います。


結論

軽い筋肉系の損傷による腰痛は、安静にするだけで自然に回復する可能性が高いです。しかし、筋肉系以外の損傷が原因であれば、自然に完治する可能性は低いと言えます。したがって、腰痛出現後に筋肉痛のように数日で改善する場合は放置しても問題ありませんが、特に運動もせずに出現する3日以上続く腰痛は放置しては駄目だと考えます。


腰痛に関する調査

「腰痛を一生のうちに経験する人の割合は83.4%」
これは2011年に行われた、全国6万5千人を対象としたインターネット調査の結果です。腰痛は、自己限定性疾患といわれています。難しい言葉ですが、言い換えると「自然に治る疾患」という意味になります。初めて腰痛を経験した方は、腰痛が風邪のように自然に治ると思い込む傾向があります。事実、腰痛は風邪のように多くの方がしばしば発症します。だからといって深刻ではないわけではありません。救急外来を受診する人の約3%は腰痛が原因であり、仕事を休む原因の1つになっています。

腰痛の原因

  • 筋膜、筋肉の疲労
  • 筋肉,腱、靭帯の損傷・老化
  • 椎間板変性・ヘルニア
  • 椎骨の骨折・滑り
  • 腰椎の捻挫,歪み
  • 関節炎
  • 骨棘
  • 腫瘍

まとめ

腰痛の原因は様々で適切な治療方法も異なります。症状が出たにもかかわらず放置してしまい、悪化させて後々さらにひどい目にあうということも少なくありません。そうならないように日常生活に支障が出る前に、医療機関を受診し、適切な治療方法を相談しましょう。

腰痛を無視してはいけない理由 結論

参考文献参照元

①Low back pain: when and what to do: S Tamás Illés - 2015 - Orvosi Hetilap Volume.156 (Issue.33 - p.1315-1320)
②Low Back Pain, a Comprehensive Review: Pathophysiology, Diagnosis, and Treatment Low Back Pain, a Comprehensive Review: Pathophysiology, Diagnosis, and Treatment: Ivan Urits, Aaron Burshtein, Medha Sharma, Lauren Testa, Peter A. Gold, Vwaire Orhurhu, Omar Viswanath, Mark R. Jones, Moises A. Sidransky, Boris Spektor & Alan D. Kaye - 2019 - Current Pain and Headache Reports Volume.23
③Prevention and treatment of low back pain: evidence, challenges, and promising directions: Prof Nadine E Foster DPhila, Prof Johannes R Anema PhD, Dan Cherkin PhD, Prof Roger Chou PhD, Prof Steven P Cohen MD, Prof Douglas P Gross PhD, Paulo H Ferreira PhD, Prof Julie M Fritz PhD, Prof Bart W Koes PhD, Prof Wilco Peul PhD, Prof Judith A Turner PhD, Prof Chris G Maher PhD, Lancet Low Back Pain Series Working Group - 2018 - The Lancet Volume.391 (Issue.10137 - p.2368-2383)
④日本腰痛診療ガイドライン(改訂第2版): 日本整形外科学会, 日本腰痛学会, 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会, 腰痛診療ガイドライン策定委員会 - 2019
⑤「職場における腰痛の発症要因の解明に係る研究・開発、普及」研究報告書: 独立行政法人労働者健康福祉機構 - 2013

参考文献のリンク

Low back pain: when and what to do
Low Back Pain, a Comprehensive Review: Pathophysiology, Diagnosis, and Treatment Low Back Pain, a Comprehensive Review: Pathophysiology, Diagnosis, and Treatment
Prevention and treatment of low back pain: evidence, challenges, and promising directions
日本腰痛診療ガイドライン(改訂第2版)
「職場における腰痛の発症要因の解明に係る研究・開発、普及」研究報告書 [PDF]

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任