概略
坐骨神経痛とは、体で最も長い神経である坐骨神経が炎症を起こす症状です。坐骨神経痛は1〜2ヵ月で自然に改善する可能性がありますが、自然に治ったとしても再発する可能性があり、症状が進むと慢性的に坐骨神経痛が発生します。根本的な原因を特定するために医師の診察を受けることが重要です。
目次
【序論】坐骨神経痛は自然に治りますか?
初めて坐骨神経痛を患われた多くの患者様は、「坐骨神経痛が自然に治るのか」と不安になられることが多いので、今回は坐骨神経痛についてご説明したいと思います。
坐骨神経痛とは
成人のおよそ40%が一生のうちに少なくとも1回は坐骨神経痛を経験すると報告されています。坐骨神経は、身体の中で最も大きな神経で、脊柱の根元当たりから臀部を通して両脚に走っていますが、坐骨神経に炎症が起きて、臀部や脚に現れた症状のことを坐骨神経痛と言います。つまり【坐骨神経痛=症状】であり【坐骨神経痛≠病名】ではない事を意味します。例えば、頭痛=症状ですが、頭痛の原因にはくも膜下出血や脳出血、脳梗塞、コロナ感染症等々多数あるのと同じです。
坐骨神経痛の原因
ほとんどの場合、坐骨神経痛は椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症等の腰の病気で腰部神経根が刺激されたり、圧迫されたりすることによって生じます。しかし、他の疾患が坐骨神経痛に似たような症状を引き起こす可能性があるため、医師の診断を仰ぐことが重要です。
【結論】坐骨神経痛は自然に治ることもあるが数週間から数カ月必要になる
坐骨神経痛は自然に治る場合もあります。
しかし自然に治る期間には個人差があり、数週間から数カ月の期間が必要になることがあります。
また自然に治ったとしても再発する可能性があり、症状が進むと慢性的に坐骨神経痛が発生します。
坐骨神経痛があっても活動性を落とさない
脚の痛みやしびれで横になって休もうとするのは当然の事ですが、布団の上でゴロゴロしても症状は改善されません。安静にしすぎると症状が悪化する可能性が報告されています。
痛みがあっても可能な限り日常生活を続けることが大切であり、そのために鎮痛薬を使用する事は良いと報告されています。
坐骨神経痛が出現した場合の対策
坐骨神経痛と診断されたら、痛みを管理しながら医師と相談して運動を取り入れることがポイントです。痛みが出たばかりの間は1~2日休んでもかまいませんが、痛みの悪化や再発を防ぐために、筋肉を強化したり伸ばしたりする必要があります。
リハビリ
坐骨神経痛の痛みに関係する主な筋肉は、背中下部から太ももにかけての股関節屈筋と梨状筋です。これらの筋肉を優しく伸ばし、凝り固まった腰と臀部、太もも等の筋肉をほぐす運動をリハビリの専門家から教えてもらいましょう。
リハビリや運動を通じて、神経から圧力を取り除くための体幹や筋肉を作ることができます。肥満気味の方は、減量することにより神経圧迫を減らすことに役立つと思われます。
NLC野中腰痛クリニックによる坐骨神経痛の治療実績
当院における坐骨神経痛の治療実績をご紹介します。坐骨神経痛は腰痛疾患をお持ちの幅広い年齢層の患者様に見られる症状です。当院の坐骨神経痛の治療実績はこちらをご覧ください。
NLC野中腰痛クリニックの日帰り腰痛治療の実績は、6,358件(集計期間:2018年6月~2024年10月)
自宅で転倒された際に腰部を強打され、坐骨神経痛が出現された患者さまです。既往があり、体力的にもリスクが高いことからディスクシール治療(Discseel® Procedure)を選択。治療時間は20分程度であり、2時間ほどベッドでお休みいただき帰宅していただきました。
【まとめ】坐骨神経痛は自然に治りますか?
坐骨神経痛は、およそ1~2ヵ月で治療をしなくても自然に治ります。しかし、それは完治するという意味ではありません。坐骨神経痛の原因となった根本的な疾患を解決しなければ再発し、慢性的な痛みに発展する可能性があります。つまり坐骨神経痛が出現した原因を医療機関で診断し再発や悪化する事を予防するべきであると考えます。これは軽い坐骨神経痛でも同様であり、適切なアドバイスを医療機関で受けるべきだと言えます。
参考文献参照元
①Resistance exercise promotes functional test via sciatic nerve regeneration, and muscle atrophy improvement through GAP-43 regulation in animal model of traumatic nerve injuries: Ehsan Arabzadeha / Alireza Rahimib / Mehdi Zarganib / Zeinab Feyz Simorghib / Shaghayegh Emamib / Sahar Sheikhib / Zeinab Zaeri Amiranib / Parisa Yousefib / Amir Sarshinc / Fariba Aghaeic / Foad Feizolahic - 2022 - Neuroscience Letters Volume 787, 14
②Surgery versus conservative management of sciatica due to a lumbar herniated disc: a systematic review: Wilco C. H. Jacobs / Maurits van Tulder / Mark Arts / Sidney M. Rubinstein / Marienke van Middelkoop / Raymond Ostelo / Arianne Verhagen, Bart Koes / Wilco C. Peul - 2011 - European Spine Journal Vol.20 (p513–522)
③A qualitative exploration of patient experiences of medication for sciatica: Michael Reddingtona / Susan Baxterb / Stephen J.Waltersc - 2021 - Musculoskeletal Science and Practice Vol.55
④腰痛とつきあう: 米澤郁穂 - 2008 - 順天堂医学 第21回都民公開講座《関節痛とつきあう》 54巻3号 (p363-366)
⑤McKenzie法による腰痛症の構造的診断法: 安藤正志 - 2001 - 理学療法科学 講座 16巻4号 (p239-248)
参考文献のリンク
①Resistance exercise promotes functional test via sciatic nerve regeneration, and muscle atrophy improvement through GAP-43 regulation in animal model of traumatic nerve injuries
②Surgery versus conservative management of sciatica due to a lumbar herniated disc: a systematic review
③A qualitative exploration of patient experiences of medication for sciatica
④腰痛とつきあう
⑤McKenzie法による腰痛症の構造的診断法
この記事の著者
医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行
2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任
坐骨神経痛
坐骨神経痛とは、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などを原因とし、腰から下部の臀部や脚に痛みやしびれを感じる症状です。