概略

肥満が腰痛を引き起こす可能性がることを示唆しています。体重の増加は腰に負担をかけ、椎間板ヘルニアを引き起こす可能性があります。椎間板ヘルニアは、腰や足の痛み、しびれといった症状が発症します。予防策として、体重を減らすことで腰痛のリスクを軽減できます。


目次

肥満と腰痛の関係性

外来診察をしていると、腰痛患者様の多くが肥満気味であられます。患者様からもよく質問をいただきますので本日はこの場を借りてご説明を申し上げたいと思います。


体重の約半分は腰が支えている

体重の約半分は腰(背骨)が支えていますので、体重の増加は直接腰に負担が増える事を意味します。体重が増えると腰の椎間板と呼ばれるクッション部分に圧力が増え、椎間板性腰痛症を引き起こすことがあります。


BMI5%増加で腰痛の危険性

目安として、BMIが5%増加すると腰痛の危険性が11%上昇する事が山形大学から研究論文として報告されています。BMIとは(体重/身長の2乗)の事ですので、単純に体重が5%増加すると腰痛の確率が約10%上昇することを意味します。体重が80kgの人の場合は60㎏の人と比べて30%以上腰痛を発症しやすいと言えます。その他BMIが25以上の体重過多および肥満の人に対しては、BMIを10%減少することで、腰痛発作の危険性が低下することも報告されています。


腰痛に悩んだらまずは減量を

腰痛でお悩みの方は減量をすることが大切です。目標はBMI25未満です。BMI=体重/身長の2乗ですので計算をしてみてください。
私は体重60kgで身長が172cmですのでBMIは60÷(1.72m×1.72m)=20.28となりセーフです。最後に体重増加は椎間板ヘルニアの確率を高める事も報告されています。


参考文献参照元

①Ya-peng Wang,E Wei Zhang,A,F,G Ji-long An,B Jian Zhang,D Jia-yue Bai,C and Ya-peng Sun:Evaluation of Transforaminal Endoscopic Discectomy in Treatment of Obese Patients with Lumbar Disc Herniation. Med Sci Monit 22:2513–2519,2016
②稲谷 弘幸, 横川 明男, 西村 立也, 小林 忠美, 黒田 一成「手術に至った腰椎椎間板ヘルニアの危険因子の検討」中部日本整形外科災害外科学会雑誌、53巻3号、2010年
③藤井 洋, 岡嶋 啓一郎, 堤 隆治, 高野 晴夫, 西 芳徳, 福田 朋博, 渡辺 弘之「上位腰椎椎間板ヘルニアの検討」整形外科と災害外科、50巻2号、2001年
④ジェトロ海外市場開拓課、ジェトロ・ニューヨーク事務所「米国におけるデジタルヘルス市場動向調査」JETRO(日本貿易振興機構)、2022年
⑤伊藤 孝紀, 中村 滋, 洪 淑貴, 須川 敬「当院における若年者(20歳以下)の腰椎椎間板ヘルニア手術例10例の検討」中部日本整形外科災害外科学会雑誌、50巻5号、2007年
⑥Nicholas Shepard, MD1 and Woojin Cho, MD, PHD:Recurrent Lumbar Disc Herniation: A Review. Global Spine J:9(2): 202–209,2017
⑦Takaaki Ikeda, Upul Cooray, Yuta Suzuki, Anna Kinugawa, Masayasu Murakami, Ken Osaka:Changes in body mass index on the risk of back pain: Estimating the impacts of weight gain and loss.J Gerontol A Biol Sci Med Sci:10.1093/gerona/glac184,2022

参考文献のリンク

Evaluation of Transforaminal Endoscopic Discectomy in Treatment of Obese Patients with Lumbar Disc Herniation
手術に至った腰椎椎間板ヘルニアの危険因子の検討
上位腰椎椎間板ヘルニアの検討
米国におけるデジタルヘルス市場動向調査
当院における若年者(20歳以下)の腰椎椎間板ヘルニア手術例10例の検討
Recurrent Lumbar Disc Herniation: A Review
Changes in body mass index on the risk of back pain: Estimating the impacts of weight gain and loss

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任