概略

腰椎椎間板ヘルニアの痛みを和らげる方法として、日頃から正しい姿勢を保つこと、適度な筋力トレーニングやストレッチを行うことが挙げられます。また、日常生活で気を付けるべきことを意識することも重要です。


目次

腰椎椎間板ヘルニアの痛みを和らげる方法

椎間板ヘルニアは骨と骨の間にある椎間板というものの一部が飛び出して神経に当たり炎症が生じると腰痛や臀部痛、下肢痛などを引き起こします。腰は体を支える要として重要な役割を果たしており、それゆえ座る・立つ等で体にかかる負担を受けやすい箇所でもあります。その原因は長時間の姿勢不良や筋力低下などが考えられるため、姿勢に気を付けて座ったり、合間でストレッチを行ったり自宅での体幹や下半身のトレーニングをするのが効果的です。椎間板ヘルニアで痛いときに痛みを和らげる姿勢や緩和方法をご紹介します。


腰に負担をかけない正しい座り姿勢

『日本人が座っている時間は世界一長い』というお話をご存じでしょうか?1日平均7時間座っていると言われています。すごく長いですよね?座る時間が長くなればなるほど、腰への負担は増します。小まめに立ち上がる、姿勢を変えるなど対策はありますが、ここでは『正しい座り姿勢』についてお伝えします。そもそも正しい座り方が分からない方が多いですよね。正しい座り方のポイントは1つだけです。座骨座りです。座骨座りについて詳しく解説していきたいと思います。


骨盤とは

骨盤は腸骨(ちょうこつ)、恥骨(ちこつ)、座骨(ざこつ)の3つに分かれます。

骨盤

この3つをまとめて寛骨(かんこつ)と呼び、左右1つずつあります。寛骨の間には仙骨(せんこつ)という骨があります。寛骨と仙骨を併せて『骨盤』です。


座骨座り

座骨には少し出っ張った骨があり、これを『座骨結節』(ざこつけっせつ)と呼びます。座骨結節はお尻の下の方に左右1つずつあります。この骨が左右均等に椅子に当たっている状態が、腰に負担の掛かりにくい姿勢といわれています。座骨結節の場所ですが、お尻の下の辺りに手の平を置いてください。そのまま椅子に座って、お尻を軽く左右に動かします。

座骨結節の場所

手の平にコリコリした骨が当たると思います。これが座骨結節です。座骨結節を左右均等に椅子に当て、足裏をしっかり地面に着けている状態こそが『座骨座り』となります。

座骨座り

腰に対して負担の少ない姿勢です。


仙骨座り

反対におすすめできない座り姿勢は『仙骨座り』です。

仙骨座り

ヘルニア患者さんに多く見られる座り姿勢です。この座り方は骨盤が後ろに倒れ背中が丸くなり、腰への負担が高くなります。 もしかしたら……と思い当たる節がある方は1度姿勢をチェックしてみてください。


筋力トレーニング

ヘルニアに有効な体幹筋力トレーニングをお伝えします。体幹筋力とは、体の奥にあるインナーマッスルのことです。インナーマッスルに力が入ると、コルセットを着けている時のように体が安定し、椎間板への負担が軽減される効果があります。


ドローイン

  1. 膝を立て仰向けに寝転びます。
  2. 手は骨盤の出っ張った骨より指2本分内側を触ります。
  3. 鼻から息を吸いながらお腹を膨らませ、口から息を吐きながらお腹を凹ませ10秒間キープします。
  4. お腹を凹ませた時に。手で触っている箇所が硬くなっているか確認してください。
  5. この動きを10回行います。
ドローイン

ストレッチ

ヘルニアに有効なハムストリングス(太ももの裏)のストレッチをお伝えします。ハムストリングスが硬くなってしまうと、骨盤が後ろに倒れ、腰痛の原因となります。

  1. 仰向けになり、片方の膝を立てます。
  2. 片方の太ももの裏に手を組みます。
  3. その状態で足を浮かし、膝を曲げ伸ばししてください。
  4. この時に、頭が浮かないように注意してください。
  5. 手が届きにくい方は、タオルを使用してください。
  6. この動きを片脚ずつ10回行います。
ストレッチ

椎間板ヘルニアで痛いときに日常生活で気を付けるべきことは?

姿勢の悪さ

長年、姿勢が悪い状態が続くと腰に負担をかけてしまいます。長時間のデスクワーク、座り仕事など同じ姿勢を続けることで腰が固まり立ち上がった時に痛みが出たり、座っている間に坐骨神経痛のような症状が出たりすることもあります。特に前かがみの姿勢になってPCを見ていると椎間板に負担がかかり損傷を早め劣化する原因になります。椅子に座る際には正しい姿勢を心がけ、定期的に立ち上がって歩いたりするようにしてください。

仕事や子育てによる負担

重たい荷物を運ぶ重労働による腰痛、子育てによる産後疼痛なども腰に負担をかける原因になります。重いものを持ち上げる場合は腰痛ベルトを巻くなど、腰に負担をかけにくくして持ち上げるようにすると良いでしょう。

筋力の低下

筋力は腰を支えるうえでとても重要な要素です。
腰骨の周りには筋肉、靭帯、関節など体を動かすために必要な部位が集まっています。関節が硬くなったり、筋力が低下すると腰痛・足の痛み・痺れに繋がることもあり、適度な運動や腰に負担のかかりにくい運動を取り入れることが非常に大事です。当院では椎間板の損傷以外に靭帯・関節などを鍛える方法としてリハビリも推奨しています。

喫煙

腰痛は喫煙とも関係があります。たばこに含まれるニコチンは血液循環に影響を与えることが論文などでも報告されています。特にがんや心臓病に影響を与えると言われています。腰に関して言えば、椎間板ヘルニアの原因である椎間板にも影響を与えるとする研究結果もあります。血液は体を巡り骨などに栄養を届けていますが、血液循環が悪いと十分な栄養が行き渡らないため椎間板の変形に繋がり、変形した部分が神経を圧迫して痛みなどを引き起こすこともあります。


NLC野中腰痛クリニックによる腰椎椎間板ヘルニアの治療実績

当院における腰椎椎間板ヘルニアの治療実績をご紹介します。腰部脊柱管狭窄症と併発するケースも多く、また坐骨神経痛などの症状もみられます。当院の腰椎椎間板ヘルニアの治療実績はこちらをご覧ください。
NLC野中腰痛クリニックの日帰り腰痛治療の実績は、6,358件(集計期間:2018年6月~2024年10月)

令和元年に当クリニックで脊柱管狭窄症に対してディスクシール治療(Discseel® Procedure)を行い、症状がほぼ消失された患者さまです。しかし、趣味であるゴルフを再開されると軽度の坐骨神経痛が出現する状態になられたため、再度ディスクシール治療(Discseel® Procedure)を行う事による症状の改善を図りました。治療後は約2時間ベッドでお休みいただき、ご帰宅していただきました。


椎間板ヘルニアの痛みを和らげる方法は、まずは医師にご相談を!

椎間板ヘルニアには様々な要因があり、早ければ20代・30代頃から発症する病気です。病気にならないために日頃から正しい姿勢、適度なトレーニングを行うことが非常に重要です。当院ではリハビリによる運動指導・トレーニングはもちろん、椎間板ヘルニアが原因で腰痛の症状が出ている場合には椎間板治療を行うことも可能です。

  • 椎間板ヘルニアと診断されるも治療方法が分からない
  • 1カ月経っても腰痛や足の痛みが変わらない

等、お悩みをお持ちの方は一度診断を受けられることをオススメ致します。

参考文献参照元

※参考論文および文献―
①T C Kwiatkowski 1, E N Hanley Jr, W K Ramp:Cigarette smoking and its orthopedic consequences:Am J Orthop (Belle Mead NJ). 1996 Sep;25(9):590-7.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8886197/

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任


腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアとは背骨の間にある椎間板(ついかんばん)が外に飛び出し神経を圧迫する疾患です。坐骨神経痛、ぎっくり腰などの症状を引き起こします。