概略

外科的手術の成功率は35-40%と低く、FBSS(脊椎術後疼痛症候群)のリスクが高いことがわかりました。外科的手術の成功率が低い理由は、手術による物理的な神経障害が出現してしまう可能性があるためです。NLC野中腰痛クリニックの治療法は外科的手術よりも身体への負担もリスクも少ない低侵襲治療を提供しています。


目次

脊椎手術が不成功に終わる確率

脊椎の外科的手術後に症状が改善しない、または悪化したかすぐに再発する事を脊椎術後疼痛症候群(FBSS-failed back surgery syndrome)と言います。近年の研究結果や報告から、脊椎の手術後にFBSSが発生する確率は、脊椎を固定する手術(ボルトが入る手術)で40%前後、脊椎の単純減圧術で35%前後と推定されています。


膝の手術と比較した場合の手術成績について

膝の手術である人工関節手術後では改善度90%、患者満足度85%と良好である点と比較すると脊椎の手術成績は良くないと言わざる得ません。


なぜ脊椎の手術結果は良くないのか、その原因について

脊椎に対する外科的手術の成績が悪い理由としては、手術後の合併症が一つの要因と考えられます。特に手術では、腰椎の関節である椎間関節を損傷しますので、手術後に腰が不安定になり病変が再発すること、また不安定になる場合には固定術(スクリュー等での腰椎椎体間固定術、インスツルメンテーション)が行われますが上下の椎体への負担が増える結果、隣接椎間障害が発生します。その他手術による神経周囲の癒着や、神経を保護している脂肪組織の除去により物理的な神経障害が出現してしまうことが原因と考えられています。


考察

脊椎の外科的手術に関しては有効な場合も多くありますが、FBSSの発生確率が35~40%と膝の手術と比較しても高く、手術成績は決して良いとは言えません。従って手術を検討すべきタイミングとしては、重症化し歩行等の日常生活が出来なくなった場合が一般的となります。またこの結果から、外科的手術に代わる低侵襲治療が研究され、治療法として1970年代にはPLDD(椎間板減圧術)、1990年代にはPODT(椎間板オゾン治療)、2000年代にはPIDT(椎間板インプラント治療)、2010年代には幹細胞移植治療(2021年の段階では治験中)やディスクシール治療(Discseel® Procedure)が提供できるまで発展してきました。欧米ではPODT(オゾン治療)、PIDT(ディスコジェル治療)が任意保険の適応を受けており、北米では、ディスクシール治療(Discseel® Procedure)がFDA(アメリカ食品医薬品局)の許可と治療技術の特許認定がなされています。すでに、東海大学医学部では移植治療に関しての臨床治験が行われており、今後の成功が期待されています。


参考文献参照元

①Burton CV.et al:Causes of failure of surgery on the lumbar spine.Clin Orthop 157:191-199,1981
②Lucas Aj:Failed back surgery syndrome:shoese failure? Time to discard aredundant term.British Journal of Pain 6:162-165,2012
③North RB,et al:Failed back surgery syndrome:5-year follow-up in 102patients undergoing repeated operation.Neurosurg 28:685-691,1991
④NIH Consensus:Statement on total kenee replacement.NIH Consens State Sci Statments20:1-34,2003
⑤Clinical Pain Manegement 4

引用リンク

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/35/2/35_20120416009/_pdf
https://journals.lww.com/spinejournal/Abstract/1993/01000/Does_Microscopic_Removal_of_Lumbar_Disc_Herniation.5.aspx
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3162135/
https://thejns.org/view/journals/j-neurosurg/69/1/article-p61.xml

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任